「女性にポケットはいらない」という思い込み ニッセンの“8ポケット付き”ジャケットがヒットしたワケ

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2026年05月01日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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ポケットに物を入れてもシルエットが崩れにくい仕様に

 働く女性の服にはなぜポケットが少ないのか。これは、多くの女性が抱き続けてきた、素朴で、しかし極めて切実な不満です。


【画像6枚】ジャケットに隠された「8つのポケット」


 男性用のスーツにはスマホや名刺入れ、ペン、財布を収納できる内ポケットが当たり前のように備わっています。一方で、女性用のジャケットやパンツはどうでしょうか。ポケットが全くないか、あっても指先が入る程度の浅いもの、あるいはシルエットを崩さないための「飾り」であることが珍しくありません。


 そこには、アパレル業界における「美しさのためには機能性は二の次でいい」という固定観念がありました。女性は服のシルエットが崩れるためポケットを使わず、小物はバッグなどに入れて持ち運ぶものだという、作り手側の“常識”がありました。


 応援購入サイトMakuakeで発売したニッセンの「手ぶらセットアップ」シリーズは、その常識に真っ向から挑戦しています。「手ぶらジャケット」には、外ポケットが2つ、内側に大容量の「デカポケット」、ファスナー付きポケット、胸ポケット、名刺ポケットなど合計8つのポケットが備えられています。


 また、多くのポケットが付いているというだけでなく、綺麗なシルエットもキープできるというアプローチで支持を集め、第1弾・2弾の2商品で累計1500万円近く購入されました。


●顧客が「諦めていたこと」を仮説に


 今回のヒットは、既存の売れ筋をなぞるだけではたどり着けませんでした。ニッセンが働く女性たちのリアルな生活動線を分析すると、作り手の常識とは全く異なる実態が見つかりました。


 女性の方が男性よりも、スマホ、名刺、鍵、リップ、生理用品など、持ち歩く小物が細かく、そして多いのです。この気付きは女性にも男性同様にポケットが必要ということにとどまらず、むしろ「女性にこそ機能的なポケットが必要ではないか」という仮説を生み出しました。結果として購入者からは「まさにこういう商品が欲しかった」という反響が得られています。


 加えて、このプロジェクトは「非購入者」の声にも向き合いました。


 ニッセンが行った調査では、第1弾の購入を見送った層から「今持っている服で十分」という意見が複数確認できました。しかし商品開発を担当したチームはそこで諦めず、「ポケットが必要なシーンを具体的に想像できていないのではないか」と分析したのです。


 そこで第2弾では、単にポケットを増やしたという機能面の説明をするのではなく、名刺交換やバッグを持たない程度の離席など、具体的なシーンを訴求しました。また、ビジネスから育児などのプライベートまで、「手ぶら」でいることが機動力を生み出すという体験価値を打ち出しました。こうした訴求がうまく刺さり、売り上げにつなげることができました。


 「○○とはこういうものだ」という常識によって素通りしてしまう中にこそ、実は未開拓の市場が眠っています。常識を疑うことの積み重ねが、一見成熟した市場に眠る「諦めていた欲求」を呼び起こし、ヒット商品を生み出すのではないでしょうか。


著者プロフィール:朝倉亮


株式会社マクアケ キュレーション局 キュレーター


鳥取県出身。それぞれ100年以上続く木工所と農業関連の企業を営む両親の元で生まれる。株式会社マクアケ入社後、キュレーターとして数多くのプロジェクトに携わる。


2021年10月より中四国拠点の責任者として、主に中四国地域のプロジェクトサポートを行う。



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  • ワンピースとかスカートにもポケットたくさんつけてほしい。例えばシャツワンピの胸ポケット、ウエストのポケット、とか。手ぶらで買い物行きたいからスマホやエコバッグとか入れる。
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