
G7会議、主要国首脳会議は、トランプ米大統領へのヨイショ会議となったのか?(写真:EPA=時事)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!
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――停戦から一転、米国が再び攻撃を仕掛けているイラン戦争ですが、報道ではイスラエルが負けたことになっています。イスラエル国民の約92%が「イランが勝者」という調査結果もありました。
佐藤 そんなことはありませんけどね。だって、イスラエルは目標を達成できていますから。宿年の問題だったハマスは、もう存在しないも同然ですよね?
――確かに。壊滅的な状態で、ガザの支配力も落ちていて、もういないも同然です。
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佐藤 いま戦っているのも、イスラエルの皆殺し作戦から生き残るために戦わざるを得なくなっているだけですから。
――すさまじいサドンデス戦です。
佐藤 それからレバノンのヒズボラも、もはや脅威ではありません。シリアも弱体化しました。イランも核開発ができないわけですし、イスラエルは目標をほとんど達成していますよね。
――はい。確かに勝っています。
佐藤 イスラエルが勝っているのに、皆、イスラエルの負けという勘違いをしているんですよ。この情報操作戦というか、認知戦とは不思議ですよね。
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――はい。60日の停戦でモサドが再び暗躍するという報道もありました。
佐藤 モジタバ・ハメネイ師を殺すという仕事がまだありますからね。
――あのイランの新指導者は表には一切出てきていません。本当に生きているんですか?
佐藤 さぁ、わかりません。半身不随なのかもしれませんし。しかし、モジタバの名前で文書が出ている限り、存在はしているんです。フ―・マンチュー博士みたいなものですよ。
――世界制覇を目論む天才的な悪の科学者ですね! イギリス人作家、サックス・ローマーの人気シリーズで、日本では悪魔博士として知られていますが、あんな感じだと。
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しかし、アリ・ハメネイ前最高指導者の葬儀には、モジタバの兄弟3人が参列していました。モサドにとっては殺害するチャンスだったのでは?
佐藤 殺しはしませんよ。相手の司令塔が完全にいなくなってしまいますからね。それに、殺そうと思えばいつでも殺せます。
――怖いですね、モサド。
佐藤 生かしておくことがイスラエルの国益になるのなら、生かしておきます。どのタイミングで殺すのが一番イスラエルの利益になるか、それだけを考えています。
――もしもこちらのいうことを聞くなら、殺さないと。
佐藤 あるいは、常に敵対してはいるけれど、コントロールできる範囲ならば問題ないのかもしれません。
――なるほど。話は変わりますが、6月半ばにフランス東部でG7会議が開かれました。なんだかトランプ米大統領をヨイショする接待の集まりに見えたのですが、今後もG7は必要ですか?
佐藤 必要ありません。米国にとってもG7はちょっとお荷物になっていますからね。
――すると、G7に変わる会議として高市さんとトランプのT2とかは?
佐藤 いや、これからは基本的に一対一の会談で全部やっていくことになりますよ。
――では、いまトランプとうまくやっている国は?
佐藤 中国、ロシア、イスラエル、ベネズエラ、コロンビアです。そして、日本もうまくいっています。それは、高市さんが外交への関心を失ってきているからです。
――計7ヵ国の新しいG7......。
佐藤 ドナルドでドンロー主義協商だから、D7ですね。同盟の時代は終わっているので、今後の主流はアンタント(協商)です。
――納得です。さて、そのトランプとプーチンが後回しにしたウクライナ戦争は今後、どうなるんですか? ウクライナも反転攻勢しているようですが、それよりもロシア軍の空爆のすさまじさといったら。これまで爆撃してこなかった高級ホテルなんかもボコボコです。
佐藤 それは、ウクライナが風船爆弾でロシア国内を無差別爆撃したことへの報復です。すごい状態になっています。
――ウクライナ軍には、ロシア軍の弾道ミサイルを撃ち落とすパトリオットミサイルがないんですよ。
佐藤 マッハ10で飛んでくるキンジャールミサイルが来たら、アウトですね。
――はい。ちなみに、中国海軍が原潜から撃った大陸間弾道核ミサイルの「巨浪3号」は、米国の防御システム、ゴールデンドームをぶち破るそうです。
佐藤 日本政府はほとんど反応していませんね。
――だから、本当に怖いことだと思います。話を戻しますが、前回トランプとプーチンが手打ちして、ウクライナ戦争を止めることになったということでしたが、これはなぜですか?
佐藤 風船爆弾なんかが面倒臭いからですよ。偏西風を使っての攻撃など対応のしようがありませんから。そして、精密攻撃が可能なドローンは高価格ですけど、風船に付けるドローンは安いですよね。
――はい。射程1600キロの攻撃用ドローンは一機850〜1000万円。しかし、気球に吊るして長距離を自律飛行するドローンは数十万円です。
佐藤 さらに囮(おとり)で、空き缶でドローンの形を模すこともできます。しかしロシア軍は、全部切り離すまでにその風船爆弾を落とさないとなりません。これだとすごい消耗戦になってしまいます。それが飽和攻撃で一万とかきたら大変ですよ。
――はい。
佐藤 でも、窮地に入るとそんな知恵が出てくるんですね。これは我が大日本帝国軍の風船爆弾に学んでいます。
――はい。その元大日本帝国ですが、もし中国海軍の原潜が核ミサイル模擬弾を南太平洋に撃ち込んだ場合、小泉防衛大臣がNATOと"深刻な懸念"を共有するらしいです。NATOは助けてくれますかね?
佐藤 助けてはくれませんよ。そもそも英仏は北京まで届くミサイルを所持していません。それに日本のために、英仏が核ミサイルを撃ってくれると思いますか?
――......お見舞い電報は打ってくれるでしょうけど。すると、NATOは頼りにならない。
佐藤 だから、ウクライナ戦争終結にしてもNATOにしても、そこで障害になってくるのは現代の軍国主義化するドイツ、メルツ第四帝国です。ロシアのラブロフ外相が「ドイツはウクライナを使って戦争しようとしているが、ドイツが直接ロシアと戦ってもいいと思い始めているようだ」と発言しています。
――G7がD7になりNATOがいらなくなった。しかし、ドイツ第四帝国がやばい。世界の新しい動きが始まってしまったと。
佐藤 結局、ドイツです。これからは世界に冠たるドイツが重要なプレイヤーになります。
――あの、世界が終わる、そして世界が全部ダメになる可能性が見えてきたとき、佐藤さんはとても楽しそうで残酷な笑みをお浮かべになりますね......。
佐藤 そうですかねぇ(冷笑)。
次回へ続く。次回の配信は2026年7月31日(金)予定です。
取材・文/小峯隆生
