評価額160兆円の「怪物」OpenAI、6.2兆円赤字の深層 国家予算超え企業はどこへ向かうのか

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2026年07月24日 08:21  ITmedia ビジネスオンライン

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 生成AIブームの火付け役である「ChatGPT」を展開するOpenAI。


【動画を見る】サム・アルトマンは何が狙いなのか?


 同社が2026年末から2027年にかけて新規上場するという観測が、株式市場をにぎわせている。その目標評価額は、日本円にして実に約160兆円に上る。


 この数字は、日本の2026年度の国家予算(一般財源)である約122兆円を凌駕するだけでなく、トヨタ自動車、ソフトバンクグループ、キオクシアという日本の時価総額トップ3企業の合算(約150兆円)をも上回る。文字通り、国家予算超えの「怪物企業」が誕生しようとしている。


 本稿ではこのOpenAIとは一体どのような企業なのか、改めて深堀りしていきたい。


本記事は、アイティメディアが運営する動画メディア「TechLIVE」で公開した動画『【OpenAIの正体に迫る!】天才サムアルトマンの素顔とイーロンマスクとの泥沼抗争/国家予算超えのバケモノ企業激動の歴史/オフィスで結婚式?OpenAI社長とは【ITmedia ニュース解説 】#50』を基に作成しています。動画の内容は2027年7月17日公開当時のものです。


●驚異の成長と巨額の赤字構造


 160兆円という評価額を支えるのは、急激な売上高の成長である。2022年には2800万ドルだった売上高は、2023年には71倍の20億ドルへと跳ね上がった。さらに、今年は約300億ドルの売り上げを見込んでいる。売り上げの内訳は、個人向け有料版と法人向け(サブスクリプションやAPI利用)がほぼ半々の割合と見られている。


 しかしその驚異的な成長の裏で、巨額の赤字も抱えている。2026年の赤字額は約400億ドルに達すると予測されている。この赤字の背景には、後述する非営利から営利企業への転換に伴う費用の膨張に加え、AI開発に不可欠なデータセンターを稼働させるためのインフラ維持費がある。


 さらに、ライバル企業との競争激化により、優秀なAI科学者やエンジニアを獲得するための人件費が高騰していることも大きな要因だ。黒字化の達成は2030年ごろになると見込まれており、投資家にとってはリスクとリターンを見極める難しい局面にきている。


●「資金集めの天才」サム・アルトマンの手腕とビジョン


 この規格外の企業を率いるCEO、サム・アルトマンは、純粋なAI科学者やエンジニアではない。彼は「世界を変える技術」を見抜く目利きであり、巨額の資金をかき集める資金調達のスペシャリストだ。スタンフォード大学を中退して投資会社を立ち上げ、AirbnbやDropboxといった現在の主要IT企業を見出して投資してきた実績を持つ。


 一方で、彼には別の顔もある。同性のパートナーと結婚し、代理母出産によって子供をもうけた父親としての顔だ。アルトマンは「金権の亡者」と批判されることもあるが、その根底には「子供の未来のために、AIを使って世界をより良いものにしたい」という強い理念があるという。


●イーロン・マスクとの対立とクーデター騒動


 現在のOpenAIの構造を理解するには、その歴史を知る必要がある。同社は2015年、Googleのような巨大IT企業によるAI独占を防ぐため「AIに関する研究をすべてオープンにする非営利団体」として設立された。初期メンバー11人の中には、イーロン・マスクも名を連ねていた。


 しかし、データセンターにかかるコストなど、AI開発には天文学的な費用がかかる。そのため、2019年に非営利法人の傘下に「利益上限を定めた限定的な営利企業」を設立するハイブリッド構造へと移行した。この方針転換に対し「約束と違う」と激怒したイーロン・マスクとは、訴訟問題にまで発展している。


 さらに、組織の歪みは内部でも問題を起こしている。2023年、利益追求に走りすぎていると危惧した非営利側の経営陣が、アルトマンを解雇するクーデターを起こした。しかし、社員の9割が「彼がいないなら辞める」と抗議し、わずか5日で経営陣が謝罪してアルトマンが復帰するという結末を迎えた。これは彼のカリスマ性と、異能の集団を率いるリーダーとしての高い求心力を如実に示している。


●異能の集団を統率する立役者、グレッグ・ブロックマン


 アルトマンが「ビジョナリー」だとすれば、天才たちのアイデアを現実のサービスとして実装した最大の功労者は、社長であり技術トップを務めるグレッグ・ブロックマンである。


 ブロックマンは、アルトマンが投資していた会社の元CTOであり、技術責任者としてOpenAIに引き抜かれた。彼は社長業をこなしながら、今でも週に60〜100時間を現場でのプログラミングに費やすほどの超ハードワーカーだ。


 あまりの忙しさに、自身の結婚式の準備から挙式までもOpenAIのオフィスで行ったという逸話すら残っている。規格外の天才科学者たちが生み出す技術を、私たちが利用できる「ChatGPT」というインフラへと昇華できたのは、彼のような存在があったからだろう。


●迫るIPOと生成AI覇権競争の行方


 OpenAIの快進撃は続くものの、市場の覇権争いは激しさを増している。アルトマンらの方針に異を唱え、OpenAIを去った第2世代のメンバーが立ち上げた「Anthropic(アンソロピック)」など、強力なライバル企業が台頭し、三つ巴の戦いが繰り広げられている。


 年内から来年のうちに実施すると目されているOpenAIのIPOだが、イーロン・マスクが6月に上場させたSpaceXの株価が下落している状況などを目の当たりにし、上場時期を遅らせるべきか経営陣も揺れているという。一方で、ライバルのAnthropicもIPOで数十兆〜数百兆円規模の評価を集めると噂されている。生成AIベンダーを巡る狂騒と覇権競争からは、今後も目を離せない。



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