※画像はイメージです。生成AIを使用しています 読書の秋。夏の猛暑の間も、涼みながら読書や勉強に没頭できる場所として親しまれる公共図書館。誰もが静かに過ごす空間で、突如として周囲の迷惑を顧みない「騒音問題」が発生したら……。
本来、図書館は様々な目的で誰でも利用が可能な施設であることに変わりませんが、日本図書館協会が採択している「図書館の自由に関する宣言」(1954年採択、1979年改訂)でも、利用者の知る自由を保障し、資料と施設を提供する施設であることが示されています。
つまり、一人の利用者によって他の利用者が静かに資料を読んだり、勉強したりする機会まで奪われるような状況は、図書館本来の役割とも相容れないものです。
今回は、静寂が保たれるはずの図書館で起きた老人の身勝手な行動がトラブルを招いたエピソードを紹介します。
◆本来静かなはずの図書館で響き渡る謎の歌声
「ここ数年の夏は本当に命に関わるレベルの酷暑じゃないですか。エアコンの効いた涼しい図書館は、資格試験の勉強をするのに最高の環境だったんです」
そう当時を振り返るのは、宅建(宅地建物取引士)の資格取得を目指して勉強に励んでいた中村さん(仮名・27歳)。
その日も午前中から開館と同時に入館し、昼は近くのコンビニでお弁当を買って外のテラスで食べるという、いつものルーティンをこなしていたそうです。
しかし、昼食を終えてパブリックスペースの閲覧デスクに戻り、調べ物をしていた時に異変が起こります。
「どこからか、聞き覚えのない鼻歌がうっすら聞こえてきたんです。よく聴いてみると、軍歌のような戦時中を思わせる独特で古臭いメロディで……」
静まり返った館内に響く不快な音。気になった中村さんが周囲を見渡すと、少し後ろのベンチに座って新聞を広げている一人の老人の姿が視界に入ったそうです。
◆エスカレートする老人の鼻歌
なんと、その老人は昭和の時代に流行ったソニーの『ウォークマン』でカセットテープを再生しながらレトロなヘッドホンで音楽を聴いているようでした。
「新聞や雑誌に目を通しながら、ヘッドホンから流れる音楽に合わせて機嫌よく口ずさんでいたんです。最初は小さな声だったんですが、だんだんノリノリになって声が大きくなってきて……」
静かな空間に響き渡る歌声に、周囲で勉強や読書をしていた利用客たちからは一斉に冷ややかな視線が注がれたといいます。
しばらくして事態に気づいた職員(司書)が2名、老人の元へと駆け寄っていきました。「他のお客様のご迷惑になりますので……」と何度も注意を促したそうですが、老人は「あと少しだから」と聞く耳を持ちません。
「それどころか、少しニヤニヤしながら歌い続けていて。反省する素振りすらまったく見せなかったんです」
◆我慢の限界に達した時に現れた救世主
司書の注意すら無視して迷惑行為を続ける老人に、館内の空気はどんどん険悪になっていきました。集中を乱された中村さんも「さすがに我慢の限界だ。直接注意しよう」と立ち上がりかけたといいます。
その瞬間、入口の自動ドアが勢いよく開き、中年の男女二人組が荒々しい足取りで入ってきました。
「何事かと思ったら、その男女が一直線に老人の元へ向かって行って。有無を言わせず老人の腕をガシッと掴むと、そのまま外へ引っ張り出していったんです」
あまりの勢いに、老人も抵抗する間もなくそのまま連れ出されていきました。残された女性の方は、焦った様子で司書へ何度も頭を下げて平謝りしていたといいます。どうやらその男女は、老人の息子夫婦だったようです。
「あっという間の出来事で呆気に取られましたが、強制退去させてくれたおかげで一瞬で静けさが戻りましたね」
◆受付で明かされた「困った常連客」の正体
騒々しかった老人が連れ出されたことで、図書館には再びいつもの静かな時間が戻ってきました。中村さんも無事にその日の勉強予定を終えることができたそうです。
帰りがけ、借りたかった本を手にして受付カウンターへ向かった中村さんは、対応してくれた司書へ「さっきのおじいさん、大変でしたね」と気さくに声をかけてみました。
「そうしたら司書さんが苦笑いしながら『実はあのおじいちゃん、よく来るんですよ。前例があったので、ご家族の連絡先も把握していたんです』とおっしゃっていて」
実は、スタッフの間でも有名な「厄介者」だったそうです。今回も司書の判断で家族にSOSを出したそう。
「公共の場である以上、みんなが気持ちよく使えるルールを守るのが当然ですよね。家族に連行されていく姿を見て、自業自得だなと感じました」と中村さんは語ります。
やはり図書館では静かに過ごすもの。図書館法にもあるように、一般公衆の利用に供し、教養や調査研究、レクリエーションなどに役立てる施設という位置付けです。
図書館を「誰でも使える場所」にすることと、「誰か一人の迷惑行為によって他の人が利用できなくなることを防ぐ」ことは、決して矛盾しません。
むしろ、すべての利用者が安心して過ごせる環境を守ることこそ、公共施設をみんなで共有するための大切なルールなのではないでしょうか。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営