※写真はイメージです新幹線でもしも自分の指定席に他人が座っていたら、誰でも困惑するだろう。勇気を出して「間違ってませんか?」などと声をかけたとして、なぜか相手が強気に出てきたら……。今回は、そんな理不尽なエピソードを紹介しよう。
◆自分たちの席を占領する中国人観光客
これは小林英人さん(仮名)が昨年の秋、東京から京都に向かう新幹線で体験した出来事である。
小林さんと友人が指定席に向かうと、すでにその席には見知らぬ3人組の観光客が陣取っていたという。中年の男性と若い女性が2人。男性は青いジャケットを着て、女性たちは派手なマフラーを身に着けていた。外国人観光客だと思われる。
「彼らは荷物を膝の上に積み上げ、笑い声を上げながら楽しそうに談笑していました」
小林さんはチケットを取り出し、丁寧に英語で「すみません、ここ私の席なんですが」と声をかけた。
しかし男性の反応は冷たかった。チケットをちらりと見ただけで、肩をすくめ中国語で「問題ない」ということを言っている。
◆「指定席なんだから、移動してもらわないと」
小林さんの友人がスマホで調べた簡単な中国語で「指定席なんだから、移動してもらわないと困るよ」と、説明を試みたが、相手は無表情のまま動こうとしない。そこで小林さんは車掌を呼ぶことにした。
車掌が彼らにチケットの提示を求めると、事態は急展開した。男性がしぶしぶ財布を取り出し、“自由席の切符しか持っていない”ことが判明したのだ。車掌が「自由席へ移動するか、指定席に座る場合は差額を支払ってください」と言う。
その瞬間、周囲の乗客の視線が一斉に集まり、車内に気まずい空気が広がった。男性は顔をしかめ、女性たちも眉間にしわを寄せた。
結局、彼らは差額を支払い、別の車両の指定席へ移動した。去り際、男性は小声で文句をつぶやき、女性の一人は俯いて口をつぐんだ。「移動する際の足取りは重く、彼らの顔には明らかに苛立ちをふくんでいた」と小林さんは振り返る。
小林さんの友人は、ため息混じりに「ルールは守らないとね」と言った。窓の外に流れる風景を眺めながら、小林さんはようやく安堵することができたという。
◆突然の高圧的な言葉に凍りついた車内
続いてのエピソードは、友人と大阪への旅行を楽しみにしていた佐藤晴香さん(仮名)。東京駅を出発したばかりの新幹線の車内で、彼女は思いがけないハプニングに遭遇した。
添乗員付きのツアーで万全のはずだった指定席に、突如現れた中年男性からの理不尽な要求……。
「去年の春、友人との久しぶりの旅行で大阪行きの新幹線を利用したときのことです。東京駅を出発してすぐ、スーツ姿の中年男性が通路に現れて。
どこにでもいるサラリーマン風の方だったのですが、いきなり私たちの横に立つと、信じられないほど高圧的な態度で『そこ、俺の席だ。いいから早くどけよ』と言ってきたんです」
その第一声は、驚くほど傲慢なものだったという。
◆男の態度が一変した瞬間
あまりの突然の出来事に、佐藤さんと友人は一瞬、頭が真っ白になった。佐藤さんが「私たちはツアーの指定席で、ここで合っているはずです」と説明するが、男性は全く聞く耳を持たなかった。
「うるさいな、いいからどけって言ってるんだ」
男性は眉間にしわを寄せ、ただ「どけ」を繰り返すばかり。周囲の座席には同じツアーに参加している乗客たちが心配そうに見守る中、車内の空気は凍りついた。せっかくの楽しい旅行の始まりが台無しになりそうな瞬間だった。
そんな緊迫した状況に、ツアーのアテンダントが駆けつけてくれた。
控えめな雰囲気の女性だが、男性の迫力に少し圧倒されながらも、間に割って入る。
そして「お客様、一度切符を拝見させていただけますでしょうか……?」と声をかけると男性は最初、「お前らに見せる必要なんてない」と突っぱねていた。だが……。
「男性はアテンダントの丁寧な対応に、ようやく切符を取り出しました。アテンダントは切符を何度も確認した後、困ったような表情でこう告げたんです。『お客様……大変申し訳ございませんが、こちらの切符は次の新幹線のものです。お乗り間違いかと思われます』。その瞬間、それまで高圧的だった男性の態度が一変しました」
◆謝罪の言葉もなく、男性は逃げるように別の車両へ
自分の切符を見つめ、顔がみるみるうちにこわばっていく。佐藤さんたちは「勘違いだった、ごめん」くらいの一言を期待していたという。
しかし、男性は謝るどころか、佐藤さんたちと目を合わせることもなく、逃げるようにその場を去っていった。
アテンダントは「大変失礼いたしました」と何度も謝罪したそうだが、悪いのは彼女ではなく、完全に男性の方だ。
「アテンダントが間に入ってくれたことに、私たちは感謝の気持ちでいっぱいでした。ツアーではなく個人での新幹線の利用だったら、私たちは男性の迫力に押し負けてしまったかもしれません」
今でも思い出すと腹立たしい気持ちになるというこの出来事。しかし佐藤さんは現在、こうして「以前こんなとんでもない人がいてさ」と話のネタにするようになったという。理不尽な難癖をつけられた新幹線での旅は、思わぬ形で思い出に残ったのである。
<構成・文/日刊SPA!取材班>