
日本のビジネスパーソンの多くは、平日の夜は仕事が忙しく、時間の余裕がないと考えています。仮に19時に業務を終えられたとしても、移動や食事の時間を差し引けば、自由に使える時間はわずか2時間程度しか残りません。
職種にもよりますが、終業時間が不透明なことも多いため、事前の予定を立てにくく、平日の夜が味気ないものになっているのが現状です。蓄積した平日の疲れを癒やすために、休日を寝て過ごしてしまうという問題については、前著『世界の一流は「休日」に何をしているのか』でも詳しく取り上げました。
一方で、世界の一流と呼ばれる人々は、平日の夜を戦略的に活用しています。仕事ができる人ほど退社時間が早く、日本人と比較して夜の時間を十分に確保している点が大きな特徴です。彼らは確保した時間を用いて、心身を効果的にリフレッシュさせています。
一流の人たちが早く帰宅できる理由は、たとえ業務が完了していなくても、一定の時間で仕事を切り上げるからです。これは、すべての業務を終えてから帰宅しようとする日本人の習慣とは明確に異なります。
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彼らが仕事を早期に切り上げるのは、決して不真面目なわけではありません。むしろ、早めに仕事を終えて休息をとる方が、翌日の生産性を最大限に高められると知っているのです。世界の一流たちが仕事を早く切り上げることで、いかに平日の夜を戦略的に過ごしているかについて詳しく紹介します。
●仕事は終わらせるものではない。「切り上げるものだ」
私は講演の場で、参加者の方によく投げかける質問があります。
「昨日は何時に仕事を終えましたか?」
「その時刻は自分自身で決めたものでしたか?」
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「あるいは仕事が片付いた結果として、その時刻になっただけですか?」
質問をすると、会場内には決まって苦笑が広がります。具体的な退社時刻は19時前後や20時過ぎという回答が多く、中には仕事の終わりの時間をこれまで意識したことがないという答えも返ってきます。
参加者の反応からは、本当はもっと早く帰りたいと願いながらも、それが実現できていないという苦い思いが伝わってきます。現在の日本のオフィスでは、仕事が終わるタイミングを「その日の業務がすべて片付いたとき」と捉える考え方が一般的です。
退社時刻が個人の計画ではなく、その日の仕事の都合によって決まってしまうため、退社する時間が日によって違うという実情が多くの職場で見受けられます。
一方で、世界の一流の時間管理は、これとは大きく異なります。弊社が世界のエグゼクティブ層を対象に実施した調査では、平均の退社時刻は「17 時11分」という結果が出ました。日本の平均的なオフィスワーカーが19時台に退社していると仮定すると、両者の間には約2時間の差が生じています。
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この17時11分という数字を見て、非常に早い時間に退社していると感じる方も多いのではないでしょうか。しかも、早く帰っている人たちは、決して業務に余裕がある「暇な人」ではありません。むしろデータでは、社内評価が高い上位層ほど、退社時刻が早い傾向にありました。
世界のエグゼクティブ層は、業務の質や量はもとより、処理するタスクの数や意思決定の密度においても、極めて負荷の高い状況に置かれています。それにもかかわらず、彼らは17時過ぎには仕事を切り上げているのです。
いったいなぜ、彼らは早々に退社することができるのでしょうか。世界のエグゼクティブとそれ以外の人を分ける決定的な違いは、毎朝の習慣にあります。世界のエグゼクティブは、その日の業務の終了時間を、朝のうちに自分で決めているのです。
弊社が2025年7月から2026年4月にかけて欧米およびアジアのエグゼクティブを対象に実施した調査では、世界のエリート層の72%が「朝のうちにその日の業務を終える時間を決めている」と回答しました。
対して、同様の習慣を持っている一般層はわずか18%にとどまっています。1日の終わりをあらかじめ設定することは、単なるスケジュール管理の技術を意味するのではありません。
この習慣の本質は、自分自身に対して「今日の業務はここまでだ」という境界線を明確に引けるかどうかにあります。私がこの「境界線を引く」という考え方を最初に学んだのは、ワシントン州レドモンドのマイクロソフト本社に勤務していた2005年ごろのことです。当時の上司はオーストラリア人で、無口ながらもひと言に重みがあるタイプでした。
ある日の夕方、私が資料の修正を続けていたところ、通りかかった彼は足を止めずに「仕事は終わらせるものではない。切り上げるものだ」と言い、そのまま荷物をまとめてエレベーターへ消えていきました。私はその言葉の真意をすぐには理解できませんでした。
しかし、その後の数か月間、彼が毎日17時台に席を立つ姿を観察するうちに、私の考えは変わっていきました。彼の仕事の質は、早く切り上げることで低下するどころか、高い水準を維持していました。さらに、翌朝の判断スピードにおいては、周囲の誰よりも秀でていたのです。
「切り上げる」という行為は、決して仕事を途中で放り出す無責任な行動ではありません。それは、翌日の生産性を最大限に引き上げるための、戦略的な中断を意味していました。
(越川慎司、クロスリバー 代表取締役)
※この記事は、書籍『世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか 年収が上がる帰宅後の過ごし方 』(越川慎司/クロスメディア・パブリッシング)に、編集を加えて転載したものです。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
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