日経平均株価が7万円台まで上昇した2026年の株式市場では、経済情勢の潮流を映して個別株の時価総額ランキングが目まぐるしく変動している。イラン戦争の逆風を受けたトヨタ自動車<7203.T>が長年の首位から陥落し、代わってAI(人工知能)ブームに乗るキオクシアホールディングス<285A.T>が台頭。その勢いも一服すると、今度は金融最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>が一時トップに躍り出た。日銀の利上げなどを手掛かりに強さを発揮する銀行株には、メガバンクにとどまらず、地銀セクターにも熱い視線が向けられつつある。9月末の権利取りへ向けて、地域ならではの特産品や金券といった株主優待も注目される。
<今は昔、メガバンクPBR1倍割れ>
好調な企業活動を背景に、国内の銀行貸出は今年7月まで15カ月連続で前年同月を上回った。プラス幅も直近月は5.4%と高水準を維持した。旺盛な設備投資やIT・人材投資が資金需要を押し上げている。メガバンクなど都銀が貸出の伸びをけん引している一方で、地銀も高い増加率を維持している。
植田和男総裁率いる日銀は昨年12月に利上げに踏み切ると、今年6月にも政策金利を1.0%まで引き上げた。声明文では「経済が大きく下振れるリスクは一頃よりも低下している」とするなど、追加利上げも示唆。イラン戦争による原油高や政府の財政支出の拡大も相まって、日本の長期金利は直近で30年ぶりに3%を突破した。
金利上昇は企業の資金調達を抑制する要素ではあるものの、少なくとも現段階で貸出の勢いに衰えは見られない。一方で、利上げは貸出金利の引き上げを伴い、銀行の収益環境の改善につながる。国債や地方債の値下がりによる運用成績の悪化には注意が必要だが、株式市場では貸出の伸びと日銀の利上げスタンスを材料に、銀行株が買われやすい状況が鮮明化しつつある。
そうした中で、三菱UFJフィナンシャル・グループの株価は今年に入って既に約1.5倍に値上がりし、三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>とともに上場来高値の更新が続いている。みずほフィナンシャルグループ<8411.T>もリーマン・ショック前の水準まで切り上げており、各社のPBR(株価純資産倍率)は1.7−1.9倍まで高まった。メガバンクのPBRは長年の低金利で解散価値の1倍割れ状態が定着していただけに、「金利ある世界」への移行がいかに大きな変化をもたらしたかがわかる。
物色機運の拡大はメガバンク株から地銀にも広がり、東証業種別指数の
「銀行業」の上昇率(昨年末比)は8月19日時点で41%とTOPIX(東証株価指数)の約18%を大幅に上回る。これは、AI関連株が多い非鉄や電機とも遜色のない屈指のパフォーマンスだ。それでも地銀株の中にはまだPBRが1倍を下回る銘柄や、1倍前後にとどまるものも少なくない。地域の特性や株主還元の動向も加味し、積極的に投資対象を探りたい。
<設備投資高水準、九州に熱視線>
7月9日に日銀が発表した地域経済報告(さくらレポート)によれば、企業の設備投資が好調な地域の1つが九州だ。「九州・沖縄」の需要項目等別の判断は「高水準で推移している」となっており、半導体産業や観光業の活況を映している。今後についても政府は全国のブロックごとに産業集積地を形成する成長戦略を進めていく方針で、九州ではAIや半導体、GX(グリーントランスフォーメーション)、造船、防衛・航空宇宙など幅広い分野の振興を図っていく。
そんな九州では、地銀による地域経済への貢献余地も大きい。福岡銀行などを擁するふくおかフィナンシャルグループ<8354.T>、西日本シティ銀行を中核とする西日本フィナンシャルホールディングス<7189.T>の2大グループを筆頭に、現在6銘柄が東京株式市場に上場している。中でもここで注目したいのが宮崎県の指定金融機関で、宮崎市に本店を置く宮崎銀行<8393.T>だ。
宮崎銀は県内外に71の国内本支店と25の出張所を展開し、普通銀行業務をはじめ外国為替や投資信託、代理店業務などを手掛ける。前3月期末の預金残高は3兆2148億円と九州中位の規模で、宮崎県内のシェアは6割超と圧倒的。帝国データバンクの調査によれば、昨年はメインバンク企業の増加数が全国の地銀と信金信組の中で最も多く、399社増えた。
宮崎銀はこのほど、29年3月期を最終年度とする新中期経営計画「First Call Bank 2.0 “シンカ”」を発表した。前期までの中計で追求した、リアルとデジタル(対面と非対面)の融合による「リアル店舗を持ったデジタルバンク」を基盤に、新中計では様々な「シンカ」による「真価」の発揮を図る。(1)求められる金融仲介・コンサル機能の提供に資する営業体制を構築することで、顧客の成長と利益拡大を支えるリレーションシップバンキングの「深化」(2)非対面取引の利便性向上でマスリテール層を中心とした収益力を強化するデジタルバンキングの「進化」(3)銀行機能を超えた新たな価値で地域の多様な課題解決に貢献するリージョナルバンキングの「新価」――が基本戦略の一端だ。
また、業務プロセスへのAI導入や生産性の高い人的資本経営の実践、本部機能の高度化を通じた堅実経営の基盤強化といったそれぞれの「シンカ(進化、深化、新価)」にも注力していくことで、持続的な成長を実現する構え。29年3月期に連結ベースで純利益165億円(前期は141億円)、ROE(株主資本利益率)7%以上(同6.8%)を計画し、健全性指標としては自己資本比率を10%程度(同5.4%)まで高める目標を掲げている。
26年3月期は経常収益、経常利益、当期純利益、いずれも過去最高を達成。27年3月期の業績予想(単体)は、経常収益892億円(前期比+6.2%)、経常利益205億円(前期比+7.4%)、純利益140億円(前期比+3.0%)を予想しており、いずれも過去最高を更新する見込みとしている。
<配当性向40%に魅力のご当地優待も>
一方、株主還元について同行は、29年3月期までに配当性向40%を目指す方針を打ち出した。配当性向は前期の23.9%から27年3月期は32.4%(年間1株配当は56円)に上昇する見通し。また、自社株買いも中計期間中に機動的に実施するという。そして、やはり注目されるのが新たに導入された株主優待だ。地銀は優待を実施していない銘柄も少なくないだけに、この試みは大きな選別ポイントの1つと言えよう。
同行は27年3月期から株主優待制度を設けた。3月末時点で500株以上を1年以上継続保有する株主を対象に、クオカードか地域の優待品(いずれも2000円相当)を贈呈する。さらに、特産品などの地域の優待品を1000株以上(3000株未満)保有の場合で4000円相当、3000株以上保有で8000円相当を受け取れる。継続保有の要件は初回に限って26年9月30日、27年3月31日の2回連続とするため、絶好のエントリータイミングを迎えている。
優待品とされる予定の地域の特産品は、宮崎牛や地頭鶏、本格焼酎のセットといった食品が想定されるほか、スポーツ体験(ゴルフ場利用券)などを選択できるとみられる。豊かな自然に恵まれた宮崎は山海の食材の宝庫として有名だ。世界的に人気が高まっている和牛の中でも、宮崎牛は「和牛のオリンピック」と呼ばれる全国和牛能力共進会で史上初となる4大会連続の「内閣総理大臣賞」を受賞したトップクラスのブランドだ。