
夫婦間レス当事者男女400人を対象にした「夫婦のセックスレスに関する実態調査」(レゾンデートル株式会社)によると、「もし配偶者が浮気・不倫をしたら許しますか」という問いに、全体の45.8%が「許さない」と回答。
男女別では男性38.5%、女性53%と差があるものの、レスであっても約2人に1人は「パートナーの浮気・不倫は許さない」姿勢を示しています。
「自分からレスを解消したいとは思わないけど、相手の浮気は許さない」という、自己棚上げ的な矛盾した本音が、今の日本の夫婦には存在しているのです。
では、実際に「レスが原因」と言われる浮気・不倫が起きてしまったとき、どう向き合えばいいのでしょうか。
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「レスだから浮気しても仕方ない」は成立しない
私が主宰する夫婦仲相談所でも、こんなセリフは珍しくありません。「ずっとレスだったから、浮気でそれを埋めたい」
「触れようとすると嫌がられるから、外で発散するしかなくて」
確かに、セックスレスが長期間続くと、性の欲求(私はセクデザと呼んでいます)のやり場に困る人もいます。
ここで整理しておきたいのは、「二人のセックスレス」と「浮気・不倫という行動」は、まったく別の次元の問題であるということです。
レスは「二人の関係で起きている未解決の課題」、浮気・不倫は「パートナーに隠れて、第三者を巻き込んだ行動」です。いくらレスがつらくても、「だから浮気してもいい」という免罪符にはなりません。浮気を「レス解消の手段」「バーター行動」にしてしまうと、夫婦の信頼は一気に壊れ、その後の再構築が難しくなります。
相談事例1:離婚を選んだケース

由美さん(39歳・仮名)は、第二子出産後から夫婦生活が止まり、そのまま5年近くレス状態に。産後の体調不良や育児疲れが続き、「今日は勘弁して」が口ぐせになっていました。
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「レスの原因は私という自覚はあります。でも、『レスだから浮気して当然』と言われると、それは違う。一気に心が冷めてしまって」
数カ月の話し合いを重ねたものの、夫は最後まで「レスが原因」を強調し、自分の不倫行動を反省する様子はありませんでした。由美さんは最終的に、子どもの養育環境と自分のメンタルをてんびんにかけ、「この人とは信頼を取り戻せない」と離婚を選びました。
このケースから分かるのは、拒み続けた側にも責任はあるが、「レス=浮気の免罪符」と主張されると、信頼関係は修復困難になるという現実です。
相談事例2:再構築を選んだケース

一方で、再構築に成功した夫婦もいます。
翔子さん(44歳・仮名)は、更年期の入り口で体調が不安定になり、夫婦生活が自然消滅。その後、夫が飲み屋の女性と不倫していることが分かります。発覚したのは、夫の衣服から微妙に香る香水でした。スマホの証拠ではなく、香水なんてまるで昭和の浮気発覚シーンだと、自分でも笑ってしまったそうです。
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夫は平謝りで、飲み屋通いも風俗もきっぱりやめる。妻の体調を優先して家のことを手伝うと約束し、信頼を取り戻そうとしました。
翔子さん自身は、「更年期だから夜の営みなんてできっこない」と思考停止していた自分に気付き、婦人科に行ってホルモン治療を開始。日々のエクササイズ(動画で毎日30分)など、自分の身体と性のコンディションを整える努力も始めました。
半年ほど経ったころ、二人は「月に1回、大人のデートをする」「その日は互いにスキンシップを意識する」という新しいルールを作り、少しずつレスから脱出していきました。
ここでポイントになるのは、次の2点です。
・浮気した側が、どこまで本気で変わるか
・浮気された側が、自分の悪かった点はないか振り返り、夫婦の再設計に向き合う覚悟を持てるか
これを相談者さんに話すといつも「被害者なのに、なんで私が反省しなくちゃいけないの」と腑に落ちない発言をされます。ですが、被害者意識を持ち続けると、ふとした態度でそれが夫に伝わり、「やっぱりずっと許してないじゃん」と更生マインドを削ぎ落とします。
「1%は、私も悪かったよね」と思うだけで、「した側」は関係再構築にコミットすることでしょう。
レスからの浮気の後で「これからどうするか」を決めるために
実際に「レスが原因」と言われる浮気・不倫が起きてしまったら、どう動けばいいのか。私は、次の順番で考えることをおすすめしています。1. 「レスの問題」と「浮気の問題」をバッサリ切り分けて話す
まずは、「浮気という裏切り」の責任をあいまいにしないこと。レスがつらかったことは理解するとしても、「浮気」と「レス」は別問題であることを理解し、線を引くようにします。2. 自分が本当に望むのは「離婚」か「再構築」かを整理する
子どもの年齢、経済状況、これまでの結婚生活の積み重ねを踏まえつつ、「自分はこの人と、あと10年、20年一緒にいたいか?」と、自分軸で考えてみてください。3. パートナーに「変わる意思」があるかを見る
口先だけで謝るのではなく、生活の態度・時間の使い方・お金の使い方が変わっていくか。ここが変わらない場合、「セックスレス」以前に、信頼関係の土台が崩れています。セックスレスはまったく関係ありません。4. レス問題を、二人の共同プロジェクトにする
セックスレスは健康状態、その時のメンタル、ホルモンバランスの問題が絡むことも多いので、婦人科・泌尿器科の受診や、カウンセリングの利用も視野に入れること。「どちらが悪いか」ではなく、「どうすれば二人が心地よく触れ合えるか」を一緒に考える姿勢が大切です。性に踏み込んだアドバイスは次回お伝えします。
セックスレスと浮気・不倫は、確かにリンクしやすいテーマです。ですが、「レスだから仕方ない」「欲求不満だから外で発散」は、パートナーシップを雑に扱う言い訳に過ぎません。
「レス×浮気」のピンチは、「愛の表現方法」「夜の営み方」「“ロマンチック”の残し方」を、一から組み立て直すチャンスでもあります。
約100歳まで続く今後の結婚生活にロマンチックな時間を残すか、一度リセットして、自分の人生を組み替えるか。決断するのは自分です。ただし、「1%は自分も悪いよね」の謙虚なマインドを忘れずに。
<参考>
・「夫婦のセックスレスに関する実態調査」(レゾンデートル株式会社)
三松 真由美プロフィール
男女関係に悩む1万3000名の女性会員が集うコミュニティを展開。セックスレス・ED・女性性機能に詳しく、性を通して男女関係を円滑にするメソッドを考案。講演、メディア出演、著書多数の恋愛・夫婦仲コメンテーター。執筆家。(文:三松 真由美(夫婦関係ガイド))

