
PCで作成した資料をUSBメモリーや社内のサーバで保存する時代は終わり、クラウド上のオンラインストレージに保存する時代へと変化している。社内サーバの廃止を経験した方も多いかもしれない。
「Box」もオンラインストレージサービスの一つだ。2013年に日本で法人を設立し、現在では導入企業が2万2000社を超えるという。最近はAIを活用し、単なる保存に限らない機能を提供している。
Boxはなぜ日本企業に受け入れられたのか。AIでどのような機能を実現できるのか。Box Japan社長の佐藤範之氏に話を聞いた。
●米国で創業、2010年代後半から日本でも浸透
|
|
|
|
Boxは2005年に米国で創業した。その後は法人に焦点を絞り、米国で進んだクラウド化とともに導入企業を増やした。2014年には日本語版をリリースしている。当時の報道によると、日本に進出した時点で世界では22万社以上が導入していた。日本ではセキュリティへの意識の高まりがオンラインストレージへの移行を加速させたという。
「年金機構の個人情報流出問題などを起点に、2010年代後半から企業のITセキュリティが問題になりました。『社内サーバでは守り切れない』という認識が広がる中、セキュリティに強い当社のストレージが選ばれるようになったと感じています。社内サーバだと、出張先など社外からアクセスしにくかったことも、オンラインストレージの普及につながりました」(佐藤氏、以下同)
冒頭の通り現在では国内で2万2000社以上が導入している。佐藤氏によると代理店を介して営業活動をかける「パートナーモデル」が普及につながったという。一般的な外資系IT企業は、直接営業で大企業を狙う。対して、Box Japanは数多くのパートナーを活用し、中小企業にも間口を広げられた。
有料版のストレージ容量が無制限であることも導入企業の増加につながったという。他社のサービスでは容量ごとに料金が異なる場合が多い。導入企業数が多い分、ストレージの調達コストを抑えられ、無制限で提供できると佐藤氏は話す。
●オンラインストレージのいくつものメリット
|
|
|
|
オンラインストレージへの移行はセキュリティ強化のほか、ファイル共有の作業性を向上させる効果がある。
Excelなど同じファイルを複数人が手分けして作成する場合、データをメールやUSBメモリなどを通じて送付し合い、その都度上書きや編集をする必要があった。また、編集回数が多く、関わる人数も多い場合、「誰が最新版を持っているのか」分からなくなってしまう事態も発生しうる。オンラインストレージではこのような煩わしさを省けて、編集履歴も残せる。
「日本はハンコ文化があるように、文書を重視する傾向があります。Boxは文書管理ツールが充実しており、そうした点が普及につながったと見ています」
自治体もBoxを導入しており、神奈川県藤沢市はBoxによって一部作業のペーパーレス化を実現した。
藤沢市では建築関係で検査機関から年間8000件以上、枚数にして16万枚の書類が郵送やファックスなどで届けられていたという。Boxを導入したことで、検査機関は電子データで書類を送付できるようになった。修正箇所の問い合わせに注釈機能を活用し、電話での問い合わせも省略した。また、メタデータの付与やフォルダへの振り分けなど、データの管理業務も自動化している。
|
|
|
|
近年でもトップの判断でオンラインストレージなどのクラウドサービスを禁止し、社内での保存を原則とする中小企業の話はよく聞かれる。だが、利便性が伝われば、オンラインにシフトする企業も増えていくことだろう。
●AI活用も本格化
Box Japanは2023年にAI機能「Box AI」のベータ版を、2024年に正式版をリリースした。ストレージにAIを実装することで、どのような機能が使えるようになるのか。
「単一の文書に関しては、要約や翻訳が可能です。AIエージェントに質問すると、Box内のコンテンツをもとに回答してくれる機能もあります。非構造データを基にタグ付けを行う機能もあります」
文書や画像などは非構造化データであり、企業が保有するデータの8〜9割が該当するとされる。非構造化データは人間には読解できても、機械には読解できない。そのため膨大なデータがあっても効率的に検索・分析する点にハードルがあった。
例えば「エンジン」や「犬」など、特定の物体を写したデータを見つけるには、事前に人がメタデータを付与するか、探すたびに全ての写真に目を通す必要があった。一方、Box AIはファイルからメタデータを抽出する。埋もれたファイルから知見を得られるため、AIによってデータの「資産化」が可能になったという。膨大な写真や文書から、分析や回答を得られるようになり、データが経営に役立つ要素となる。今後もさまざまなAI機能を増やす方針だ。
「AIは業務効率化の機能だけでなく、新たな労働力と捉えられます。今後、AIエージェントは人と同じく組織図を構成する要素になるでしょう」
マイクロソフトなどのビッグテックが提供するオンラインストレージも近年、自社で開発したAIを活用し、機能向上に努めている。SaaSはAI実装が欠かせない時代に突入した。強力な競合を前にBoxはどう立ち向かうのか、今後の戦略に注目だ。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。