「トランプ政権でアメリカの成長は5年遅れる」…元外交官が指摘する“最大の失策”とは

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2026年05月26日 10:40  マイナビニュース

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トランプ政権による移民規制や関税強化は、アメリカ経済の成長力を削ぐ可能性がある――。元外交官の山中俊之氏は、「アメリカの成長は5年ほど遅れる」と指摘する。



その背景にあるのは、排外主義によって、アメリカ最大の強みだった「世界中から優秀な人材を集める力」が揺らぎ始めていることだという。一方で、それでもなおアメリカの優位性は簡単には崩れないとも語る。



世界秩序は今後どう変わっていくのか。山中氏の著書『世界のエリートが学んでいる教養としての超現代史』(SB新書)から、一部を抜粋して紹介する。

○トランプ政権で、アメリカの成長は「5年遅れる」?



アメリカは今後、どのような方向へ進むのか。まず内政ですが、当然のごとく、4億に届こうかというほどの人口を擁する巨大な移民国家である点は、今後もずっと変わりません。



毎年の移民に加えてイスラム教徒やユダヤ教徒など出生率の高いグループの存在もあって、アメリカは先進国としては数少ない、少子化に困ることがない国でもあります。

また言語面でも「英語」という世界標準語が話されている利点は大きく、大きな方向性としては、優秀な留学生や研究者が移り住む豊かな土壌であり続けるでしょう。



一方で深刻なのは、「貧富の経済格差」と「人種間格差」の固定化です。



ここに近年の排外的な政治ムードが重なると、分断はいっそう深まります。



トランプ大統領は「不法移民の排除」を掲げており、合法的な移民については受け入れを否定しているわけではありません。しかし強硬な政策が「排外主義の象徴」と受け止められたことは事実であり、留学生ビザの規制強化などで、優秀な人材がアメリカを敬遠する動きも生まれています。関税は、結果として物価高となりアメリカ人の生活を脅かします。



こうした状況が、短期的にはアメリカの成長力を削ぐ可能性があります。現に「トランプ大統領の政策により、アメリカの成長は5年ほど遅れる」のではないかと私は考えています。トランプ大統領自身には成長を促進する意図があるのでしょうが、極端なやり方が反動や分断を拡大し、かえって成長の足を引っ張る可能性は否めません。

○対外姿勢は、内向きかつ選択的介入になる



続いて対外姿勢ですが、結論から言えば、アメリカは国際政治・外交において、今後しばらく、かつてのような積極介入路線には戻らないでしょう。



古くはベトナム戦争、さらにはイラク戦争、アフガニスタン介入と、長年にわたる軍事行動が十分な成果を生まず、むしろ自国の疲弊を招いたという反省が、政治指導層にも国民にも共有されつつあります。



中国への対抗姿勢も、ニューヨークタイムズ(2026年1月24〜25日)が論じているように「アメリカのエリートが、中国の台頭という現実を受け入れ始めた」ことから、先鋭化する可能性は減っていくと思います。



第一次世界大戦以前のような「徹底した孤立主義(不干渉主義)」とまではいかずとも、西半球でアメリカの国益を直接害する場合やイスラエルの安全保障に脅威になる場合などの選択的な介入にとどまるでしょう。



また、EUが再生可能エネルギーへ大きく舵を切る中、アメリカはシェール革命で世界最大級の産油国となり、エネルギー自給率を劇的に高めました。



そのため、エネルギー政策においても、かつてほど西欧と足並みをそろえる必要性は高くありません。こうした環境政策をめぐる欧米の溝の拡大もあり、アメリカはますます内向きな「自国第一主義」となっていくと考えられます。

○それでもアメリカの優位性が揺らがない3つの理由



波乱含みのアメリカですが、この国が衰退する未来像はないでしょう。

多くの課題を抱えながらも、アメリカが今後も「世界の中心」であり続ける理由がいくつもあるからです。



第一には、その広大な国土と地理的安全保障です。



アメリカは、東西は海に面しており、北はカナダ、南はメキシコと、陸続きの軍事的脅威がありません。独立戦争に南北戦争と内戦はありましたが、独立戦争以降に外国勢力に領土を直接攻撃された経験は真珠湾攻撃と9・11同時多発テロ以外には少なく、戦争はアメリカの領域外で行われるという認識すらあります。



