
数年前まで教官たちの怒号が飛び交っていた「警察学校」。しかし今は“コンプラ時代”。去年から「寄り添う指導」に変化した兵庫県警察学校では、“ハラスメントNG”の中でどう現場の厳しさを教えるか、教官たちが苦悩していた。巣立ちの日、教官が最後に学生に伝えた言葉とは?
【写真で見る】「お前だけできとらんのじゃ!」“怒号飛び交う”警察学校(2019年)
「お前だけできてない!」“怒号飛び交う”警察学校が激変!?7月31日に行われた、兵庫県 警察学校の卒業式。卒業生達は、街の平和を守る重責を胸に現場へ赴く事になる。
警察官を志す誰もが通る道『警察学校』といえば、数年前まで…
警察学校の教官(2019年)
「お前だけできとらんのじゃ!」「オラオラ遅れんな」
危険な現場でも動じないよう極めて厳しい指導が行われ、学生たちは教官に恐れ慄く…そんなイメージだったが、去年から大きく指導方針を変えた警察学校がある。
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教官
「しっかり声出して頑張って!ファイト!」「元気ないよ〜」
教官たちの掛け声には、“過度な圧”がなく目立っていたのは、学生の笑顔と和やかな姿。
15年で3分の1に!深刻な“なり手不足”見えてきたのは「教官はつらいよ」な本音様変わりした背景には、“時代の波”と深刻な“なり手不足”がある。
兵庫県警察学校・山本康裕教官(42)
「昔の警察学校は厳しいというイメージがあったが、志願者数が減っているという現状がある。厳しいだけでは今の子たちは育たない」
事実、この15年で警察官志望者は3分の1に減少。
そこで兵庫県警察学校では、去年から『寄り添う指導』にチェンジ。
すると見えてきたのは…『教官はつらいよ』な、本音の数々。
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教官
「もうちょっと根性出してほしい…でも指導にハラスメントがあってもダメ」
教官
「厳しくも当然しないといけない。メリハリが非常に難しい」
厳しさと優しさの狭間… “コンプラ時代”に四苦八苦する教官たちの葛藤と、令和式の指導ノウハウも見えてきた。
「拳銃」「逮捕術」「鑑識」の授業 教えているのは“現場のプロ”教官たちおよそ250人の学生が所属する兵庫県警察学校。
教官は、機動捜査隊や刑事など第一線の現場から選ばれた警察官だ。
一方、採用試験に合格した学生は、多くが18〜22歳の若者たち。
学生
「インターンに参加した時に兵庫県警の雰囲気がめっちゃ良くて」
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学生
「カッコイイと言われたいんで」
授業が始まれば 表情は一変。
半年から10か月、寮生活をしながら、警察官としての技術を学ぶ。
凶器を持った相手を警棒などで取り押さえる『逮捕術』や『法律』『鑑識』さらには『拳銃』の授業も…
教官
「警察にとって拳銃は最大の実力行使の手段で一番責任がかかってくる。その責任が君たちにかかってくるんだよと(最初に教える)。初めて拳銃を扱う時に泣いてしまう学生もいる」
人を殺傷しうる武器を持つ責任の重さを、徹底的に染み込ませるという。
“最も過酷”な授業「教練」ハラスメントNGの中、どう教える?そんな多岐に亘る授業で、最も過酷と言われるのが、号令や盾の扱い、気力・体力を叩き込む『教練』。時には5キロの盾を持ってビル11階分の坂を駆け上る。かつては…
兵庫県警察学校の教官(2019年)
「オマエだけできとらんのじゃ!」
教官の怒号や、罰まで加わっていたが、今はNGだ。
教官
「最初は本当に厳しい指導をしていたが心が離れていく学生もいたり。この指導には限界があるのかなと。今の学生がメンタルが昔の警察官より弱いとも思わないので、上手くスイッチ入れてあげるというか」
例えば…ただ、盾を持ち上げさせるのではなく、
