ファミマのクレーンゲーム戦略をどう見るか 「あそべるコンビニ」がそっと映し出す、厳しい現実

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2026年01月08日 06:20  ITmedia ビジネスオンライン

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ファミマの店内に、ゲーム機が増えている

 ファミリーマートがクレーンゲームなどのゲーム機設置を全国5000店舗まで広げる方針を打ち出した。国内店舗のおよそ3分の1に相当する規模だ。


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 一見、奇抜な施策に映るが、その裏にはコンビニ市場をめぐる「イマ」がある。筆者なりの懸念点も交えながら解説したい。


●クレーンゲーム設置の理由は?


 ファミマが掲げるのは「あそべるコンビニ」。


 従来の“衣・食・住”に“遊”を掛け合わせ、店舗を「体験の場」としてアップデートしていく、と説明している。背景にあるのは、インバウンド需要の回復と、消費の「コト化」。コンビニはもはや「モノを買う」だけの場所ではなく、「推し活」「体験」「参加」といった行動が重視されるようになった、という認識をファミマ側は持っている。


 その文脈から見れば、クレーンゲームの設置は分かりやすい。ゲームは単なる目的ではなく、それを体験する過程まで含めて楽しめる。


 また、現在一部ファミマ店舗に設置されている「ファミマクレーンゲーム」は1回100円で、景品はサンリオやちいかわなど人気IPを用意する。ここまで来ると、いよいよゲームセンター的な様相も帯びてくる。コンビニに「体験価値」を付け加えるのだ。「場所」としてのコンビニにぴったりであろう。


 こうした積極的な理由と同時に、クレーンゲームの設置は「不採算スペースの撤去」という意味もあるはずだ。


 ファミマはコロナ禍以降、イートインスペースや書籍売り場の縮小を進め、空いたスペースを「来店のきっかけづくり」に回している。特にイートインスペースについては、その多くをファミマが現在力を入れている「コンビニエンスウェア」売り場に変えている。


 さらに、レジ上部に設置された「ファミリーマートビジョン」では、企業の広告を流していて、徹底した「空間の収益化」が目指されている。置いても売れない商品や、利益に直結しないスペースを「金になるスペース」へと変えているわけだ。


 その意味で、クレーンゲームの設置は理にかなっている。


●ファミマは、すでに「幅広い」会社になっている


 ちまたでは、この変化をファミマの「ゲーセン化」と呼ぶ向きもある。ただ、こうした変化は何もいきなり起こったわけではない。ファミマの「〇〇化」は、ここ数年にわたって話題になってきた。


 その代表例が衣料品だ。


 先ほどもイートインスペースの話題で触れた通り、ファミマは「コンビニエンスウェア」に注力し、商品ラインアップの魅力向上に努めている。いま、ファミマの店内に入ると、店内の一角が思いのほかアパレルで占められており、コンビニとは思えない光景が広がっている。


 2025年の9月には浜松町にある「ブルーフロント芝浦」で、初の衣料品専門店も出店した。見方によっては、ファミマは「アパレル化」もしている。


 ゲーセン化、アパレル化とファミマの他業態越境がはなはだしいが、ここにはファミマを含めたコンビニ市場が行き当たる「市場飽和」の現状がある。


 全国のコンビニ店舗数は、2010年代後半にピークを迎えて以降、ほぼ横ばいだ。出店拡大で成長してきたコンビニ業界にとっては、成長にブレーキがかかった時期といえる。


 流通アナリストの中井彰人氏によると、このような飽和市場において、コンビニが次に狙うべきニーズは2つある。1つは商圏を細分化し、出店余地を生み出すこと。もう1つは新たな需要を取り込むことだ。 


 「商圏を細分化し、出店余地を生み出すこと」の例としては、これまで流通の問題から出店が難しかった過疎地域や農村部などにも進出することが挙げられる。また、オフィスビル内に小型店舗を設けるといった形も考えられる。


