写真/首相官邸公式Xより自民の2年間・食料品消費税0%に対して、中道は恒久的に0%、国民は一律で「経済が回復するまで」5%、共産党は将来的廃止を前提に一律5%、参政党は段階的廃止を掲げた。岩田氏は3つの誤算に加えて「無党派層から支持される高市首相にとっては投票率を下げかねない雪も不安材料」と話す。
ジャーナリストの岩田明子氏は「優勢ムードの陰で、首相にとって見過ごせない“誤算”が連鎖している」ことを指摘する(以下、岩田氏の寄稿)。
◆新党誕生、金利急騰、大阪W選。高市首相を焦らせる3つの誤算
衆院選に向けて、各党の公約が出そろった。目を引くのは、「みらい」を除くすべての党が掲げる消費税減税だろう。
高市首相は一時「レジ改修に時間がかかる」と後退させた減税案を、今回“復活”させた。「選挙用のパフォーマンス」と批判の声も上がるが、野党との争点を潰しながら、昨年の総裁選でも掲げた政策をようやくかたちにした。
ただし、高市首相にはいくつかの誤算が生じている。
1つは、立憲民主と公明による新党結成だ。両者の接近は周知の事実だったが、「比例統一名簿をつくる程度」と見られていた。であれば、地方議員らの個人的関係から創価学会票を一部取り込めるとの目算があったが、新党誕生でその票読みは難しくなった。
2つ目は、市場の反応だ。高市氏が消費税減税を発表して以降、長期金利は2.38%という27年ぶりの高水準へと急騰した。財政拡大を嫌気して国債売りが加速したかたちだ。このまま金利が高止まりすれば、国民の生活負担増は避けられないだろう。
3つ目は大阪W選挙だ。1年少々の任期を残しての出直し選挙で維新は「都構想への民意を問う」が、主要政党は候補者を立てないため、「税金の無駄遣いだ」と不満の声が上がっている。衆院選にも波及して維新が議席を減らせば、首相の進退を懸けた勝敗ラインが遠のきかねない。
◆電撃解散が外交に及ぼすもの
それでも、私は自民優勢に変わりはないと見る。学会員に配布された資料が永田町でも話題になったが、「全国どこでも〈比〉は『中道』」と大きく記しながら、小選挙区での中道候補への投票を呼びかける一文は、異常に小さな文字だった。これが学会の本音ではないか。参院と地方組織の公明党はこの先も残る以上、地方での自公連携は崩れない。そのため、一定の学会票が自民に流れると予想できるのだ。
消費税減税については、高市首相は2年限定とする“現実路線”を取った。税収減は1年で5兆円なので、補正予算でも十分に手当てできる。「恒久化よりはマシ」と、金利市場が落ち着きを取り戻す可能性もあるのではないか。
私は今回の解散を、モリカケ問題に揺れ、北朝鮮によるミサイル挑発が続くなかで打たれた’17年の電撃解散と重ねている。選挙で大勝した安倍元首相は、日中、日ロ交渉を加速させた。政権基盤を盤石にしたことで、習近平・プーチン両首脳の安倍氏に対する姿勢が大きく変わったからだ。
高市電撃解散は、こじれる日中関係の改善にも繋がる……かもしれない。
<文/岩田明子>
【岩田明子】
いわたあきこ●ジャーナリスト 1996年にNHKに入局し、’00年に報道局政治部へ。20年にわたって安倍晋三元首相を取材し、「安倍氏を最も知る記者」として知られることに。’23年にフリーに転身後、『安倍晋三実録』(文藝春秋)を上梓。現在は母親の介護にも奮闘中