
2026年は、折りたたみスマートフォンの潮流が明確に変わる1年になりそうだ。縦長だった従来の「Fold」シリーズとは別に、閉じた状態が「パスポート」に近い横長のボディーを採用するモデルが相次いで登場している。
その代表格が、サムスン電子の「Galaxy Z Fold8」と、Huaweiの「HUAWEI Pura X Max」である。両者は形こそ似ているが、設計思想はまるで異なるデバイスだ。両機にどのような差があるのか、実機を使い比べて確認した。
●両機種のスペックをチェック 似ているようで微妙に異なるサイズ感
まずは主要スペックを確認しておこう。Galaxy Z Fold8のメインディスプレイは約7.6型(4:3、1848×2448ピクセル)、カバーディスプレイは約5.5型(10:16)だ。厚さは展開時が約4.5mm、折りたたみ時が約9.7mmで、重量は約201gに収まる。
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プロセッサには「Snapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxy」を採用し、OSはAndroidベースの「One UI 9」を搭載する。アウトカメラは約5000万画素の広角と超広角による2眼構成で、バッテリー容量は4800mAh、充電は有線45Wとワイヤレス20Wに対応する。防水・防塵(じん)等級はIP48で、価格は26万9880円から(オープン市場向けモデル)。なお、後述するフレックスモードには対応していない。
対するHUAWEI Pura X Maxのメインディスプレイは約7.7型(14.1:10、2584×1828ピクセル)、カバーディスプレイは約5.4型(1264×1848ピクセル)だ。厚さは展開時が約5.2mm、折りたたみ時が約11.2mmで、重量は約229gとなる。
プロセッサは独自設計の「Kirin 9030 Pro」で、OSはHuawei独自の「HarmonyOS 6.1」を搭載する。Androidアプリとの互換性を廃した独自OSのため、Androidアプリはそのままでは動作しない。
アウトカメラは約5000万画素の広角(F1.4〜F4.0の可変絞り)、約5000万画素のペリスコープ望遠(光学3.5倍)、約1250万画素の超広角という3眼構成だ。バッテリー容量は5300mAhで、充電は有線66Wとワイヤレス50Wに対応する。防水・防塵等級はIP58/IP59に準拠し、価格は1万999元(約23万円)からとなる。
スペックの数字だけを見ると、サムスン電子は薄さと軽さに、Huaweiはカメラとバッテリー、充電性能、防水性能を得意としていることが分かる。同じ「コンテンツ消費に特化」というコンセプトながら、サムスン電子は薄型軽量を重視し、Huaweiはよりフラグシップらしい製品に仕上げている。
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実際に手に取ると、約28gの重量差は想像以上に大きい。Galaxy Z Fold8は約201gで、横折りスマートフォンとしては世界最軽量をうたっている。閉じた状態の厚さも約9.7mmに収まり、ジャケットの内ポケットに入れても違和感がない。
対するPura X Maxは約229gで、折りたたみ時の厚さは約11.2mmある。決して重い部類ではないものの、片手で持って長時間SNSを眺めていると、手首に残る疲労感が意外と違ってくる。この差は、毎日使う上でじわじわと影響する部分だ。特に閉じた状態で使うときは、ずっしりとした重さを意識させられる。
●わずかな画面比率の差が意外にも大きい インカメラの位置の差は気になる
Galaxy Z Fold8とPura X Maxは、閉じた状態の画面サイズがそれぞれ約5.5型と約5.4型だ。展開時も約7.6型と約7.7型なので、数値上はほぼ同じに見える。しかし、実機を持ってみると印象がかなり異なる。
閉じた状態での横幅は、Galaxy Z Fold8の約81.9mmに対し、Pura X Maxは約85mmとかなり広い。持ってみると明らかにPura X Maxの方が横に張り出していると感じられ、ホールド感でやや劣る。閉じた状態でスマートフォンとして使いやすいのはGalaxyだ。
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展開時の画面比率はGalaxy Z Fold8が4:3で、Pura X Maxと比べて縦に長く、横に短い。対するPura X Maxは14.1:10と横方向に広く、展開したときの「大きさ」の体感はこちらが上回る。数値上は0.1型の差でしかないが、開いたときの迫力やサイズ感は思った以上に違う。この点は明確にPura X Maxが勝る。
このため、大画面を生かした動画視聴やゲームといった用途には、Pura X Maxの横長比率が非常に有利だ。Galaxyよりも上下の余白が出にくい点は強みといえる。
これに対し「縦に持ってブラウジングする」「4:3の写真を閲覧する」「Instagramのリール動画を視聴する」といった用途ではGalaxyに分がある。写真やテキストのビューワーとして使うには、本体重量が軽いことも大いにプラスだと感じた。
