限定公開( 2 )

ロボット掃除機「ルンバ」で知られるアイロボットジャパンは2月、従来品よりも小型の「Roomba Mini(ルンバ ミニ)」を発売した。日本法人が国内の住環境に合わせて発案したモデルで、本体サイズは従来品と比較して約2分の1となっている。
日本での先行販売という形で、4月にもミニから別モデルを発売する予定だ。アイロボットは中国勢の台頭で業績が急速に悪化し、1月に製造委託先である中国企業に買収されたばかりだ。新体制で再起を図ろうとしている。
●サイズも価格も控えめに設定
2月に発売したルンバ ミニと4月に発売する別モデルは充電方式が異なる。前者はゴミを自動的に収集する充電ステーションがあり、最大90日分のゴミをためられるという。一方、4月に発売予定のモデルは自動ゴミ収集の機能が付いていない。
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コンパクトな住居が多い日本の環境に合わせて開発したとしており、サイズは前述の通り従来品からかなり小型化している。搭載機能も異なるが、従来品は基本的に5万円以上の製品が多いが、ルンバ ミニは公式オンラインストアだと4万9800円〜。詳細は後述するが、低価格の中国勢にシェアを奪われた経緯があり、価格を抑えることで巻き返す狙いがあるとみられる。
●一時は世界シェアの7割以上を占めるほど「ブーム」に
アイロボットが米国で創業したのは1990年。当初は家庭用製品ではなく地球外探査を目的とする自律歩行ロボットなど、特殊用途の製品を開発していた。国防省の国防高等研究計画庁から、軍事用ロボットの開発を受注したこともある。こうした技術は、福島第一原発の調査などにも使われた「PackBot(パックボット)」にもつながっている。
ルンバを発売したのは2002年だ。日本でも同年12月に3万9800円で発売し、話題を集めた。ちなみにこの前年にはスウェーデンのElectrolux社が同様のロボット掃除機「トリロバイト」を発売していたが、約30万円と高価格である上にルンバよりも大きかったため、普及しなかった。その後は多くの人がロボット掃除機を「ルンバ」と呼ぶように代名詞化していき、大きな差が開いた。
有力な競合も現れず、アイロボットは2017年頃に世界シェア7割以上を獲得している。同社のロボット掃除機の累計販売台数は2024年に世界で5000万台、日本で600万台を記録した。
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●中国勢に追いやられ「経営破綻」
コロナ禍では巣ごもり需要に支えられ、販売台数を伸ばした。
世界の累計販売台数は2020年に3000万台を記録、その後の4年間で2000万台を売り上げている。だがアイロボットの業績は2021年度をピークとして減収に転じた。2021年度の売上高は15.65億ドルであるのに対し、2024年度には6.8億ドルとなった。2022年度以降は赤字が続き、2025年12月に米連邦破産法第11条の適用を申請した。
要因は中国勢の台頭である。アイロボットの主な販売先は米国や日本、欧州などであり、中国本土でのシェアは小さい。国内で足場を固めた中国勢が海外にも進出するようになり、シェアを奪われた。また、米国向け製品はベトナムで生産しており、トランプ政権以降は関税も収益を圧迫する要因となった。
中国勢では2009年からロボット掃除機を販売するECOVACS(エコバックス)、2016年に参入したBeijing Roborock Technology(ロボロック)が代表的だ。両社とも安いものでは2万〜3万円台の製品も販売しており、価格を武器にアイロボットの市場や東南アジアを攻めた。
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●「価格」だけではなかった中国勢の強み
中国勢は価格優位性だけでなく、性能面でもルンバに差を付けた。
ルンバの空間認識は小型カメラを用いて行う。各地点で撮影した画像を基に、壁や物体からの距離など位置を推定する仕組みだ。より精度の高いものとしてレーザーで認識する方式があるものの、高価であるためアイロボットは採用しなかった。
一方で中国勢が採用したのはレーザー方式(LiDAR)である。照射したレーザーによる反射光を検出して距離を推定する仕組みであり、自動運転車にも使われている。特に暗い場所ではレーザー方式を搭載する中国勢の方が安定して作動するとされている。
高価だったLiDARも2010年代後半から低価格化が進み、量産化によって搭載コストのハードルが大きく下がった。アイロボットは遅れて2025年発売モデルでLiDARを搭載したが、モップの自動乾燥などその他の機能でも中国勢が先行している。
消費者が空間認識能力の違いを知った上で中国勢を選んだとは考えにくいが、少なくとも実力があるという理由でも中国勢は選ばれた。信頼性があり、低価格であるならば消費者は安い方を選ぶはずである。
●中国企業の参加で出直し図る
過去、2022年にAmazonがアイロボットを約2300億円で買収すると発表したが、Amazonが他社製品を不利に扱う可能性があるという理由から米欧の当局が買収を認めず、アイロボットは再建に失敗した。この1月には、ルンバの製造受託企業で債権者の中国企業「杉川机器人有限公司(ピセア)」グループが同社の子会社化を完了している。ピセアグループはシャオミ、ハイアール、フィリップスなどの製品を生産するOEMメーカーである。
テレビやエアコンなど従来の家電と同様、欧米が開発した製品のシェアが既存技術の活用や組み立てを得意とする中国勢に奪われた形だ。今後はルンバの製造コスト削減や中国販売の強化が予想される。先進国でのブランド力も大きいため、中国企業傘下で「ルンバ」の名称は残るだろう。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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