木星の大きさが半世紀ぶりに更新、数km小さくなる 巨大ガス惑星を計測する方法とは?

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2026年02月24日 08:10  ITmedia NEWS

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 「木星」は太陽系最大の惑星として知られており、太陽系以外の惑星などの大きさを表すモノサシとして使われることもあります。しかし、この木星の直径は半世紀前の電波観測に基づく値であり、長らく更新されていませんでした。


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 イスラエルの研究機関「ワイツマン科学研究所」のエリ・ガランティ氏などの研究チームは、木星の大きさの新たな計測結果を発表しました。NASA(米国航空宇宙局)の木星探査機「ジュノー」の観測結果と、木星で吹き荒れる激しい風を考慮したモデルを組み合わせ、誤差±0.4kmの精度で算出。新たな大きさは平均半径6万9886kmなど、以前の推定値より数km小さい値となりました。


 もちろんこれは、ここ半世紀で木星が小さくなったのではなく、計測方法が変化し、より精度が高くなった結果を反映したものです。この計算には風の影響も考慮されており、木星のユニークな大気の科学的解釈にも影響を与えます。


●半世紀前の観測結果から計算されていた「木星の大きさ」


 木星は、太陽系最大の惑星であり、太陽に次ぐ大きさの天体として太陽系全体に影響を与えています。惑星本体の大部分は水素とヘリウムでできている巨大ガス惑星で、中心に高密度な岩石の核があると考えられています。


 端的に言えば“地面がない”のがガス惑星の特徴であり、その大きさをどう表現するのか疑問に思う読者もいるでしょう。これには合意された定義があり、地球などとは異なり明確な岩石の表面を持たない惑星は、大気圧が1気圧になる高度を大きさの基準にすると定められています。


 また、自転する天体は、地軸から遠い赤道の部分が膨らむため、天体の中心から赤道までの距離を表す「赤道半径」、天体の中心から極方向の距離を表す「極半径」、天体の中心からの平均距離を表す「平均半径」の3つが使われます。


 このような定義の元、木星のそれぞれの半径の数値は「平均半径6万9894km」「赤道半径7万1492km」「極半径6万6854km」という値であり、赤道半径で±4km、極半径で±10kmの誤差と算出されていました。ただし平均半径は、6万9911kmという値もよく使われています。後者は研究の初期に算出されたものです。


 木星の大きさは、太陽系以外に属する惑星、恒星、褐色矮星などの大きさを表すためのモノサシとして使われることもあり、事実上の単位として広く使われています。


 もちろん、木星の大きさはモノサシを当てて測ったものではありません。1970年代にNASAが打ち上げた惑星探査機、パイオニアシリーズとボイジャーシリーズの観測結果を元にしたものです。


 これらの惑星探査機が木星を離れる際、木星を挟んだ状態で地球に向かって通信電波を照射しました。受信側の地球では、木星に遮られて電波が届かなかったり、大気の濃い部分を通過して屈折した電波を受信することがあります。これらの違いを反映することで、木星の正確な直径を求めることができるのです。


 しかし、これらの観測は全探査機を合わせても6回しかなく、データの精度に限界がありました。また、木星で吹き荒れる突風が大気を持ち上げる影響も反映されていません。この風は、1気圧より低い低気圧では、最大風速が150mにも達することもあります。このため、木星の真の大きさがこれで正しいのかどうか、明確には分かっていませんでした


●木星の真の大きさはごくわずかに小さかった


 ワイツマン科学研究所のエリ・ガランティ氏などの研究チームは、NASAの木星探査機「ジュノー」の観測結果を元に、風の影響も考慮した木星の大きさの推定を行いました。ジュノーは2016年より木星の周回軌道に入っており、ミッションの後半から、地球から見て木星の裏側に入り込むように軌道が変更されています。


 これにより、パイオニアやボイジャーが行ったような、電波による大きさの測定ができるようになりました。加えて、木星を周回せずに離脱したパイオニアやボイジャーと異なり、ジュノーは木星を周回しています。このため、電波観測は26回とデータ量が増加したことも、新たな推定を行う上での大きな後押しとなりました。


 計測データとモデルによる計算の結果、新たな木星の大きさが導き出されました。全て±0.4kmの誤差で、「平均半径6万9886km」「赤道半径7万1488km」「極半径6万6842km」という値となりました。これはそれぞれの過去の値と比べて、平均半径は8km、赤道半径は4km、極半径は12km小さくなっています。


 もちろんこれは、半世紀前と比べて木星が小さくなったという意味ではありません。むしろ、木星の大きさを過大に算出していたと捉える方が正確です。また今回は、風による大気の上昇も考慮した計算も行われたことで、極半径に差はないものの、赤道半径は10kmも上に持ち上がることが判明しました。これは木星の風がいかに強いのかを表す結果です。


 木星の風と自転そのものの影響から、木星の赤道半径と極半径には7%もの違いがあります。地球がわずか0.33%であることと比較すれば、木星は地球より20倍もつぶれた楕円形(回転楕円体)であることになります。


●木星以外にも影響する研究結果


 今回の結果は、太陽系最大の惑星のスペックがより正確に明らかになったという点でも重要ですが、影響は木星だけにとどまりません。先述の通り、この正確な大きさは、木星大気の風の流れが考慮されています。


 大気の風の流れによる大きさの変化を正確に算出するには、風速・大気圧・大気組成など、さまざまな因子を元に計算を行う必要があります。このノウハウは、太陽系外惑星のモデル化にも役立ち、木星が校正基準となりうることを示すものです。


参考文献


Eli Galanti,et al.“The size and shape of Jupiter”.Nature Astronomy.


“Giant Planet’s Slimmer Profile”.(Feb 2, 2026)Weizmann Institute of Science.


NASA Science Editorial Team.(Feb 4, 2026)“NASA’s Juno Mission Redefines Size, Shape of Jupiter”.NASA.



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  • なかなか興味深いニュース。歴史もだけど、常時アップデートする様に心掛けないとね。
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