発見された大江健三郎さんの未発表小説「旅への試み」の原稿の1枚目(東京大学文学部大江健三郎文庫〓(C)大江健三郎著作権継承者) ノーベル賞作家の大江健三郎さん(1935〜2023年)が、57年のデビュー前後に執筆した短編小説2編の直筆原稿が見つかったと、東京大の大江健三郎文庫が2日、発表した。いずれも未発表の作品で、このうち「暗い部屋からの旅行」と題した短編は、現存する作品として最古になるという。
大江さんは54年に東大に入学し、在学中の57年7月、「死者の奢(おご)り」「他人の足」で文芸誌デビューした。同文庫によると、在学時の下宿先の家主が原稿を保管しており、その遺族から昨年11月に連絡があり真筆と確認された。
「暗い部屋からの旅行」は、400字詰めの原稿用紙82枚で、一部欠損がある。3部構成で、語り手の「僕」が女学生と逃避行するなど恋愛要素が強い。訂正や語順の変更など細かな修正が多く、末尾に「一九五五・五・十九」と記載がある。
もう1編「旅への試み」は原稿用紙42枚で、車いす生活を余儀なくされた少年の苦悩を描く。表現の重複などから「他人の足」の習作とみられる。加筆や修正は少なく、文末に「一九五七・五」の記載がある。
同文庫運営委員会委員長の阿部賢一東大大学院教授は記者会見で、「2作ともこれまで全く知られておらず、(政治や性など)テーマを書き換えていく大江さんの試みが20歳の頃から始まっていたと分かる」と話した。
2作は6日発売の「群像」(講談社)4月号に掲載されるほか、同文庫が研究者向けにデジタル画像を公開する。

発見された大江健三郎さんの未発表小説「暗い部屋からの旅行」の原稿の1枚目(東京大学文学部大江健三郎文庫〓(C)大江健三郎著作権継承者)

大江健三郎さんの未発表小説が発見され、記者会見する東京大大学院の阿部賢一教授(右から2人目)ら=2日午後、東京都文京区