メルカリ、男女賃金差7%→1.4%に 同じ職種・等級でも残る「説明できない格差」を追究して分かった事実

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2026年03月26日 07:50  ITmedia ビジネスオンライン

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中田美沙貴氏(経営戦略室 People&Culture Inclusion and Diversity Lead)に取材した

 「男女賃金格差が37.5%、中でも役割や等級、職種などによる差に起因しない『説明できない格差』が7%あることが分かった」――2023年9月にメルカリが公開した「インパクトレポート」内で示された事実は当時、話題を呼んだ。


【発表から2年半】メルカリ、男女賃金差7%→1.4%に 同じ職種・等級でも残る「説明できない格差」を追究して分かった事実


 男女の賃金格差37.5%という数字は、女性社員の収入は男性の約6割ということを意味する。この差は一般的に、女性管理職の少なさといった点に起因する可能性が考えられる。


 しかし、同じ職種や等級で比較してもなお残る「説明できない格差」が、7%存在することも明らかになったのだ。


 上記の事実を踏まえ、メルカリは報酬調整を実施。「説明できない格差」は2023年8月に2.5%まで縮小した。同社はその後、半年に一度の定期的なモニタリングを実施し、「説明できない格差」が±1%以上存在する場合は是正措置を検討するとしている。2025年6月時点で1.4%と、目標に近づいている。


 日本では2022年7月、「女性活躍推進法」が改正され、常時雇用する労働者が301人以上の企業に対して男女の賃金差の公表が義務付けられた。そうした中で、メルカリは「説明できない格差」という、さらに踏み込んだ指標の開示と是正に取り組んでいる。


 どのようにして「説明できない格差」を突き止め、是正へとつなげたのか。その裏側にはどのような意思決定があったのか。メルカリの歩みについて、中田美沙貴氏(経営戦略室 People&Culture Inclusion and Diversity Lead)に話を聞いた。


●「男女賃金格差37.5%、説明できない格差7%」の衝撃


 男女の賃金格差について、メルカリでは2020年から議論を重ねてきた。2021年には、職場のジェンダー平等に関する取り組みを評価するグローバル認証「EDGE Assess」の取得に向けた取り組みを開始。認証機関とのコミュニケーションを通じて、男女間賃金格差だけでなく、「説明できない格差」の算出についてもアドバイスを受けた。


 2022年7月には、政府によって男女の賃金差の公表が義務付けられた。こうした制度改正の流れを受け、メルカリは開示に向けたプロジェクトを始動。2022年12月には、賃金差を算出するために社内で初めて「重回帰分析」を実施した。


 重回帰分析とは、職種や等級、役職といった賃金に影響しそうな要素をそろえて比較することで、性別以外の影響を取り除き、それでもなお男女間に賃金差があるのかを確認する手法だ。


 重回帰分析を行う上で、大変だった点について中田氏は「賃金を決める要素を洗い出す中で、プライバシーに配慮した、納得感の高い要素の選定に苦労しました」と話す。


 「例えば、『ケア労働をしているかどうか』も賃金に影響を与え得る要素として挙げられると思います。ただ、ケア労働の有無はプライベートな情報なので、会社として完璧に取得すること自体が難しい。さらにケア労働が女性に偏っていた場合、その要素を変数として分析に入れることで、逆に賃金格差が見た目上、縮小する可能性もあることが分かりました。そのため、職種や等級、個人のパフォーマンスといった業務上合理的な変数に限定しました。併せて、個人のプライベートに過度に踏み込まない範囲で設計しています」


 重回帰分析の結果、冒頭の「男女賃金格差37.5%、説明できない格差7%」が算出された。男女賃金格差は、賃金が高く設定されている職種に男性が多いといった理由が想定される。では、こうした条件をそろえてもなお生まれる「説明できない格差」は、どこから来ているのか。


●7%の「説明できない格差」 どこから来ていた?


 「説明できない格差」の要因をさらに分析した結果、中途採用時のオファー年収の差に行き着いた。


 日本企業では前職年収を踏まえてオファー額を決めるのが一般的だ。メルカリでも同様の慣行があったことに加え、同社は中途入社が9割以上を占めていた。


 社会構造的に女性の年収が低い傾向にある中、前職年収を基準にすると女性のオファー額も低くなりやすい。同じ等級・役職でも、500万〜600万円のレンジの中で、男性は上限に近く、女性はそれ未満で提示される可能性がある。前職で生じていた「説明できない格差」を引き継いでしまっていたのだ。


 「入社時で見ると、『説明できない格差』は9%発生していました。その後、当社の評価・報酬制度が適用される中で、自然に7%に縮小されていたことが分かりました」


 社内の賃金格差のデータとアクションプランをまとめて、2023年3月に経営会議に持ち込んだ。その際に議論となったのが「『説明できない格差』の7%という数字が大きいのか、小さいのか、普通なのか」という点だ。


