
世界最大規模のヒト型ロボット運動会への出場を提案し、プロジェクトを統括したのは、新卒1年目の社員だった――。GMO AI&ロボティクス商事(東京都渋谷区)は9月8日、8月に中国・北京で開催された「第2回 世界ヒューマノイド運動会」への出場結果を報告した。発案者は、この春GMOインターネットグループに入社したばかりの廣本一真氏。記者会見で登壇した廣本氏は、大会出場までの開発や現地でのトラブルなど、同大会での舞台裏を明かした。
廣本氏が大会に挑戦してみようと思った理由は3つ。1つ目は、今後のヒト型ロボットの社会実装でも重要になる「走る技術」を確立すること。2つ目は、市販のロボットの性能をどこまで引き出せるか試すこと。廣本氏は「市販のロボットを、われわれが一番使いこなせないといけない」と話す。
そして3つ目は、ロボットが自らレーンを認識して走る自律走行技術を開発することだ。将来、実際の現場で動くには、道路や通路をロボット自身が認識する必要があるという。
使ったのは、中国Unitree Robotics製の市販ヒューマノイド「G1」。同社のチームは、G1をベースに追加開発した「ひとみん」で100m、400m、1500mの陸上3種目に挑んだ。
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同社はまず、ひとみんの走行性能を引き上げた。GMOインターネットグループ陸上部の選手の動きを参考に、新たな走行フォームを作ることで、標準では秒速1.5mほどだった走行速度を、最大で秒速5.5mほどまで向上させた。高速化するとモーターが過熱して停止してしまうため、安全機能が作動する寸前の状態を保ちながら走らせる技術も開発した。
さらに、自律走行でレーンから外れないよう、30カ所を超える競技場で画像を集めた。人が胸にカメラを付けて競技場を走り、集めた約5000枚の画像に手作業でレーンをなぞって印を付け、AIに学習させたという。その後、実際の陸上競技場にロボットを持ち込み、延べ約20日間にわたって走行試験を繰り返した。
それでも、実際の競技は想定と違った。事前に学習させたのは屋外競技場の画像だったが、北京の会場は屋内。レーン脇には明るい広告表示もあり、ロボットがレーンを見失う場面があった。チームは現地で改めてデータを集めてパラメータを調整し、本番ではレーンを認識して走れる状態に仕上げたという。
400mのレースでは、ロボットが転倒して頭部が破損するトラブルも発生した。次のレースまで残された時間は約20分しかない。チームは現地に持ち込んでいた予備部品を使って約10分で修理を終え、そのまま次のレースにも出場させた。
最終的な成績は、400mが44体中9位タイ、1500mが35体中7位、100mが74体中13位だった。1500mは7分43秒89で完走した。
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優勝には届かなかったが、同社は別の点を強調する。廣本氏によると、上位には大会に向けて走行性能に特化した機体を開発してきたチームが多かった。一方、GMOが使ったのは市販の汎用機であるG1だ。同氏は「汎用機体、市販の機体として挑んだ中では、成績としては1番のタイムを記録できたかなと思っている」と振り返った。
新卒1年目の社員の提案から始まり、市販機を改造して世界大会に臨み、本番では壊れた機体を10分で直して再び走らせた。廣本氏は大会から得た学びとして、「現場のデータを学習する重要性」と「壊れたときに支える体制」の2点を挙げた。同社は、この経験を今後のヒト型ロボットの社会実装にも生かすとしている。
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