富裕層向けカードの潮流が変化 アメックス、三井住友、ダイナース、ラグジュアリーカードが狙う“特別な体験価値”とは?

7

2026年09月22日 10:10  ITmedia Mobile

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia Mobile

年会費16万5000円の「プラチナ・カード」

 富裕層向けのプレミアムカードでは、会員特典として、レストランやホテルの優待、国内外の空港ラウンジの利用、コンシェルジュサービスなどが受けられるのが一般的だ。


【その他の画像】


 だが最近では会員のニーズが変化し、モノを所有することよりも、特別な体験や経験をすることにシフトしている。その傾向は特に若い人ほど顕著なのだそうだ。


 そのため、各カード会社では、独自の体験価値が得られるイベントなどを多く提供している。一体どのような体験価値が得られるのか。アメリカン・エキスプレス、三井住友カード、ダイナース、ラグジュアリーカードの4社に聞いた。


●アメリカン・エキスプレス:唯一無二の興奮が得られる会員限定のエンタメ体験


 1993年に日本初の「プラチナ・カード」を発行したアメリカン・エキスプレス。日本のプレミアムカードのパイオニアとして、アメックスでしか得られない体験を意識する。中でもスポーツ、芸術、音楽などのエンターテインメント特典では、会員限定イベントの先行申し込みや専用エリアなど、プラチナ・カード会員だけの特別体験を用意している。


 例えば、グローバル・オフィシャル・パートナーであるF1では、アメックス独自のスペシャルな現地観戦を提供。ビリー・アイリッシュなど、チケット獲得困難なイベントの先行販売や、紅葉時期の清水寺の貸切ナイトビューイングなど、通常では得難い体験を用意する。2024年には日本最大級の野外音楽フェス「FUJI ROCK FESTIVAL」の協賛を開始した。


 「アメックスがターゲットとするアクティブに人生を楽しんでいる層と、フジロックの参加者が合致していると考え、スポンサーシップを開始しました。アメックス独自の体験価値を感じていただきやすいと感じています。昨年(2025年)は初年度と比較するとアメックスブースへの来場者が大幅に増え、認知度がより高まった印象です」と、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド 広報の浅見健介氏は説明する。


 3年目となる2026年は、アメックスのカード会員限定で特別価格のチケットを販売。プラチナ・カードの新規入会特典としては、3日通し券、越後湯沢駅付近のNASPAニューオータニの2泊3日の宿泊、3000円分のドリンクチケットなど、豪華特典を用意したところ、大きな反響が得られたという。


 現地では、アメックスブースの隣に、プラチナ・カード会員限定のラウンジを併設。野外イベントだけに、雨宿りや日差しを避ける休憩スポットとして利用するなど、多くの会員が訪れた。中には、「昨年のフジロックでアメックスの協賛を知り、今年プラチナ・カードに入会した」と語る会員もいたそうだ。


 会場内の多くの対象店舗では、アメックスのカード決済で10%キャッシュバック(上限3000円)を実施。このキャッシュバックキャンペーンは初年度から好評で、2025年と2026年夏にも実施された。


 アメックスでは、7月1日にプラチナ・カードをリニューアルし、トラベル、ダイニング、エンターテインメントの特典を強化。10万円分の海外航空券のクーポンや、1泊5万円相当の無料宿泊など、新たな5つの特典を用意した。


 「今後も日本独自のパートナーシップや、アメックスが持つグローバルネットワークを活用するからこそ実現できる体験価値に、より磨きをかけていきたい。イベントを目的に旅やダイニングの特典を利用するなど、それぞれの体験価値が積み重なることで、よりアメックスの会員であることの価値を感じていただければと思います」(浅見氏)。


●三井住友カード:多様化するニーズに応える独自カスタマイズによる上質な体験


 Visa最上位の「Infinite(インフィニット)」ランクのカードとして、2025年9月に「三井住友カード Visa Infinite(以下、Visa Infinite)」、2026年5月に「Oliveフレキシブルペイ Visa Infinite(以下、Olive Infinite)」を発行した三井住友カード。


 「富裕層の多様化や若年化、キャッシュレス比率の上昇による裾野の拡大によって、これまでのプレミアムカードに求められてきたステータス系サービスに加え、合理的な経済性を求められる方が増えていると感じています」と、三井住友カード 執行役員 マーケティング本部長の伊藤亮佑氏は話す。


 このようなプレミアム層の多様化を踏まえ、グルメ/ダイニング、アート、音楽/エンタメ、趣味/レジャーの4ジャンルをバランスよく展開。例えば食のイベントなら複数の有名シェフのコラボレーション、美術なら著名キュレーターによる解説、音楽なら会員限定の小規模なスペシャルコンサートなど、会員向けに独自カスタマイズをしたイベントを用意。Visaのスポンサーシップの活用により、国際的なスポーツ大会をテーマにしたイベントも開催する。


 既に実施したVisa Infiniteのイベントの中では、世界的なヴァイオリニストである千住真理子氏によるストラディバリウスの生演奏と美食を融合したイベントや、石川遼プロなど、憧れのプロゴルファーと同じフィールドでプレイできるスペシャルラウンド、Visaが協賛する「ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック」の特別イベントなどが特に好評だった。千住真理子氏のイベント参加者からは、「美しい音色に自然と涙があふれでてきました。期待した以上の素晴らしい体験に、とても満足しました」という感想があったという。


