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Starlink衛星とスマートフォンの直接通信サービスに新たな選択肢ができた。先行するKDDIの「au Starlink Direct」に、NTTドコモが「docomo Starlink Direct」として追随したのだ。今回は両社のサービスがいつ始まったのかを振り返りながら、それぞれの機能の違いや、ユーザーにとってどのようなメリットがあるのかを解説していく。
KDDIは2025年4月10日、日本で初めて衛星とスマートフォンの直接通信サービスの提供を開始した。開始当初はテキストメッセージの送受信にとどまっていたが、その後も他社の追随を許さない圧倒的なスピードで進化を続けている。同年8月28日には対応アプリによるデータ通信を世界で初めて実現した。圏外エリアでも地図アプリや天気予報がスムーズに使えるようになり、実用性が飛躍的に向上して利便性が高い。
2026年3月4日には米国の通信事業者T-Mobileと連携し、国境を越えた海外ローミング接続を世界で初めて開始した。現地の広大な圏外エリアに移動すると自動で接続され、「WhatsApp」や「Messenger」などのボイスアプリを用いた音声通話にも対応した。このようにKDDIが技術の先行実装を力強くけん引する一方で、NTTドコモは約1年遅れとなる2026年4月27日に自社ユーザーへ向けた提供をようやく開始してしっかりと追随していく形をとった。
●オープン路線のKDDIと自社重視のドコモの違い
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両社の明確な違いの1つが、サービスをどのユーザーに届けるかという対象者の設定だ。KDDIは自社契約者への当面無料提供に加えて、他社回線利用者にも広く開放している。2025年5月7日から専用プランを提供し、月額1650円でデュアルSIMなどを活用できるように整備した。このプランにはUQ mobileユーザー向けの割引(月額550円)があるほか、auの4G LTEエリアで利用可能な1GBのデータ通信も付帯する。
対してNTTドコモは自社回線の契約者に特化してサービスを展開する方針だ。「ahamo」を含む全料金プランを契約している約2200万人の顧客を対象に、当面の間は無料かつ申し込み不要で提供する。他社ユーザーへの開放は行わず、自社顧客の利便性向上に専念して深掘りする。さらにNTTドコモビジネスを通じて法人向け取り扱いも同時に開始し、農林業や海上など、日常的に圏外での作業が発生する業界の課題解決に強く力を入れている点が特徴だ。
●対応アプリに差 通信エリアにも違い
位置情報の共有やGoogleのAI「Gemini」を使った検索、緊急速報の受信、RCSやiMessageを通じたファイル送受信といった基本的な機能は両社とも共通している。では、データ通信で使える対応アプリに差はあるのだろうか。結論から言えば、「YAMAP」や「X(旧Twitter)」「SmartNews」「特務機関NERV防災」「WhatsApp」といった主要なサードパーティー製アプリは両社共通で幅広く対応しており、アウトドアや情報収集における基本的な利便性に大きな差はない。
明確な違いが現れるのは、自社系列のアプリや一部の特化型アプリだ。KDDIの「au Starlink Direct」にしか対応していない代表的なアプリとしては、「au PAY」や「auナビウォーク」「auカーナビ」「家族の安心ナビ」といった自社関連サービスのほか、人気天気アプリの「ウェザーニュース」もauのみの対応となっている。
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一方の「docomo Starlink Direct」にしか対応していないアプリとしては、「d払い(一部機能を除く)」や「ドコモメール」「災害用キット」「イマドコサーチ」などが挙げられる。ドコモは自社エコシステムと密接に連携した対応を強みとしている。ただし、ドコモが指定するISPを経由する必要があり、iPhoneの「あんしんセキュリティ」の危険サイト対策がオンだと一部の対応アプリが使えなくなる独自の仕様もある。セキュリティを何よりも重視する同社らしい細かな要件設定がきちんとなされているといえるだろう。
【訂正:4月2日17時1分】docomo Starlink Direct対応アプリに関する段落に、サードパーティー製アプリ(YAMAP、X、SmartNewsなど)への対応について追記を行いました。対応アプリの箇条書きを削除しました。
提供する海上のエリアに関しても両社に大きな違いがある。ドコモは海岸線から12海里までを対応エリアとしている。KDDIも開始当初はドコモと同じく海岸線から12海里までだったが、2026年1月29日に国内の接続エリアを接続水域を含む24海里へと2倍に拡大。これにより、約44kmも離れた海上でもつながるようになり、船舶利用時などの利便性と実用性が向上した。
対応機種も異なる。KDDIは当初50機種から小さくスタートしたが、順次対応機種を拡大して2025年11月には「Apple Watch」にも対応した。スマートフォンを持たずにスマートウォッチ単体でメッセージ送受信ができる使い方を開拓している。一方のドコモは提供開始の時点で一気に84機種のスマートフォンを対象とした。
●料金プランへの組み込みは? ニュースリリースに気になる記述あり
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ビジネスモデルの描き方にも明確な違いが見え隠れする。KDDIはすでに、衛星通信をハイエンド向けプランに標準サービスとして組み込む動きを見せている。データ使い放題の新プラン「auバリューリンクプラン」などで、衛星でのデータ通信や混雑時に強い機能をパッケージ化して付加価値を高める方針だ。自社のフラグシップとなる料金プランの魅力を底上げする狙いが、よりはっきりと打ち出されている。
対するドコモは、全てのプランを対象に当面の間は無料で提供すると宣言している。特定のプランへ組み込むという具体的な発表はまだない。しかし、ニュースリリースにおいてデータ通信料を「加入中の料金プランにおけるデータ容量の消費対象外とする」という表現にしている。そのため、長期的には通常のデータ通信と同じように通信量がカウントされる可能性も十分に残されていると推測していいだろう。
●両社のサービスをユーザー視点で総括
海外渡航やアウトドアレジャーの機会が多く、Apple Watchなどのデバイス単体での利用や、汎用的なアプリを圏外でも自由に使いたいユーザーにとっては、いちはやく世界初の機能を追加し続けるKDDIのサービスが非常に魅力的だ。一方、日常的にドコモのエコシステムを利用しており、いざというときにも使い慣れた「d払い」や「災害用キット」をそのまま使いたいユーザーにとっては、申し込み手続きなしで恩恵を受けられるドコモのサービスが心強い味方となるだろう。
どちらのサービスも、空さえ見えれば「圏外」の不安から解放される、私たちにとっての強力なライフラインとなることは間違いない。
●衛星とスマホの直接通信、ソフトバンクと楽天モバイルも提供予定
Starlink衛星とスマートフォンの直接通信サービスは、ソフトバンクも2026年4月2日に提供すると発表したが、「サービスの詳細は近日中に告知する」としている。
残る楽天モバイルは米AST SpaceMobileの衛星を採用。2025年4月には福島県内で低軌道衛星とスマートフォンのビデオ通話試験に成功し、「Rakuten最強衛星サービス Powered by AST SpaceMobile」として2026年第4四半期(10〜12月)の商用開始を目指している。Starlink衛星と比べてアンテナが大きく、当初からブロードバンド通信に対応する設計をアピールしている。
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