飲食中のイヤホン禁止、写真撮影NG…“ルールの多すぎる”飲食店主たちに聞いた本音「本当は、どのルールも作りたくない」

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2026年07月29日 16:01  日刊SPA!

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吉祥寺駅の井の頭公園口(南口)を出てすぐの場所にある「階段ノ上ノ食堂」と、店頭に掲げられた注意書き。「皆様揃われてからのご案内になります」など、店を利用するうえでのルールが記載されている
何気なく飲食店に入ってみたら、細かな注意書きの貼り紙が店内あちこちに掲げられており、たじろいだ経験はないだろうか。入店方法から注文、スマートフォンの使用、滞在時間まで指定されれば、「面倒な店だ」と感じる人もいるだろう。その一方で、厳しいルールを設けながら常に客足が絶えない店もある。なぜ客は、ルールの多い店に足を運ぶのか。記者が店舗を訪れ、内情に迫った。
◆「本当は、どのルールも作りたくない」ーーネットレビューで賛否分かれる定食店主の本音

東京・吉祥寺の「階段ノ上ノ食堂」は日本各地から取り寄せた素材を使った日替わり定食が名物だ。店頭や店内には、「入店は全員揃ってから」「注文は用紙に数字で記入」「料理を提供してから1時間(1人の場合は45分)以上は席代として200円/人、以降100円/人」といった細かな注意書きが掲げられている。

多少身構えながらも日替わりの「地カツオのタタキ」定食(1750円)を注文したが、サラダや小鉢、カツオのタタキはいずれも丁寧に調理され、満足感は高かった。

店主の浜名晃さんによると、2015年の開店当初は、細かなルールは設定していなかったという。

「本当は、どのルールも作りたくないんです。お店や周りの方を考えて行動してもらえれば必要ありません。でも、口頭でお願いすると『そんなこと書いてない』『知らなかった』と言われてしまうことがあって。だったら先に明文化するしかないと思いました」

それぞれのルールには、実際に起きた問題が背景にある。「入店は全員揃ってから」について、こう話す。

「『もう1人もすぐ来る』と入店したグループの残り1人が、10分、15分たっても現れず、ほかのお客様を案内できないことが何度もありました。“すぐ”の感覚は人によって違うので、ルールを設けることにしました」

注文用紙や席料の定めについては、コロナ禍後にワンオペ営業に移行したことがきっかけだったという。

「注文用紙は聞き間違いや調理の中断を減らせます。一定時間を超えた場合の席料には、ギリギリの価格で料理を提供するなか、食事以外で席を利用される際の使用料という意味もあります。こうしたルールを打ち出したのは、ワンオペでも料理の質を落とさず店を回すため、そしてお店を好きで利用してくれている方を大事にしたいという思いが大前提にあります」

◆口コミを読むと自分が壊れてしまう

同店での細かいルール設定について、ネット上ではさまざな意見がある。「料理はおいしい」という声がある一方で、「居心地が悪い」「店主の方からの独特な『圧』がある」といった書き込みがあり、賛否が分かれているのが実情だ。批判もあることは浜名さんも把握しているものの、現在は、それらの書き込みの一つひとつに目を通すことは控えているという。

「少し声を落としてほしいと伝えただけでも、『会話禁止の店』と、前後の事情が省かれ、店が一方的に厳しいように書かれてしまう。悪い口コミを読むと胸がきゅっとして、血の気が引くんです。このままでは自分が壊れてしまうと思い、すべての口コミを見ないようにしています。ルールを守っていただけない場合には伝えますが、ネット上では他の方には状況や真実は伝わりづらく、誤解されるケースもあるので対応しないようにしています」

ルールの存在は、店と客の相性を事前に明確にするフィルターにもなっていると話す。

「ルールを見て『自分には合わない』と思う方が利用を控えることで、トラブルを防げる面もあります。価格に対して食材や料理には自信があります。この値段で出すために、これぐらいお願いしてはダメですか、という気持ちはあります」

◆ルールは「道路標識のようなもの」

次に訪問したのは東京・早稲田の「横浜家系らーめん 武道家本店」。こちらにも、「混雑時は食事中のおしゃべり、携帯等ご遠慮下さい」「ライスの食べ残し厳禁 ※食べ残しは罰金500円」といった細かな注意書きが掲示されている。

多少の物々しさを感じながら、ラーメンを注文した。パンチのある豚骨醤油スープが中太麺に絡み、無料ライスとの相性もいい。平日の21時頃でも席は8割ほど埋まっており根強い人気がうかがえた。

店主の滝坂滋晃さんはルールを設ける背景について、「混雑時に客を必要以上に待たせないため」と話す。

「当初は『食事がお済みになりましたら席をお譲りください』という穏やかな内容しか記載していませんでした。でも、それだけでは伝わらなかったので、スマホや会話についても具体的に記すようになりました」

滝坂さんは2年ほど前、SNSで「店内でイヤホンつけるの止めて欲しい」「イヤホンつけて動画見ながら食べてるから店の回転が悪くなる」と投稿し、大きな反響を呼んだことがある。

「(投稿は)イヤホンをつけっぱなしで動画を見て箸が止まる方や、味の濃さなどを聞いても反応がない方が増えたことが気になっていたからです。ただし、注意するのは店の混雑時に、明らかに食事が止まっている場合だけです」

ルール導入によって、「お客さんを注意する回数が減り、従業員のストレスが激減した」とも話す滝坂さん。注意書きを「道路標識のようなもの」と表現する。

「標識があればスピードを落とす人が増えるのと同じで、書いてあれば守る方が増えます。うちはルールを打ち出してよかったと思っています」

◆多すぎる独自ルールの店が生き残る理由

このような「独自ルール」の多い店が、それでも繁盛するのはなぜか。グルメジャーナリストの東龍氏は次のように指摘する。

「『ルールが多いから繁盛している』のではなく、『繁盛しているからルールを変えずに済む』んです。ルールのせいで客足が大きく落ちれば、頑固な店主でも軌道修正するはずです」

ルールを嫌う人が離れ、料理や店の個性を好む客が残る効果もあるという。

「長く続く店は『料理がおいしい』ことが大前提です。その上で、客が『我慢』しているというより、店に『合う』客が残っている可能性が高い。濃いリピーターが定着すれば、好き嫌いが分かれる店でも成立します」

ただし、合理的なルールも、ぶっきらぼうな命令として届けば反発を招く。東龍氏は「理由をどう伝えるかも大切」と話す。

注意書きの向こうには、店を回し、料理の質を守る事情がある。「ルールが多い」店は利用する側からすれば面倒にも感じるが、見方を変えれば、ルールがあるからこそ美味しい食事ができているという側面があるのだろう。

東龍(とうりゅう)
1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

<取材・文・撮影/松嶋三郎>

【松嶋三郎】
浅く広くがモットーのフリーライター。紙・web問わず、ジャンルも問わず、記事のためならインタビュー・潜入・執筆・写真撮影・撮影モデル役など、できることは何でもやるタイプ。X(旧Twitter):@matsushima36

このニュースに関するつぶやき

  • それだけマナーを知らんアホばかりという事でしょ。ちゃんとマナーやルールを守ってくれてたらこんな注意書きを店主もする必要はない
    • イイネ!30
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