 国内では同様の開示例がなく、判断基準が存在しなかった。それでも、この数字を是正すべき水準と捉えなければ、格差の解消にはつながらない。


 「AdobeやPayPal、Indeedといったグローバルテックカンパニーがベンチマークとしている数字を確認したところ、多くの企業が±1%という数字を設定していることが分かりました。それを踏まえると、7%という数字は大きい。±1%を目標にギャップを縮小していこうと提案しました」


 報酬調整によって是正を進めるという方針について経営層の了承を得て、4月に最終合意に至った。


 中田氏は当時を振り返り、「是正にはまとまった予算が必要でしたが、経営層で『他の成長投資に回すべきではないか』といった議論は出ませんでした。賃金格差の是正をコストではなく、フェアな待遇を実現するための投資と捉える判断だったのです。その背景には、I&Dをグループミッション達成に不可欠と位置付ける、経営陣のフェアネスへの強いコミットメントがあったと感じています」と話す。


●誰の賃金をいくら上げる? 格差是正の道のり


 社内への共有は2023年7月の全社集会で行われ、当時の日本事業トップが男女賃金格差の分析結果と報酬調整について説明し、その場で質問も受け付けた。


 「一部の女性の報酬が上がることを示しているので、批判が出るかなと懸念していたのですが、実際は肯定的な反応が多かったです。『これまで社会で再生産されてきた格差をメルカリで止める』ことは、社会的にもポジティブなインパクトがあると受け止められました」


 質問としては「説明できない格差に対するアクションは理解したが、通常の賃金格差にはどのように対応するのか」「格差の指標が±1%という数字はどのように設定したのか」「ジェンダーは本人の性自認や生物学的な性別などが挙げられるが、どういった情報を基に判断されているのか」などが寄せられた。


 これらの質問に対し、どのように回答したのか。通常の賃金格差については、いわゆるクオータ制のように結果の平等を直接的に担保するのではなく、「機会の平等」に重きを置いていると説明。


 「例えば、採用において、そもそも候補者が全員男性だった場合、結果として男性しか採用できません。こうした状況を防ぐため、面接に進む候補者、すなわち候補者プールの男女比をKPIとして設け、多様な人材が選考プロセスに乗る状態を担保しています。もちろん、職種によっては女性人材がそもそも少ないケースもあるため、KPIは一律ではありません。職種や労働市場の状況に応じて設定しています」


 候補者プールの多様性を確保することで、結果として女性の採用や登用が進み、ハイレイヤーに占める女性比率の向上が実現する。


 また、ジェンダーの定義については、個々人の性自認を尊重する姿勢を前提としつつも、今回の分析および方針は、日本の法制度が法的性別に基づいて設計されている点を踏まえ、法的性別を基準に実施していると回答した。


 全社集会を踏まえ、「説明できない格差」を解消するための報酬是正を同年8月に実施した。該当者と是正金額の算出については「階層ベイズモデル」という分析手法を活用。職種や等級、これまでのパフォーマンスや評価といった指標を踏まえ、「この社員が男性だった場合に適切と考えられる賃金水準」を統計的に算出し、是正金額を決定した。


 算出結果に基づき報酬調整を実施した結果、7%あった「説明できない格差」は2.5%に縮小。その後も半年ごとに重回帰分析でモニタリングを続け、2024年6月は2.3%、2025年6月には1.4%まで改善した。


 報酬調整は2023年8月の1度にとどまり、その後は採用の見直しによってギャップの縮小を図っている。


 「採用時に『前職の給与を反映しない』という対応を取っています。社内の『説明できない格差』は報酬調整で是正しているため、採用段階での対応によって格差は自然と縮小していくと考えています。加えて、採用・評価・登用において不合理な格差が生じていないかについても、それぞれのタイミングにデータ分析を行いモニタリングしています」


 採用や評価の各プロセスで格差が生じないよう運用を徹底してきた結果、2025年6月の大きな成果につながった。目標達成も視野に入る中で、中田氏は「目標達成後の水準維持というフェーズに移りつつあると感じています」と話す。


 「仮に数値が0になれば理想的ですが、それを維持するのは容易ではありません。±1%以下は統計的にも誤差の範囲とされるため、数値に過度にとらわれず、半年ごとの分析と日々のモニタリングを継続していきます」


 単発の是正ではなく、仕組みとして格差を抑え込む。メルカリのアプローチは、今後企業に求められる開示のあり方に一石を投じているといえるかもしれない。



このニュースに関するつぶやき

  • 土方などの筋肉産業はどうしても男のほうが仕事効率高いし風俗産業はどうしても女性の需要が高い。よって全産業平均で男女平等
    • イイネ!4
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