まるで鮮魚の百貨店「角上魚類」が“魚離れ”の逆風をものともせず、成長を続けられるワケ

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2026年04月01日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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ITmedia ビジネスオンライン

2月にオープンした狭山店(出所:プレスリリース)

 「角上魚類」の存在感が増している。22店舗(執筆時点)と規模は大きくないが、直近では埼玉県のロードサイドで攻勢をかけており、今秋にも新店を出店する計画だ。17期連続の増収と好調で、創業から50年超と老舗ながら最近になってメディアで注目を浴び、遅咲きながら成功している。消費者の魚離れが続く中、角上魚類はなぜ成長を続けるのか。その強みを探っていく。


【画像】ボリュームがあって安い角上魚類の寿司


●業績絶好調の背景にはリピーターの存在も?


 角上魚類は1974年に「魚のアメ横」と呼ばれる新潟県寺泊町の海岸通りで鮮魚直販店として創業した。1984年に関東1号店として群馬県高崎市に出店すると、その後は埼玉や東京、千葉などにも出店して店舗数を伸ばしていく。


 22店舗中、新潟県には2店舗しかなく、埼玉県(8店舗)が最も多い。立地はロードサイドが中心だが、赤羽店(東京都北区)やシャポー船橋店(千葉県船橋市)のように駅チカの店舗もある。


 近年は業績が著しく伸びている。運営元の角上魚類ホールディングス(HD)の売上高は2020年3月期の353億円から、直近の2025年3月期は457億円まで成長した。店舗数の増加ペースよりも伸びており、既存店の売上高が好調なようだ。


 ここ数年はテレビで積極的に取り上げられ、知名度が向上したことも大きいだろう。とはいえ、そもそも長期で増収が続いている。SNSやグーグルマップ上では評価する意見が多く、リピーターを相当に獲得していると考えられる。


●実際に店舗へ行ってみると、見慣れない魚も数多く……


 国道4号沿いに面した埼玉県の草加店を訪れると、平日の昼にもかかわらず駐車場の大半が車で埋まっていた。


 売場面積は500平方メートル弱で、都市部の食品スーパーの半分程度。ただ魚に特化しており、そのインパクトはすさまじい。パックに詰められた冷凍・冷蔵の魚や切り身、貝類のほか、刺身や寿司など一通りの魚介類を販売している。


 店内には丸魚のコーナーもあり、ホッケやカレイ、さらに「シログチ」「トクビレ」など普段目にしないような魚を1匹当たり500〜2000円で販売する。同コーナーでは開きや2枚おろし、3枚おろしなど、魚を好きな方法で加工してもらえる。


 総菜コーナーは天丼や魚の揚げ物など、いずれも魚介類の料理だ。一部コーナーで米を販売しているものの、店内に精肉や青果の売場はなく、魚に特化している業態である。


 豊富な鮮魚に加え、価格や量も集客力につながっていると筆者は考える。一般的なスーパーでは2000円程度で売られている刺身の盛り合わせが、草加店では1000円台前半で販売していた。寿司はネタが大きく、中トロなどが入った20貫で3400円だ。量に関しては、同じ刺身用でも100グラム、200グラムなどさまざまなサイズを用意し、1人用からファミリー用まで幅広いニーズに対応している。


●豊富な品ぞろえ、安い価格を維持できるカラクリとは?


 角上魚類がスーパーよりも低価格で商品を販売できるのは、市場から直接仕入れて中間コストを削減しているためだ。対して一般的なスーパーは市場の買参権がないため、卸売業者から魚を仕入れることがほとんどである。公開情報によると、角上魚類は下記のような戦略で差別化を図っている。


・豊洲市場と新潟の中央卸売市場から毎朝仕入れ、その日のうちに店頭まで輸送する


・魚の種類を限定するのではなく、安く仕入れられる魚を優先して仕入れる


・配送は自社で手がける


・店舗は新潟から直送できる場所に出店(関越自動車道付近)


・魚の専門知識を持った人員を多数配置する


 豊富な品ぞろえを実現し、加工などの細かいニーズに対応するためには人件費がかかってしまう。自社での仕入れと配送により、安さを実現できるわけだ。一般的なスーパーでは精肉・青果・加工食品など全方位に対応する必要があるため、角上魚類のような安さ・品ぞろえを鮮魚で実現するのは難しいだろう。


●「魚離れ」が逆説的に成長の要素に


 先述の通りメディアへの露出を通じて知名度が向上したことも成長の一因だが、スーパーの「魚離れ」も角上魚類の成功をもたらしたと考えられる。


 肉食により日本人1人当たりの魚消費量が減少し続ける中、スーパー各社は鮮魚コーナーを縮小し、他の食品に注力してきた。街の鮮魚店も1970年代をピークに減少が続いている。こうした状況で、逆張りの角上魚類は注目を浴びたのだろう。


 似たような業態には小売り事業で80店舗弱(2024年3月末時点)を展開する「魚力」が存在するが、こちらは駅ナカなどにも出店しており、首都圏のロードサイドで角上魚類のライバルは現れていない。品ぞろえや価格の面で食品スーパーよりも優位性があるため、成長のポテンシャルは大きい。


 しかし、別メディアの取材によると、現会長はやみくもな出店をしないと決めているようだ。新店に魚に詳しい人員を配置した場合、既存店の人員が不足するというのがその理由だという。角上魚類は地域密着型の鮮魚専門店として定着しそうだ。


※下記の関連記事にある【完全版】では、配信していない写真とともに記事を閲覧できます。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



このニュースに関するつぶやき

  • そもそも最近、スーパーでは切身や開きの魚しか売っておらず、丸のまま内臓付の魚はほとんど売っていない。だから丸のままの焼魚や烏賊のワタを使った自家製の塩辛を作りたかったら、角上に行く。
    • イイネ!8
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