教官
「頭上耐久レースをします。クラス皆で耐えきるように」
2つのクラス、どちらがしっかり盾を頭上に構えられるかの『クラス対抗レース』に。
「相手クラスに負けない」という闘志によって、自ずと体力・精神を鍛える。
さらに走り込みも、後ろから叩いて圧をかけるのではなく、教官が先頭に立って走り、一緒に汗をかくスタイルを徹底。
学生たちの表情を見ると、笑顔すらこぼれていた。
学生
「一緒に教官も走ってくれるので、(キツイより)楽しいが勝つ」
教官
「キツイです、めちゃキツイ。『まだ若い者には負けないぞ』と追い抜かれないように頑張りました」
いまや職務質問すらSNSで晒される時代。
警察官個人の立ち居振る舞いは、昔より重要性が増している。
違反運転者の対応シミュレーションで運転者役を担当するのは、爽やかな笑顔が印象的な中田凌輔教官。
中田教官
「自分の経験と知識を交えつつ、少し揉めるタイプの違反者になろうかなと」
【訓練開始】
学生
「学校署の松本です。先程の交差点止まっていなかった」
中田教官(違反者役)
「止まったよ」
自前のサングラスで、見た目の威圧感も再現すると…言葉巧みに学生たちの揚げ足を取り、“役”として追い込む。
学生
「免許証を出して頂く義務がある」
中田教官(違反者役)
「何の義務がある?なんぼ払ったらええの?」
学生
「7000円」
中田教官(違反者役)
「誰に入るん?そのお金」
学生
「……」
中田教官(違反者役)
「え?そんなんも知らず俺に7000円たかってたん?7000円あったら飲みに行くで!」
免許提示を拒否する“違反者”に苦戦していると、学生は…
学生
「(免許を)提示していないので1時7分に現行犯逮捕します」
学生
「これ以上(免許を)出さないなら逮捕します」
中田教官(違反者役)
「免許証見せませんでしたで逮捕なんかある?『警察24時』で見たことない、そんなん!それが兵庫県警のやり方なんですか?」
ここで訓練は終了。
教官
「逮捕権が(脅し文句の)手段になっている。それは絶対ダメ。なんでもかんでも逮捕したらアカン。上手いことしっかり誘導して免許を出させるようにする」
「逮捕という権力を振りかざすな」と指導にも熱が入る教官。
こうした試練を与え、少しずつ警察官の階段を上らせていく。
悩む学生も少なくないが、昔と違い教官たちは積極的な対話を惜しまない。
山本康裕教官は毎日学生と交換日誌。悩みや相談を書いてもらっているという。
かつてこうした日誌には、「取り組みが甘い」などと厳しく短い返事が当たり前だったそうだが山本教官は授業の合間、一人ひとり丁寧に返事。時には、学生のコメントの倍以上もの分量で返すことも…
山本教官
「私も結構厳しい事をたまに言うが、(日誌は)ちょっとリラックスタイム。シールをつけてあげたら喜ぶかなと思って。自腹で買ってます」
そして迎えた、卒業の日。
山本教官
「まず、卒業、おめでとう!私自身も初めての教官、クラス持ったの初めてなので緊張もしたし不安もあったし、でも今日ここにこういう風にみんなの顔見て、安心して送り出せるかなと思ってます」
山本教官
「10か月、お疲れ様でした。長かったな。色々あったな。しんどい時もあったと思います、みんなそれぞれ」
励ましあい切磋琢磨した同期、そして家族、教職員へ「感謝を忘れずに現場に出るように」と伝えた山本教官。
山本教官
「現場に出たら失敗します。だけども、この失敗は、みんなの成長につながります。必ず。逃げて失敗するのはダメ。攻めて、失敗してください。攻めの失敗。で、反省して次に活かす。これが大事です」
10か月間、苦楽を共にした学生たちの巣立ちに、さすがの山本教官も涙があふれる。
卒業生一同
「敬礼!ありがとうございました!」
学生達は卒業式が終わるやいなや車で配属される警察署へ向かい、この日から現場警察官としての任務がはじまる。
山本教官
「濃い日々だったので、あっと言う間に終わった。頑張ってくれると信じています」

