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「ハローキティ」の誕生50周年を機に、業績が鮮やかなV字回復を見せたサンリオ。
【画像】驚くほど似ている、ポップマートとサンリオの株価比較チャート
2025年初頭には株式市場の人気を集め、任天堂などと肩を並べるような「ジャパンIP」の象徴的な存在となった。
しかし、今もなお業績を伸ばしているはずのサンリオ株が、前年の最高値から半値近い水準まで売り込まれている。
「北米市場でのブームが沈静化しているのではないか」といった言説もまことしやかにささやかれているが、決算資料や各地の市場動向を詳細に読み解けば、全く異なる実態が浮き彫りになる。
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●きっかけは「ラブブバブル」の崩壊?
今回の株価急落は、サンリオ自体に原因があるというよりも、中国ポップマート社のフィギュア「ラブブ」における、バブル崩壊が連鎖反応を引き起こしている可能性が高い。
その根拠として、サンリオと中国のトイメーカーである「ポップマート」の株価動向を比較したい。
驚くべきことに両社の株価はここ半年でほとんど同じ値動きを見せており、直近では、両社ともに半年前の株価からマイナス30%を記録している。そればかりか、株価がピークをつけた2025年8〜9月対比では、それぞれ半値程度まで値下がりしているのだ。
両社の株価がピークをつけた背景には、2024年から2025年にかけて経済力のある大人が玩具を収集する流行があった。その立役者は、紛れもなくポップマートの「ラブブ」だった。ポップマートが開拓した「顔が塩化ビニルで外側がふわふわなドール」というカテゴリはコレクション欲を刺激し、二次流通市場での価格高騰を招いた。
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しかし2025年10月以降、大手IP企業の参入や模倣品のまん延、そして過剰供給によりバブルは弾けた。時を同じくして、トランプ関税を端緒とした米中貿易摩擦の激化懸念が、中国に製造拠点を置くポップマートを直撃したのだ。
ここで市場心理の「短絡さ」も見え隠れする。 海外の機関投資家は「アジア発のキャラクターIP」という一つのセクターでサンリオとポップマートを同列に扱い、いわゆる「連想売り」を浴びせたのである。
●サンリオの“健全すぎる”経営実態
では、肝心のサンリオの業績はどうなのか。株価だけを見れば誰もが悪化を想像するが、その内実は堅調そのものだ。
サンリオの2026年度3月期中間決算を確認すると、連結売上高・営業利益は当初の業績予想を上回り、いずれも過去最高額を更新している。売上高は前年同期比で39.6%増の876億円と大幅増収で、1000億円の大台が射程圏内に入ってきた。また、営業利益は増収率をしのぐスピードで成長しており、前年同期比で66.1%増の391億円に達している。
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海外事業では欧州・南米・アジアがそれぞれ前年から128%・75%・63.2%の増収となっており、利益面でも同じく173.1%、92.7%、79.0%と年間で倍近く急成長している。
一方で、北米セグメントの売上高は、前年同期比16.5%の増収に対し、10.5%の減益で着地していた。しかし、北米については前年に大幅な増収増益を経ていることから、その反動で見た目のパーセンテージ上では下がっているように見える点に留意する必要があるだろう。
実際のところ、2期前の2024年3月期の第2四半期における北米セグメントの営業利益は6億3500万円であったのに対し、直近では14億9400万円と2倍以上に伸びている。中長期的な観点では全世界で堅実な成長を続けているのだ。
また、同社の営業利益率は44.7%と、クラウドサービスやIT企業のような業界と比較しても非常に高い部類にいる。
サンリオのビジネスはもはや、単にキャラクターの絵柄を貸しておもちゃを売るというものではなく、ブランド管理を徹底することでIPの価値毀損(きそん)を防ぎ、プレミアムな価格帯での展開が可能な領域に達しているのだ。
近年では「クロミ」や「シナモロール」、「ポムポムプリン」といったキティ以外のキャラクターが、SNSやZ世代を中心に爆発的な人気を博し、特定のキャラクターに人気が集中するリスクを分散しつつ、幅広い層へのリーチが可能となった。
また、独自の「サンリオキャラクター大賞」などを通じてファンのエンゲージメントを高め、サンリオの経済圏内で推し活マネーが動く仕組みを備えている点も巧みなビジネスモデルであるといえる。
●嵐が過ぎ去った後の景色は?
ちなみにサンリオの株価下落については、日本銀行が推し進める「利上げ」の影響もないわけではない。現在、30年物の日本国債における年利回りは3.6〜3.8%台で推移している。投資家の視点に立つと「わざわざリスクをとって一般的に年間の期待収益率が5〜8%の株に投資しなくても、国債で3.7%ももらえるならば株を売って債券に乗り換えよう」といった力学が働く。
しかし、本当に利上げのような日本におけるカントリーリスクが要因なのであれば、サンリオの株価動向が中国企業のポップマートと一致することとは矛盾する。従って、サンリオは上記のようなマクロ経済要因も重しとなりつつ、ポップマートの株価に連れ安しているという、二重の負荷がかかっていると解釈する方が妥当だ。
サンリオとポップマートの違いが市場関係者に認知されてくればその負荷も軽減されると考えられる。両社の決定的な違いは、ブランドの「歴史の深さ」だ。
ポップマートのラブブが世界的に底堅いIPであることは確かだが、「塩化ビニール製のかわいらしいドール」というカテゴリとしての認知度はあるものの、ラブブのキャラクターがどのような背景を持ったキャラクターであるかを語れる人は少ないだろう。
その結果、ライバルは著作権に抵触するリスクがある「ラブブのキャラクターそのもの」を模倣する必要はなく、あくまで「ラブブのようなドール」を投入することで、堂々と参入できたわけだ。
これに対し、ハローキティやシナモロールなどをはじめとしたサンリオのIPは、50年にわたって物語や世界観を積み重ね、消費者の生活の一部として定着してきたストック型の存在である。
この構造的優位性こそが、一過性ブームの狭間において、サンリオの屋台骨を支えている。海外企業の不調や日本のマクロ経済といった嵐が過ぎ去った後、サンリオは真のグローバルIP企業として君臨し続けていることだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 株式会社X Capital 1級FP技能士
FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経て株式会社X Capitalへ参画。
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