正直なところ、画面サイズについてはどちらが優れているかというより、好みや使い方で評価が分かれるだろう。縦スクロール中心のSNSやWebブラウズならGalaxy Z Fold8の比率が快適であり、動画視聴やゲーム、見開きでの電子書籍の閲覧、ウィンドウを左右に並べる作業ならPura X Maxの横幅が生きてくる。
もう1点、地味だが無視できないのがインカメラのパンチホールの位置だ。Galaxy Z Fold8は上部の右寄り、それも画面端からやや内側に入り込んだ場所にある。このため、動画を全画面で再生したときや、明るい背景のアプリを開いたときに視線が引っ張られてしまう。これは、画面内カメラを廃したGalaxy Z Fold7でも指摘されていたポイントである。
その点、Pura X Maxは同じ右上でもギリギリまで隅に寄せられている。表示中のコンテンツに被りにくく、結果としてGalaxyよりも没入感が高くなる。毎日目にする部分だけに、実機に触れる機会があればぜひ確認しておきたい。
●カメラ性能はHuaweiが明確に強い 折りたたみスマホでもカメラを妥協しない
本体の軽さや薄さとは対照的に、カメラ性能はPura X Maxに軍配が上がる。メインカメラは約5000万画素の広角にF1.4〜F4.0の可変絞りを備え、さらに光学3.5倍のペリスコープ望遠と超広角を加えた3眼構成である。3つのセンサーはいずれもRYYB配列で、暗所に強い点もHuaweiらしい。
対するGalaxy Z Fold8は望遠カメラを採用していない。約5000万画素の広角と超広角のデュアル構成で、望遠は光学相当2倍のデジタルズームで対応する。日常の撮影で困る画質ではなく、Galaxyらしい明るくコントラストの効いた絵作りは健在だが、27万円近い価格を考えると望遠レンズの非搭載は惜しい。
もっとも、Galaxy Z Fold8もiPhone 17と同じカメラ構成であることから、画角的には基本的な部分を押さえている。日常的な風景の撮影といった用途であれば困るシーンは少ないものの、価格を考えるとハードウェアに物足りなさを感じるのは事実だ。
これは薄さや軽さを優先した結果でもあり、フラグシップの一角でもあるPura X Maxとは明確に異なる設計思想が伝わってくる。ある意味で割り切ったデバイスでもあるが、これにはメモリ価格の高騰や円安といった事情も無関係ではないだろう。
●バッテリーと充電、サウンドはHUAWEI、ゲーム性能はGalaxy
バッテリー回りは、Pura X Maxが順当にスペックで上回る。バッテリー容量は5300mAhで、Galaxy Z Fold8の4800mAhに対して余裕がある。Galaxyも従来よりバッテリー容量が増えたことと、新世代のディスプレイを採用したことで、前作のFold7よりも着実に電池持ちは良くなっている。
Pura X Maxはこれに加え、独自OSであるHarmonyOS 6.1の省電力機能や、Kirin 9030 Proの5Gモデム内包設計といった要素が電池持ちにも効いてくると感じた。
充電速度の差はさらに顕著で、Pura X Maxは有線66W/ワイヤレス50Wと高性能だ。進化したとはいえ、有線45W/ワイヤレス20WのGalaxy Z Fold8を大きく引き離す。特にワイヤレス充電の50Wは他社の有線充電に匹敵する速度であり、置くだけで一気に回復する体験は快適そのものだ。
日本では対応する単体の充電器が手に入らないものの、BYDやテスラの一部車両に備え付けられたワイヤレス充電パッドであれば50Wで充電できる。機会があればぜひ試してみてほしい。
対して、ゲーム性能はGalaxy Z Fold8が優位に立つ。Snapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxyは、GPU性能でもドライバの最適化でも一日の長がある。Pura X MaxのKirin 9030 Proは性能的に一段劣り、GPUのMaleoon 935はハードウェアレイトレーシングに非対応だ。Vulkan APIのサポートも1.3までにとどまり、最新世代からは一歩後れを取る。重量級タイトルを高設定で遊ぶなら、素直にGalaxyを選ぶべきだろう。
ただし、どちらも本体の冷却性能が高いとはいえない。薄さを優先した折りたたみスマートフォンである以上、これは構造上の宿命でもある。数十分単位でゲームを続ければ、両機とも発熱とともに性能が落ち込む。コンテンツ消費に特化しているとはいえ、大画面でのゲーミング用途を主軸に据えるなら、折りたたみという選択自体を見直した方がよさそうだ。
見落とされがちだが、スピーカーの配置にも明確な差がある。Galaxy Z Fold8はスピーカーが片側の面に寄せられており、展開して横向きに構えると、音が左側から集中して出る格好になる。ステレオではあるものの、画面の広さに対して音場が偏る印象は否めない。
その点、Pura X Maxは、展開時に対角となる位置にスピーカーを配置している。開いた状態で動画を再生すると、ステレオ感があり画面いっぱいに音が広がる。大画面で映像を楽しむという用途を前提に置くなら、この差は無視できない。折りたたみスマートフォンを「持ち歩けるタブレット」として使う人ほど、Pura X Maxの設計には納得させられるはずだ。
●ソフトウェアの完成度はGalaxyがリードするが、フレックスモードやペン対応のHuaweiも捨てがたい
折りたたみスマートフォンで重視されるマルチタスク性能に関しては、Galaxy Z Fold8が頭ひとつ抜けている。One UIの画面分割は成熟しており、今回は縦向きの3分割にも対応した。これまでタブレットや3つ折りの「Galaxy Z TriFold」でしか実現できなかった使い方が、ポケットに入るサイズで可能になったわけだ。
