衆院福井1区の候補者ポスター=1月29日、福井県あわら市 豪雪に覆われた福井県で、自民党の保守王国が揺らいでいる。1区は知名度の高い前職、稲田朋美が優勢を保つが、直前の知事選で保守陣営が割れた傷は深い。2区は公認候補を立てられず、県連と党本部の対立が尾を引く。(敬称略)
自民が下野した2009年衆院選でも、福井は旧1〜3区で全勝。強固な保守地盤を示し、「ガラパゴス諸島」と呼ばれた。しかし前回24年は2区で派閥裏金問題で公認されなかった高木毅が落選、立憲民主党に議席を奪われた。先月25日投開票の知事選では稲田や県議団が推した候補が敗北。保守勢力の「遠心力」は加速度を増す。
◇変節批判
「激しいことを言って分断するのではなく、穏やかな保守こそ自民が目指す真の保守だ」。2月1日、坂井市の集会で稲田は声を張り上げた。代名詞の「伝統と創造」も強調。元首相・安倍晋三の「秘蔵っ子」とされ、防衛相など要職を歴任したが、保守票の離反を止められていない。
LGBTなど性的少数者の理解増進法推進の旗を振ったことが「変節」と受け止められ、今も自民支持層の反発を受ける。連日集会を開き、参加者との握手を徹底。選挙区内には首相、高市早苗のポスターを並べ、保守層のつなぎ留めに必死だ。
溶ける保守票の奪取を狙うのが参政党が擁立した29歳の藤本一希だ。「エース候補」と期待され、出馬会見には党代表で福井出身の神谷宗幣が同席した。
1月31日、福井市の演説会で「グローバル思想の侵食から日本を守る。『家』が大事だ」と主張。聴衆から「稲田に投票していたが、LGBTの一件が許せなかった」「(稲田は)共産党と変わらない」との不満が漏れた。
知事選に35歳で初当選した元外務省職員は、自民県連会長で元参院議長の山崎正昭や保守系の福井市議らが推し、参政が終盤に後押しした。稲田らが支援した対立候補は惜敗。2日後の衆院選公示日、山崎は稲田の出陣式に姿を現さなかった。
稲田は2月2日、福井市の集会で「フレッシュな若い知事と二人三脚で取り組む」と軌道修正し、亀裂修復を図っている。
中道改革連合と国民民主党も1区で競合する。前回比例復活した中道の波多野翼は稲田に再挑戦。1月29日、坂井市のスーパー前で演説すると、帰宅時間帯の車列から手が振られるなど絶え間ない反応があった。
国民民主は昨年の参院選で次点だった山中俊祐を立て、中道との一本化協議は頓挫。連合の労組票が割れ、自民が「漁夫の利」を得る可能性がある。
◇ボイコット
2区は無所属の斉木武志と中道の辻英之による前職同士の一騎打ち。斉木は日本維新の会を除名され、高市政権の発足直後、自民会派入りした。自民本部は「斉木支持」を決めたが、県連は高市の夫の長男を支援しようと模索。党幹部から「反党行為と見なす」と告げられて断念したが、県連側の反発は激しい。
地方議員は「ボイコット」(県議)を敢行。「斉木からの電話を無視した」(別の県議)と、活動の一切に手を貸さない状況だ。斉木は民主、希望の党、旧国民民主、立民、維新と政党を転々としてきた経緯があり、自民県連の不信は根強い。
斉木は、たすきやビラに「自民支持」と明記し、企業回りを続ける。「自民の看板が頼み。党幹部が県連を刺激してほしい」(陣営)と期待する。
だが、集会をようやく開けたのは公示から1週間たった3日夜だった。党選対委員長の古屋圭司が敦賀市に来援し、高市が無所属で初当選したことを引き合いに「私が責任を持って自民の政治家に育てていく」と呼び掛けたが、聴衆は会場の3割ほど、約30人にとどまった。古屋は斉木の自民会派入りを主導した張本人だ。
辻は前回、斉木を約1万5000票差で下した。1月31日、鯖江市で開いた集会で「政党を渡り歩き、有権者に極めて不誠実だ」と斉木批判を強めた。選挙カーは雪深い山間部を回る。振り続ける左手を凍らせながら、接戦を抜け出そうと懸命だ。
◇衆院福井1、2区立候補予定者
【福井1区】
山中 俊祐(42)医師 国民 新人
藤本 一希(29)党青年局長 参政 新人
稲田 朋美(66)元防衛相 自民 前職(7)
波多野 翼(41)元越前市職員 中道 前職(1)
【福井2区】
斉木 武志(51)元県議 無所属 前職(3)
辻 英之(55)元大学教授 中道 前職(1)
(注)敬称略、届け出順。年齢は投開票日現在。カッコ内数字は当選回数。

衆院福井2区の候補者ポスター=1月31日、福井県鯖江市

衆院選の候補者が開いた集会に集まった聴衆=1日、福井県坂井市