有馬記念が大混乱…「ヘデントール登録」で弾かれたライラック。“ファン投票の意義”が問われる大騒動に発展したワケ

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2025年12月24日 09:00  日刊SPA!

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へデントールについて「基本的には年明けからの始動を予定している」とクラブの公式発表があったにもかかわらず、有馬記念に特別登録を行ったことで騒動に… 
写真/橋本健
 2025年の中央競馬も残すところあと2日となった。JRAの馬主リーディングを見ると、社台系とノーザンファーム系の一口馬主クラブが上位4位を占めるのは見慣れた光景だが、今年はキャロットファームが4位に“低迷”している。
◆キャロットファームがリーディング3位以上を確保する条件は?

 キャロットファームといえば、これまでリスグラシューやエフフォーリア、レイデオロ、サートゥルナーリアなど多くの名馬を所有。“最もG1勝利に近い”400口募集クラブの一つとして、一口馬主界隈では絶大な支持を得ている。

 実際に、2009年に馬主リーディング4位となったのを最後に、昨年まで15年連続で馬主リーディングトップ3入りを果たしている。さらに14年と16年にはリーディング首位の座を手にするなど、同じノーザンファーム系のサンデーレーシングと双璧と呼べる関係を築いてきた。

 今年はヘデントールが天皇賞・春を制し、クラブ馬として2年ぶりにG1を制覇したが、今のところJRAのG1勝利はそれだけ。今年の残り2つのG1に出走が決まっているのは、有馬記念のタスティエーラとシュヴァリエローズの2頭という状況だ。

 3位シルクレーシングとは2億円弱の差があり、残り2日間で逆転は十分可能だが、3位以上を確保するためには、やはり有馬記念でタスティエーラかシュヴァリエローズの激走がマストといえるだろう。

◆ヘデントール登録でライラックが出走圏外に

 そんなキャロットファームを巡っては、今年のクラブ唯一のG1馬ヘデントールに関して、ある騒動が勃発。競馬関係者やファンを巻き込む形で物議を醸している。

 同馬は今夏に剥離骨折を発症し、現在はノーザンファーム天栄にて放牧中。「基本的には年明けからの始動を予定している」とクラブの公式発表があったにもかかわらず、急転直下で有馬記念に特別登録を行ったことが騒動の発端だった。

 ファン投票で一部の出走馬が決まるグランプリに出走しない方向にもかかわらず、ヘデントール陣営はナゼ登録してきたのか。

 SNSなどでは様々な憶測が出ているが、それらの話を総合すると、当初の想定ではファン投票上位10頭目には6歳牝馬のライラックが入っていた。想定通りなら調教師への転身が決まった藤岡佑介騎手を背に、ライラックがゲートインするはずだったのだが……。

 ライラックよりもファン投票で上位に入っていたヘデントールが特別登録したことで、ライラックがはじき出されるように“出走圏外”へ。それでも賞金順で上位6頭に入っていれば出走は可能だが、ライラックは賞金加算に必要な重賞2着以内に丸3年以上入っていない。そのため、複数頭の出走回避がない限り、ゲートインが不可能な事態となってしまったのだ。

 逆にアシストを受ける形になったのが、ヘデントールと同じ木村哲也厩舎に所属するスティンガーグラスだった。ヘデントールの登録がなければ、賞金順で除外対象となっていたが、滑り込みでゲートインに近づく形となった。

◆スティンガーグラス回避でさらに混迷…

 ところが、数日後にスティンガーグラスも有馬記念への出馬投票を見送ることを馬主のエムズレーシングが発表。「現時点での管理体制での出走は難しいと判断し」という意味深な文言も含まれていた。

 藤岡佑介騎手を背に有馬記念出走を目指していたライラック陣営には寝耳に水のような状況になったが、これに関してSNSでは様々な意見が飛び交っていた。

「ルールはルール」
「陣営が知恵を絞った結果」
「一生に一度あるかどうかのグランプリに出走できるならやることはやって当然」

◆“裏技”のようなやり方に納得していないファンも

 ルール的には何ら問題のない陣営の“高等テクニック”を褒めたたえる声がある一方で、“裏技”のようなやり方に納得していないファンも少なくない。

「藤岡佑介騎手の最後の有馬記念騎乗が見たかった」
「ライラックに投票したファンの気持ちは?」
「ルールうんぬんじゃない、道徳の問題」
「ファン投票の意義が問われる大問題、ルールを変えるべきでは」

 もちろん、競馬関係者であれば誰しも、自身の馬を有馬記念に出走させたいと思うだろう。勝つチャンスがあればなおさらだ。

 それでもグランプリという特性上、ファン投票で3万票以上を獲得したライラックではなく、2000票前後かそれ以下だったとみられるスティンガーグラスが出走できてしまうことに納得できないファンがいても不思議ではないだろう。

◆ライラック出走の可能性は?

 ただスティンガーグラス陣営とすれば、ライラックを引きずり落とすためにしたことではなく、あくまでも自厩舎の馬を出走に近づけるためにしたこと。その煽りを食う可能性があるのが偶然、ライラックだったということだろう。当然、どの馬も罪はなく、非難されるべきではないのは明白だ。

 さらにその後には、東京大賞典と両睨みだったサンライズジパングが出走を表明。そしてビザンチンドリームとサンライズアースが立て続けに回避を発表したため、出走が絶望的とみられていたアラタとエキサイトバイオまでが滑り込む形でゲートインできることになった。

 ライラックがグランプリに出走するためにはあと1頭の回避が必要な状況だが、果たしてゲートインは叶うのか……。ファン投票の意義が問われることになった今回の事案を受けて、JRAがルールの改善に動くことを強く望むファンは少なくない。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。

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