SNSのタイムライン、メッセージ、ブラウザと、複数のアプリを縦に並べて同時に追える体験は、SNSを頻繁に使う人ほど刺さるはずだ。画面出力でデスクトップモードのように使えるSamsung DeXやおサイフケータイへの対応も含め、日本で不自由なく使えるという点でもGalaxyは強い。
対するHuaweiのHarmonyOS 6.1はNEXT系であり、Androidアプリの実行そのものに対応しない。動かせるのは、HarmonyOS向けにネイティブ開発されたアプリに限られる。中国国内で使われる主要アプリは着実にそろってきているが、日本のユーザーが日常的に使うアプリとなると話は別だ。
HarmonyOSには「出境易」というAndroidアプリやGoogleサービスを動かせる仕組みこそあるが、Googleのコアシステムに依存しているアプリの動作、画面の分割操作、バックグラウンド処理などには一部制約がある。これまで積み上げてきたAndroidアプリの資産をそのまま持ち込める点は、Galaxyの最大の強みだといえる。
ただし、Galaxy Z Fold8には弱点がある。今まで対応していたフレックスモードに非対応という点だ(上位モデルの「Galaxy Z Fold8 Ultra」は対応する)。
ヒンジを途中で止めて自立させ、上半分に映像、下半分に操作系を表示するという、折りたたみスマートフォンならではの使い方ができない。三脚なしでの動画撮影やビデオ通話、卓上での動画視聴といった場面で、この差は思いのほか大きい。
その点、Pura X Maxはフレックスモードをサポートしているうえに、「M-Pen 3 Mini」(別売)にも対応する。折りたたみ端末ならではの遊び心と、ペンを求めるユーザーへの配慮が残されている。ソフトウェアの完成度で劣ってもなお、こちらを選ぶ理由はここにある。
●コンテンツ消費特化の折りたたみスマホ どちらにも良さはあるが、Galaxyの方が使いやすい
結論からいえば、日本で日常的に使う1台としてはGalaxy Z Fold8を推したい。物理的な軽さ、Androidアプリの互換性、おサイフケータイ、そして縦3分割まで踏み込んだマルチタスク性能と、全体的な完成度は現時点で最も高い。
これに対し、カメラを妥協したくない人、大画面で映像コンテンツを楽しみたい人、フレックスモードやペン対応を求める人にとっては、Pura X Maxが依然として魅力的な選択肢であり続ける。3眼構成に加えてペリスコープ望遠と可変絞りのメインカメラというフルスペックのカメラを備え、対角配置のステレオスピーカー、5300mAhのバッテリーと高い充電性能、そしてペン対応にフレックスモードまでそろう。防水・防塵等級も、IP48のGalaxy Z Fold8に対し、IP58/IP59を取得しているPura X Maxが優位だ。
どちらもコンテンツ消費に特化した次代の折りたたみスマートフォンではあるものの、その設計思想は大きく異なる。Galaxyはコンテンツ消費に特化した結果、閉じてコンパクト、開いて大画面という折りたたみスマートフォンとして、消費者にとってある意味で分かりやすい端末となった。それゆえに、フレックスモードを廃するなどの割り切りも見られる。
一方のPura X Maxは、上記のコンセプトを持ちつつ、高性能なカメラやフレックスモード、ペン対応、さらに高い防水性能といった要素をしっかり備えたプレミアム路線の機種である。ゆえに上位互換とも思われるが、その分だけ本体重量が重くなる弊害もある。日本未発売であることに加え、Androidアプリが動作しないHarmonyOS環境という高いハードルを承知のうえで手に取るのなら、得られる体験は格別だ。
さて、2026年秋に登場するとうわさされる折りたたみiPhoneは、閉じた状態で約5.5型、開いた状態で約7.8型とされている。現行iPhoneよりやや短くずんぐりしたパスポート型の形状であり、今回使い比べたGalaxy Z Fold8やPura X Maxに近いデバイスだと考えられる。
ただし、ソフトウェアの方向性は未知数だ。AppleがGalaxyのような3分割の複雑なマルチウィンドウをiOSに持ち込むとは考えにくく、むしろiPadOSの「ステージマネージャ(作業中のアプリを中央に表示し、その他のアプリを端に表示する機能)」的な発想か、あるいは大画面を1つのアプリでぜいたくに使わせる方向に振ってくる可能性が高い。この点において、ソフトウェアの思想はHuaweiのPura X Maxに近い製品になるのではないかと考える。
折りたたみスマートフォンで中国市場のトップシェアを持つHuaweiと、それ以外の地域でトップシェアを持つサムスン電子が、「新しい形」のスマートフォンを相次いで投入するのは極めてまれだ。ここにAppleがうわさ通り参入することで、折りたたみスマートフォンという存在にどのような変化が見られるのか。今後も注視していきたい。
●著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
・X:https://twitter.com/Hayaponlog
・Webサイト:https://hayaponlog.com/
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