
決裂すれば「文明が滅ぶ」とまで警告していたトランプ大統領。そのアメリカとイランが一転、“2週間の停戦”で合意しました。戦闘から1か月余り、停戦合意の背景は何だったのでしょうか。
トランプ氏「イランへの攻撃を2週間停止」 ホルムズ海峡の開放を条件にイランの市民は身体を張り、アメリカへの抵抗を示しました。
幼い子どもが持つプラカードに記されていたのは「国に命を捧げよ」。
イランの複数の都市では、市民が“人間の鎖”を作り、攻撃目標となりうる橋や発電所の周辺に集まりました。
アメリカ トランプ大統領(7日)
「ひとつの文明全体が死に絶えようとしている。2度とたて直せないほどに」
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イランに対し、このように警告していたトランプ大統領。
事態が急展開したのは、自らが設定した「交渉期限」の1時間半前、日本時間の8日午前7時半ごろのことでした。
アメリカ トランプ大統領(7日)
「イラン側がホルムズ海峡の即時・完全な開放に同意することを条件として、私はイランへの攻撃を2週間停止することに同意した。これは双方による停戦だ」
突如、SNSで「2週間の停戦合意」を明らかにしました。
“停戦”発表直前まで大規模攻撃の準備 停戦予想せず?ニュースサイト「アクシオス」は、この発表直前までアメリカ軍の当局者たちは大規模攻撃の準備を進めていて、停戦を予想していなかったと報じています。
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日本時間の8日夜、記者会見を行ったヘグセス国防長官は、軍事作戦で決定的な勝利をおさめたと話しました。
アメリカ ヘグセス国防長官
「アメリカは保有する軍事力の10%にも満たない力で、世界最大級の軍事力を持つ巨大な『テロ支援国家』を解体し、自国の領土と国民を守る力を持たないことを証明した」
停戦合意のあと、イランの市民は2つの国旗に火を放ち、怒りをあらわにしました。
イラン市民
「イスラエルに死を!」
停戦合意については、イラン側も勝利を主張しています。
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イラン国営テレビ ニュースキャスター
「イランは大きな勝利を収め、犯罪者であるアメリカに原則として、イランの10項目計画を受け入れさせました」
イランがアメリカに提案した内容とは、どのようなものだったのでしょうか。
10項目の中には「戦闘の終結」や「ホルムズ海峡の管理」に関する内容が含まれているとみられていますが、詳細は明らかになっていません。
イランでは、停戦を喜ぶ人がいる一方で、アメリカは信用できないと話す市民もみられました。
イラン市民
「今やアメリカはイランが超大国と理解した。もし合意を履行しないなら、我々は間違いなく別の方法で対処するだろう」
停戦の行方は、イスラエルも鍵を握っています。
ホワイトハウスの当局者によると、イスラエルは2週間の停戦に同意したものの、イランが支援する武装勢力・ヒズボラの拠点であるレバノンは対象外だと主張しています。
一方、仲介にあたったパキスタンのシャリフ首相は、今回の合意について、レバノンも含まれるとしています。
専門家は…
明海大学 小谷哲男 教授
「イスラエルは明らかに停戦を望んでいないわけだから、イスラエルが例えばヒズボラなどと戦闘を再開して、全体の流れを壊すということもある」
事実上閉鎖されている原油輸送の要衝・ホルムズ海峡はどうなるのでしょうか。イランは、このような声明を出しています。
イラン アラグチ外相
「イランへの攻撃が停止されれば、我々も防衛の作戦を中止する。2週間の間、ホルムズ海峡の安全な航行が可能になる」
AP通信によりますと、停戦計画には、ホルムズ海峡を通過する船舶に対し、イランとオマーンの両国が「通航料」を徴収することを認める内容が含まれているということです。
イランは、徴収した資金を復興に充てるとしています。
トランプ氏はSNSで「我々はホルムズ海峡の周辺にとどまる」とアメリカ軍を展開することを示唆したうえで…
アメリカ トランプ大統領
「多くの前向きな動きが見られるだろう。巨額の利益が生まれるはずだ」
アメリカメディアは、通航料は1隻あたり日本円で3億円とも伝えていて、その分、原油価格が上がる可能性もあります。
明海大学 小谷哲男 教授
「ホルムズ海峡はこれまで無料で使えていたのに、通航料を取るという枠組みは受け入れられないという立場を取るのか、政府は非常に難しい判断を迫られる」
ペルシャ湾には現在も日本関連の船舶が42隻、足止めされています。
8日、高市総理はイランのペゼシュキアン大統領と約25分間にわたり電話会談を行いました。
高市総理
「私からホルムズ海峡は世界の物流の要衝であり、そして国際公共財であるという旨を強調しました」
高市総理は、日本を含む全ての国の船舶の航行の安全確保を早期におこなうよう求めたということです。
アメリカとイランの停戦合意を受けて、マーケットは反応。
8日の日経平均株価は2878円値上がりし、歴代3位の上昇幅で、節目の5万6000円台を回復しました。また、停戦をめぐる動きから、原油の先物価格が一時1バレル=91ドル台まで急落。
市場の警戒感はひとまず和らいだ形ですが、投資家たちは冷静です。
投資家
「動かず耐える。耐えるに耐え1か月」
「一歩一歩が大事だと思うので、私たちも一歩一歩、どういう動きになっているのか正しく理解していきたい」
このまま戦闘終結に向かっていくのか。
パキスタン政府は、イランとアメリカが4月10日にパキスタンの首都イスラマバードで対面協議を開催するとしています。
藤森祥平キャスター:
トランプ大統領は「ウラン濃縮はもう行われない」と言っていますが、本当なのでしょうか。
ワシントン支局 大橋純 記者:
イラン次第だと思います。少なくとも現時点でイラン側からそうした発信はありません。
これは、イラン側が当初からこだわってきた問題なので、ハードルは低くないとみられます。ただ、トランプ大統領がわざわざこのタイミングで発信したということは、もしかしたら水面下で何らかの進展があった可能性があるのかもしれません。
一方、ヘグセス国防長官は「現場周辺にとどまって、イランが合意を守っていくのか見守る」とし、さらに「必要があれば、軍事作戦を再開する」とも話していましたので、予断を許さない状況だと思います。
藤森キャスター:
トランプ大統領は提示した15項目について、「すでに多くの合意が得られている」としていますが、どうなのでしょうか。
ワシントン支局 大橋純 記者:
トランプ大統領は様々な状況を自分に都合よく解釈する傾向がありますし、そもそもトランプ政権の辞書に「失敗」という文字はないので、実態がどうであれ、そうした発信をするということは十分あり得ると思います。
トランプ大統領の支持率が低迷する中、イラン問題に対する評価はかなり厳しくなっています。最新の世論調査では、身内の与党・共和党の支持者からもかなり厳しい声が上がっていることがわかっています。
11月の中間選挙に向けて取り組んでいるトランプ大統領ですが、足元ではガソリン価格が急上昇するなど、あまり悠長なことも言っていられない状況です。できる限り、この問題を収束させたいという焦りのようなものもにじんでいると思います。