このように、隣国から軍事侵攻されるリスクが極めて低いという立地は、世界史的に見ても突出した好条件なのです。



第二に、アメリカが育んできた勤勉の精神と競争原理です。「優秀な人が報われる社会」は、成功ルートからこぼれ落ちてしまった人にとっては厳しい社会と言えますが、「勝ち残れる人」にとっては、アメリカは「最高の国」なのです。



プロテスタント的価値観からくる勤勉さに、世界中から優秀な人材が集まることで醸成された競争原理が掛け合わされ、アメリカは「能力のるつぼ」となりました。

次々とイノベーションを起こしてきた世界第1位の経済大国は、この2大要素に支えられてきたところが大きく、この成功の構造は今後も拡大するでしょう。



その中で、北欧で生まれたSkypeが、最終的にアメリカのマイクロソフトに買収され、Teamsへと統合されたように、他国で生まれた技術がアメリカの巨大資本を通じて世界的な事業へとスケールするといったケースも、引き続き生じていくはずです。



また、現状を見る限り、ChatGPTやGeminiなどの生成AIのプラットフォームビジネスはアメリカ発であり、これからもアメリカ中心が続くと見るのが妥当です。



AI技術が急速に発展したころ、「AI時代になれば分散型のイノベーションが進み、アメリカ一極ではなくなる」という議論が、ニューヨークタイムズでありました。

生成AIでは中国、半導体製造では台湾が力をつけており、その勢力図がどう変化していくのかは未知数です。



しかし、巨大な移民国家として、世界中から優秀な人材が集まり、その知恵の集積としてプラットフォームそのもの、ビジネスモデルそのものをつくる発想力や実行力はアメリカが圧倒的に抜きん出ていることは間違いありません。



そして第三に、教育機関の層の圧倒的な厚さです。



アメリカ建国の当初から、「教育」は非常に重視されてきました。ハーバード大学も、もとはピューリタンの聖職者養成校として創設されたものです。建国後すぐに高等教育機関を設立し、優秀で使命感のあるエリートが育成され、憲法や制度づくりを担ってきた。その教育重視の精神は、今もアメリカ社会に受け継がれています。



トランプ氏の留学生へのビザ発給要件の厳格化は、トランプ氏の退任後は緩和の方向に向かうと考えられます。大学教育を通じて優秀な人材を集めて経済発展させることはアメリカの本質と言ってもいい部分であるからです(一方で優秀とは言えない移民はより制限される可能性があります)。



総合すれば、アメリカは結局のところ、安全保障や経済発展という点からは世界随一の「恵まれた国」ということでしょう。



他国からの侵略リスクが極めて低い地理的条件、強大な経済力と軍事力、優秀な人材を引き寄せるイノベーティブな開拓精神──これらの強みを、社会的分断が深化する時期にあってもなお、揺るぎなく保持している。かつて海を渡ってきたピューリタンでなくとも「神の国」と呼びたくなるくらいです。

○まとめ



アメリカは、国内には社会的分断を抱え、対外的には内向き姿勢を強めながらも、地理的優位性、人口規模、軍事力、教育力、イノベーション力など、強大な国力を支える基盤は今なお強く、今後も選別的に他国の安全保障問題に介入してくる。多少なりとも揺らぎは見えても、世界におけるアメリカの中心的立ち位置が急速に失われるとは考えづらい。


○『世界のエリートが学んでいる教養としての超現代史』(山中俊之/SB新書)


本書では、9つの国・地域について、世界の潮目が変わった「2010年以降」の超現代史を近代から近世、ときには古代史にまで遡りながら解説する。アメリカの「自国第一主義」/ロシアを突き動かす「侵略への恐怖」/中国がこだわる「国家のメンツ」――歴史を知れば、各国の思惑がわかる。世界107カ国に赴き、各国のリアルを知り尽くした元外交官が教える、分断が進む世界を生き抜くための必須教養。()

このニュースに関するつぶやき

  • 逆なんだよ。中国の国防七校から大勢の留学生が米国の大学院に送り込まれていたことが判明した。彼らは中国政府の支援を受けて、軍事転用目的で先端技術を習得しに来てたんだよ。だからビザを厳しくした。
    • イイネ!10
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