LINEの悩みは今も「既読スルー」──14年半で変わった若者の「未読」文化と、“既読機能”を消さないLINEの真意

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2026年03月02日 15:10  ITmedia Mobile

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2013年当時に撮影されたLINEのスクリーンショット

 2011年6月にサービスを開始したコミュニケーションアプリ「LINE」は、誕生から約14年半が経過した先日、ついに日本国内の月間利用者数が1億人を突破しました。リリース当初は「若者が熱中するメッセージアプリ」として、若者文化を象徴する存在というイメージが強いものでした。


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 当時はSNSの全盛期であり、大人がFacebookでの人脈作りに励む一方で、若者はLINEでの交流に没頭するという時代でした。その後、スマートフォンの普及に伴い、子に教わった母親が使い始め、重い腰を上げた父親も導入するという流れで、LINEは全世代へ浸透していきました。生活インフラとして定着した現在、かつては若者限定のツールだったことを振り返ると、感慨深いものがあります。


 「LINEやってる?」「"ふるふる"で交換できるんだって」「スタンプって顔文字と何が違うの?」といった会話が飛び交う中、利用者が最も戸惑ったのが「既読」機能でした。メッセージを開封するとマークがつき、読んだ事実が相手に伝わる仕組みです。当時、他のチャットアプリにも同様の機能は存在しましたが、多くのユーザーにとって「既読」体験はLINEが初めてであり、その利便性とプライバシーの境界に衝撃を受ける人が続出しました。


 かつてSNS「mixi」の「足あと」機能が論争を呼んだように、LINEの既読機能に対しても「廃止してほしい」と切望する声は少なくありませんでした。


●「既読スルー」と「未読スルー」という文化の定着


 やがて、メッセージを読んだにもかかわらず返信をしない状態は「既読スルー」や「既読無視」と定義されるようになりました。2013年の「egg流行語大賞(旧ギャル流行語大賞)」では、既読スルーを指す略語「KS」がランクインするなど、社会的な認知度を一気に高めていきました。


 LINEのヘビーユーザーである10代にとって、「既読スルー」は死活問題でした。時には「既読無視をされた」という憤りが拉致監禁事件にまで発展したり、グループ内で特定の個人を意図的に無視する「LINEいじめ」の温床になったりと、深刻な社会問題を引き起こしたのです。


 こうして「既読スルーは失礼」という価値観が浸透し、既読をつけたら即座に返信しなければならないという強迫観念を抱くユーザーが増加しました。10代は絶え間ない返信対応に追われ、「LINE依存」が危惧された時期でもあります。大人もまた、当時はそれを「マナー」として現在以上に重く受け止めていました。筆者自身、当時は「既読をつけずにメッセージを読む方法」といった解説記事を数多く執筆した記憶があります。


 さらに、派生語として「未読スルー」という言葉も生まれました。これは、通知や専用アプリを介して内容は確認しつつも、あえて「未読」の状態を維持して放置する行為を指します。iPhoneではトーク画面の長押しでプレビューを表示できるため、この機能が広く重宝されるようになりました。


 現在では「あえて未読のまま寝かせる」ことが常態化しており、未読状態であっても「内容は把握されているはずだ」と解釈される傾向にあります。一方で、未読メッセージがたまりすぎて重要な連絡を見失うケースも増えており、その回避策として、若者の間では連絡手段をInstagramへ分散させる動きも顕著になっています。


●なぜLINEは「既読」機能を維持し続けるのか?


 LINEが生活に深く根付いた今、ユーザーはどの程度「既読」を意識しているのでしょうか。ニフティキッズが行った小中学生を中心とした子どもたちへの調査では、グループチャットで懸念することの第1位は、やはり「既読スルー」(57.7%)でした。


 次いで「会話の終わらせ方」も上位にランクインしていることから、引き際が分からず結果的に既読スルーを選択せざるを得ないケースも多いと推測されます。また、「未読スルー」も5位(34.8%)に食い込んでいます。


 また、高校生新聞が中高生を対象に行った2021年5月の調査によると、「未読のままにし、都合の良いタイミングで返信する」という回答が66%と最多を占めました。


 返信が遅いと感じる基準は「2〜3日以内」「半日以内」「1日以内」がそれぞれ2割強という結果です。数年前のデータですが、現在の傾向もこれに近いと推察されます。調査結果からは「LINEは返さないのにInstagramは更新している」といった未読スルーへの不満が散見される一方で、逆に「返信が早すぎるとプレッシャーを感じる」という声も上がっています。


 大人については近年の詳細なデータこそ乏しいものの、既読・未読のタイミング以上に、言葉遣いや文面そのものにストレスを感じる傾向が強いようです。仕事などで常時画面を確認できない状況が多いため、普段はあまり気にしません。しかし、恋愛関係やママ友、あるいは関係が悪化している相手など、相手の真意を測りかねるデリケートな状況においてのみ、「既読」の状態が強い関心事となるのでしょう。


 ユーザーの心理を揺さぶり続けてきた「既読」機能ですが、その誕生の背景にはある重要なエピソードが隠されています。


 LINEがリリースされたのは、2011年3月の東日本大震災からわずか3カ月後のことでした。「既読」マークは、たとえ被災して返信ができない状況にあっても、安否や意思を確認できるようにとの願いを込めて設計された機能なのです。だからこそLINEは、ユーザーから廃止や選択制を求める声が上がっても、この仕様をかたくなに守り続けてきました。今後も、緊急時における命をつなぐホットラインとして、「既読」機能は変わらず受け継がれていくはずです。



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  • 東日本の震災のとき、母に連絡がつかず心配でたまらなかった。ハッと思いついてMixiを開いたら、母のアカウントに5分以内にログインの文字。ホッとしたあの瞬間を今も覚えている。
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