 「新たな需要を取り込むこと」とは、これまでコンビニをあまり利用してこなかった層にも利用してもらうことだ。中井氏によると、これまでの市場拡大は出店数の増加に依存してきた。しかし、出店余地が少なくなった現在は、新たな利用者を取り込むことで1店舗当たりの売り上げを伸ばす戦略が必要となる。


 ゲーセン化、アパレル化はこの2つ目の典型的な例だろう。その意味で、ファミマはこうしたコンビニの市場開拓の先頭を切っているといえる。


●しかし、それはローソンと「同じ」でもある


 ただし、気になる点がある。引っかかるのは、今回の施策が「ファミマ固有のものなのか」という点だ。


 この「空いた店内スペースに、ゲーム機を設置して来店動機をつくる」施策は、すでにローソンが先行している。ローソンはクレーンゲームを2024年春から本格導入し、2025年9月末時点で導入店舗数は1300店舗を突破した。売り上げは、当初の目標を3割上回ったという。


 ローソンは導入の狙いを「近くのコンビニでクレーンゲームを気軽に楽しんでいただきたい」「コンビニに足を運んでいただくきっかけにしたい」という。ファミマが今回掲げた狙いとほぼ同じだと見てよい。


 要するに、成功しているモデルが、すでにある。うがった見方をすれば(あるいは純粋に見たとしても)、今回のクレーンゲーム導入は(話題になっているとはいえ)「他社の後追い」である。


 「成功している他社のサービスを模倣する」――。当然のことに思えるかもしれない。ところが、この「似てしまう」感じ、少し難しくいえば「同質化」は、実は長らくコンビニを苦しめてきたことでもある。


 コンビニの歴史は、「単にモノを売る場所」から、公共料金の支払いやATMの設置、さらには防災・防犯拠点など、さまざまな機能が怪物のように合体してきた歴史でもある。


 ところが、それらの機能はほとんどのコンビニが「同じ」ものとして備えている。そこには、「他社がやっているので、ウチでもやる(でなければ、人が来なくなる)」という考えがある。コンビニは特定地域に集中出店するドミナント戦略を取ることが多いため、この「他社模倣」は他の業界に比べて激しく起こりがちで、コンビニ業界の問題点として指摘されてきた。


 本来、クレーンゲーム設置も「同質なコンビニの中で色を出す」戦略だったと思う。公共料金のサービスなどと違って、「アミューズメント」は必要不可欠ではなく、なかったとしても利便性や魅力が直ちに低下するわけではないからだ。冷静に考えれば「必ずしも真似する必要がない」。


 ところが、同質化が行き着いた先には、こうした「色を出すための機能」までもが似てくるということだ。


 その意味で、コンビニにおける「同質化」は根が深い問題だといえよう。


●ファミマのクレーンゲームに「展望」はあるのか


 「同質化」という側面から見ると、コンビニ大手3社の中では、むしろ「ローソン」のほうが、より積極的に「差別化」を図ろうとしている。


 クレーンゲームに加え、駐車場にRVパークを設ける取り組みや、書店・薬局とのコラボレーションなど、「コンビニ+α」を打ち出す施策が目立つのだ。そういえば、コンビニの中に調理マシンを用意して、作りたての飲食物を提供する試みも、ローソンが始めている。


 しかし、それが差別化ではなくなるのも、もはや時間の問題だろう。こうした特徴的な試みも、大手3社の間で次第に似通っていく可能性が高いからだ。


 そうなると、結局、コンビニは「数」や「立地」の勝負になってしまう。でも、それに限界があることは見てきた通り。最終的に、業界全体で首を絞めあう結果になるかもしれない。


 この点から見ると、ファミマのクレーンゲーム設置のニュースは、楽しげな話題の裏側に、厳しいコンビニ市場の現状も映し出しているのだ。


(谷頭和希、都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家)



このニュースに関するつぶやき

  • 僕のような貧乏人にとってはコンビニはどれも高級店。差別化するなら単純にお値段だと思う。
    • イイネ!17
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