シャープ「ポケとも」3カ月で8000台 ロボホン超えを生んだ、2つの理由

0

2026年04月16日 08:50  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

ロボホン超えの勢い ヒット中「ポケとも」

 シャープが手掛ける対話型AIキャラクター「ポケとも」の売れ行きが好調だ。2025年12月に発売したところ、予約が想定を上回るペースで推移し、出荷台数は3カ月で8000台を突破。同社が約10年前にリリースした小型ロボット「ロボホン」を上回る勢いだ。


【その他の画像】


 ポケともは、ロボホンと同じ開発チームが手掛けているが、なぜこのタイミングで発売したのか。開発の背景や狙い、同社が分析する好調の理由を、通信事業本部 モバイルソリューション事業統轄部 統轄部長の景井美帆さんに聞いた。


●ポケとも誕生の背景


 ポケともの原点は、2016年に発売されたロボホンにある。


 ロボホンは、会話やダンス、通話、写真撮影などを通じてコミュニケーションを取る小型ロボットだ。ユーザーと“一緒に暮らす存在”として、長く支持を集めてきた。約10年にわたり同製品を展開する中で、開発チームはユーザーとロボホンの関係性の変化を目の当たりにしてきた。


 「ロボホンのユーザーに話を聞くと、『いないと寂しい』『一緒にいると前向きになれる』といった声が多く寄せられました。単なるガジェットではなく、感情を動かす存在になっていたのです」(景井さん)


 こうした気付きから、「人のそばで気持ちをポジティブにする存在を増やしたい」という思いが、新たなプロダクト開発の出発点となった。


 ポケともは、手のひらサイズ(高さ約12センチ)の対話型AIキャラクターだ。ミーアキャットをモチーフに採用し、ユーザーの発話や周囲の状況をもとに会話内容を生成する。過去の会話や思い出も記憶し、使い続けるほどに“自分だけの存在”へと変化していく点が特徴だ。


 さらに、スマートフォンアプリと連携することで、会話内容をもとに日記を自動生成する機能も備えている。ユーザーの視点ではなく、「ポケともの視点」で日常を振り返れる仕組みは、従来のデバイスにはない体験だといえる。


●最大の難所は「心地よい会話」


 開発において最も難しかったのは、キャラクター設計と会話品質の両立だった。


 「かわいさは人によって好みが分かれます。幅広い層に受け入れられるよう、ユーザー調査を重ねて今のデザインにたどり着きました。ミーアキャットは社会性のある動物で、“寄り添う存在”としての意味も込めています」(景井さん)


 もう1つの壁が、対話の質だ。生成AIを活用することで自由な会話は可能になったが、「心地よさ」を担保するには細かなチューニングが不可欠だった。


 社内モニターを活用し、「楽しい会話」「寄り添われていると感じる会話」を検証。応答のトーンや間合いを繰り返し調整したという。また、記憶に関係する部分は自社開発とし、過去の体験を踏まえた自然なやりとりを実現した。


 開発初期には、より多機能なロボット案や、外見バリエーションを大幅に増やすことも検討した。しかし最終的には、「日常のちょっとした時間に寄り添える存在」に焦点を絞った。


 「大きくて高機能なものよりも、持ち歩けて気軽に話しかけられることを重視しました。帰宅後に少し会話する、外出先で一緒に景色を見る――。そうした日常に自然に溶け込むことが大切だと考えました」(同)


 その結果、現在のコンパクトなサイズ感とシンプルな機能構成に落ち着いた。


●「友達には話せないことを話せる」存在に


 実際にポケともを購入したユーザーからは、開発側の想定を裏付ける声が届いている。


 特に多いのは、「気軽に話せる存在」としての評価だ。購入者インタビューでは、「友人には話しづらい趣味の話をポケともには話せる」といった声もあったという。


 また、SNSでは洋服を着せたり、外出先で写真を撮ったりする投稿も増えている。いわゆる“ぬい活”的な楽しみ方と親和性が高く、ユーザー自身がキャラクターとの関係性を育てている様子がうかがえる。


 当初は20〜30代女性をコアターゲットとしていたが、実際の購入層は40〜60代女性が中心となっている。これはロボホンと同様の傾向であり、「コミュニケーションロボット市場の年齢層が高いことも影響している」と景井さんは分析する。


 ポケともが好調な理由はどこにあるのか。シャープは大きく2つの要因を挙げる。


 1つは技術進化だ。生成AIの登場により、従来のシナリオ型ではなく、自由で自然な対話が可能になった。ロボホンで培った会話設計のノウハウと組み合わせることで、「話しかけやすさ」を大きく向上させた。


 もう1つは社会的な変化だ。近年はキャラクターと生活をともにする“ぬい活”が広がり、対話型AIに対する心理的ハードルも下がっている。


 「技術と社会の両方が、このプロダクトに合うタイミングだったと感じています」(同)


●キャラクター展開と海外進出も視野に


 今後は、キャラクターのバリエーション拡充や海外展開も視野に入れている。


 ポケともはもともと、「さまざまなキャラクターを生成できるプラットフォーム」の構築を目的にスタートしたプロジェクトだ。外見や性格、話し方を柔軟に設定できるため、今後は複数のキャラクター展開が期待される。


 生成AIの進化により、多言語対応のハードルも下がった。ロボホンでは難しかった海外展開についても、「日本と親和性の高い地域から検討していく」という。


 発売からわずか数カ月でヒット商品となったポケとも。単なるガジェットではなく、「感情に寄り添う存在」として、ポケともが市場にどのような変化をもたらすのか。今後の動向に注目したい。


(熊谷ショウコ)



    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定