東大生が「AIのせいで若者の頭が悪くなっている」という意見に反論。「読書はタイパ悪い」新世代の勉強法

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2026年03月01日 16:10  日刊SPA!

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※画像はイメージです
―[貧困東大生・布施川天馬]―
 2月24日、全国大学生活協同組合連合会が昨年秋に実施した学生生活実態調査の結果を発表しました。

 中でも目を引いたのは「1か月あたりの書籍費」が月1,000円を下回った点。

 物価高の影響などが考えられますが、それ以上に気になるのは「大学生の本離れ」でしょう。

 私自身、今でこそ毎月数冊の本を買ってきて読み進める習慣がつきましたが、大学生当時はお金に余裕がなくて、数か月に一度だけ本屋に行っては選び抜いた一冊を購入していたように記憶しています。

 今回のアンケート結果を受けて、緊急で東大・早稲田・慶応義塾大学の学生15人に話を聞いたところ、うち5人が「月当たりの書籍購入費用が1,000円を下回る」と答えました。

 しかも、その5人は全員東大生・東大院生だったのです。

 そこで、匿名を条件に取材を受けてくれた現役東大法学部生の井上さん(仮名・20代)に話を伺ったところ、金銭面とは全く無関係の「本を読まない理由」が見えてきました。

 Z世代のリアルな読書観に迫ります。

◆読書に割く時間がもったいない

ーー月当たりの書籍費が1,000円を割っていると回答されていましたが、どれくらいの頻度で本を買いますか?

井上:最近は、数か月に一冊買えば多い方です。大学に入ってからは、とんと本を買う機会が減りましたね。

 もともと、中学・高校に通っていた時はむしろよく本を読む方でした。月に数冊、多い時だと十数冊程度は読破していた。

 ミステリ小説が好きで東野圭吾作品を手に取ったり、ラノベ推理小説の『氷菓』などがお気に入りでした。また、中学くらいになると親が買ってきた本にも手が伸びるようになり、『七つの習慣』『思考は現実化する』など自己啓発系のビジネス書も好んで読んでいましたね。

 ただ、東大に合格して、上京してからはそもそも本屋に寄らなくなりました。当たり前ですが、本を買うにも金がかかる。入学直後に支出を確認しながら「本に回すお金の余裕なんてない」と痛感したことを思い出します。

 今ではやりくりの方法も覚えて、バイトも増やして、生活は安定してきました。ですから、現在は「本屋に行けない」のではなく、「行かない」んです。

 本を読む習慣が消えてしまったこともそうですが、それ以上に「読書に割く時間」がもったいないと感じる。

◆AIで賢く時間を活用

ーー確かに、早期化する就活や大学在学中の課外活動などで忙しい方は増えました。とはいえ、大学のテスト勉強など、どうしても本を読まざるを得ないタイミングもあるのではありませんか?

井上:いいえ、私自身もそうですが、最近の大学生はみんなAIを活用して情報を処理しています。

 テスト勉強でいちいち本を読むよりも、授業中の先生の話を録音して、書き起こしを作ってもらい、それをAIに読み込ませて要約させるほうが、楽だしわかりやすいからです。

 もちろん、サボっているわけではありませんよ。サークルやバイトなど、卒業後の進路を見据えて様々な活動に手を出すと、どうしても時間が足りなくなるんです。

 早起きしているわけではありませんが、それでも23時以降に帰宅するのも当たり前で、そこから本を読み込んで情報を取り出して……なんてやっている暇がない。飲み歩いているわけでもなく、むしろそうして遊び惚けている学生が羨ましいくらいです。

 サークル活動も固定練習は週に一度と少ないですが、個人練習をしたり、運営のための細々した仕事があったりと、なんだかんだ毎日4〜5時間くらいは取られてしまう。これに移動時間や講義時間を足すと、もういくらも自由時間はない。

 でも、少ない時間で成績を取らないといけないわけで、そうなるとAIに情報を抽出する作業を委託したほうが、効率がいい。タイパを意識した結果、そうならざるをえないんですね。

 ですから、以前は金銭的な理由から避けていた本を、タイパ不足で避けるようになりました。

 気になる本があっても、AIに「どんな話かネット上の意見をまとめて教えて」と聞けばざっくりわかるし、YouTubeのまとめ動画から内容を得る方法もある。わざわざ文字を追って情報を得るより、ずっとお手軽ですよね。

◆AI利用=成績不良ではない

ーー世間では、AIを活用した学習に対して「読解力や思考力の低下」を懸念する意見が多いと感じますが、成績は維持できているのでしょうか?

井上:とんでもない。むしろ、上がっていますよ。

 私はAIに全部丸投げしているわけではなく、あくまで情報抽出の作業をAIに任せているだけなんです。各情報の裏もしっかり取りますし、それらの解釈や理解にかける時間はしっかり確保しています。

 時間ばかりかかって、体力をどんどん削られてへとへとになってから考え始めるよりも、サクッとAIにまとめさせて、余った時間と体力で効率よく勉強したほうが、結果は出そうですよね。

 実際に、私は2年生までの前期教養課程の成績でほぼ優、悪くても良を記録しています。成績不良どころか、むしろ優秀者に入るんじゃないでしょうか。

 本を読んでも、結局忘れていくわけで、読み返して定着させる必要が生じます。ただ、その際に忘れていない箇所も読まないといけず、無駄な読み返しの分だけ時間と体力は失われていく。

 それならば、AIで情報をかき集めてから、ざっくり自分で要点をとらえられるようにまとめなおす勉強法を取ったほうが、ずっと時間を有効に使えるのではないでしょうか。正直なところ、テスト対策の勉強程度ならば、本を読む必要を感じないのが本音です。

◆AIに振り回されてしまう危険性も

 井上さん曰く、「インカレサークルの学生たちを見る限りでは、東大以外でもAI利用は当たり前のように行われている」といいます。

 確かに私もざっくりとした所感を確かめるための簡単なリサーチはAIに任せますし、それで面白そうなテーマを見つけたら自分で本腰を入れて確かめるようになりました。

 とはいえ、AIはハルシネーション(AIがそれらしい嘘をつくこと)がつきもの。かつて日本のネットを席巻した匿名掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆき氏は「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という名言を残しました。

 当時よりもネット人口が増え、さらに息をするように嘘をつくAIへ誰でも容易にアクセスできる現代では、この名言の価値が相対的に上昇したようにも感じられます。

 成績も良好で、タイパ良好な生活を送っている井上さんですが「長文を読む力は落ちた」とも語ってくれました。論文やレポートを読むにも、昔より疲れを感じやすくなったのだとか。

 AIによって、我々は大きな進歩を遂げています。ただし、その分だけ「人間であること」の必要性は減少しており、一定以上のスキルを持っていない方が一斉に足切りを受ける危険性も見えてきた。

 個人的には「AI利用」自体に反対はしませんが、「必ず自分でもできること」だけをAIに任せるように区切りをつけなければ、自分の能力を実際以上に見積もってしまう危険性があるのではないかと感じます。

 少なくとも、今回の方法論は、井上さんの能力をもってすれば可能なだけであり、一般性はないでしょう。

 AIに振り回される人材ではなく、AIを振り回す側につくためには、結局地道で泥臭い努力が避けて通れないのではないでしょうか。

<取材・文/布施川天馬>

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)

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