 「Infiniteカードのイベントは、ここでしか得られない体験価値にこだわって設計しています。お金をかけても体験できないことに価値を感じる人が増えていると考えています」(伊藤氏)。


●ダイナースクラブ:ライフスタイルや趣味嗜好にフィットしたグルメ体験


 ブランドの由来でもある「ダイナース(食事をする人)」にちなんで、1960年の日本創業以来、グルメに力を入れるダイナースクラブカード。グルメ特典はプレミアムカードの代表格だが、その体験価値においても変化が起きている。


 「かつてのプレミアムカードのサービスは、誰もが知っている高級店・高級ホテルでの優待が中心でした。しかし今の会員が求めているのは、自分のライフスタイルや趣味嗜好(しこう)にフィットした体験です。これに対応するため、当社のコンシェルジュサービスでは、単純な予約代行にとどまらず、会員一人一人のライフスタイルや人生のステージを深く理解した上で、最適な体験をコーディネートしています」と、三井住友トラストクラブ 執行役員 マーケティング本部長の斉藤幸子氏は話す。


 2026年4月には24の新サービスの提供を開始し、グルメ関連では6つの新サービスをローンチした。その1つがプレミアムカード会員限定で、予約困難店の席を貸し切りで利用する企画。この他、コース料理を2人以上で利用した場合に1人分が無料になる「エグゼクティブ ダイニング」を、国内の高級店に加え、ハワイやシンガポール、台湾の海外店舗にも拡大。所定のレストランでの利用金額に応じて最大20%をキャッシュバックする、グルメキャッシュバック特典なども開始した。


 2025年秋には、ダイナースクラブ日本創業65周年を記念した、招待制カード「ダイナースクラブ ロイヤルプレミアムカード」会員限定の特別イベントを開催。大正2年に建造された格調高い綱町三井倶楽部を会場に、通常非公開のワインセラーを見学したり、特別コース料理と厳選ワインのペアリングを楽しんだりした。参加した会員からは、「さすがダイナースクラブだと思える特別感のあるイベントだった」「素晴らしい供宴、極上のおもてなしだった」と好評だった。


 「会員限定イベントへの参加意欲は高まっており、定員を設けたプレミアムな体験プログラムは、告知後に短期間で満席になるケースも少なくありません。かつての消費としての体験から、人脈形成、自己成長、知的探求といった多面的なリターンを求める方が増えたと実感しています」(斉藤氏)。


●ラグジュアリーカード:会員同士のつながりが資産になる特別な社交場


 プレミアムカード会員限定のイベントでは、同じカードを持つ会員とのつながりが生まれるのもメリット。Mastercard最上位クラス「ワールドエリート」を日本で初めて採用した「ラグジュアリーカード(LC)」では、会員同士のリアルな出会いが生まれる特別な場として「ソーシャルアワー」を実施している。


 共通の趣味や関心事を通じて個人的なつながりを楽しみたい方向けの「テーマ別ソーシャルアワー」と、仕事関連のつながりを第一に望む方向けの「ビジネスネットワーキングソーシャルアワー」を用意する。


 2025年11月には日本創立9周年を記念した、大人が本気で楽しむ「LC運動会」を開催。参加者からは、「その日初めてお会いする人がほとんどにもかかわらず、コンテンツごとに皆で作戦を立て、強い団結力で勝利を目指せました」「休憩時間に名刺交換をしたり、豪華なケータリングで飲食を取りながら談笑したりと、充実した1日を過ごせました」といった声が聞かれるなど、会員同士の交流に特別な価値を感じた人が多かった。


 「これまでは関東近郊の会員が多かったのですが、2025年度の新規入会会員は全国47都道府県のいずれでも2桁増となりました。新規会員数は前年比で134%増と過去最大となり、中でも20代の入会が増えています。イベント参加者はその内容に興味を持っている会員が集い、年齢に関係なく会員同士がつながっている印象です」と、ラグジュアリーカード合同会社 事業開発・業務統括本部長の渡部吉一氏は話す。


 花火大会でのVIP席や新国立競技場VIPルーム貸切などのイベントの他、7月からは瀬戸内海に面する瀬戸内市との戦略的パートナーシップにより、世界最大規模の備前焼大窯貸切、無人島へのプライベートツアーなど、10のLC限定の特別体験を提供する。


 同社が2025年7月に発表した「新富裕層のライフスタイル調査」では、会員の中でも特に消費行動において活発な傾向が見られた「アクティブ・ラグジュアリー層」の特徴として、心を動かす体験や人との関係性、自己成長に積極的に投資する傾向が明らかになったという。


 プレミアムカードの傾向は、単なるモノ消費からここでしか得られない特別体験へと進化し、それをどんな人と一緒に体験するのかにもこだわりが生まれているようだ。



このニュースに関するつぶやき

  • それなりの年会費を納めているから、十分ペイするね。 でさぁどうか? これらの方々は、目先の物では釣られませんね。
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(4件)

ランキングトレンド

前日のランキングへ

ニュース設定