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生成AIを使う応募者が増える一方、採用する企業側でもAI活用が進んでいる。その1つが「AI面接」だ。
リクルートマネジメントソリューションズ(東京都港区)が、2026年に企業の新卒採用担当者を対象に実施した調査では、AI面接の導入率は17.6%だった。同社は「AI面接は導入の広がりが見られる一方で、現時点では選考プロセスへの本格的な組み込みには至っておらず、今後の活用の在り方については、評価への位置付けを含めて検討が進められていく段階にあると考えられる」とコメントした。
今回の記事では「AI面接」の実態と課題について考えていく。
●「AI面接」が担う3つの役割
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「AI面接」が担う役割は、大きく分けると3つに整理できる。
1. AIが面接を代行
1つ目は、あらかじめ設定した質問を応募者に提示し、録画した回答をAIが分析するものや、AI面接官がリアルタイムで回答を読み取り、追加質問を重ねる対話型だ。24時間いつでも面接を実施できるため、一次面接の工数削減や、面接機会の拡大に向いている。事前の質問設計やAIによる深掘りの質が、面接の質を左右する。
2. AIが面接官をサポートする
2つ目は面接は人間が実施し、AIは文字起こしや要約、評価項目ごとの整理、質問漏れのチェック、次の面接で確認する点の提示などのサポートを担う方法だ。記録や評価作業の負担を減らせる。特に、二次面接や最終面接など、人による対話を重視したい場面と相性が良い。
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3. AIが応募者を評価する
3つ目は、面接で得られた回答や行動特性などをAIが分析し、評価項目ごとにスコア化するものだ。企業はそのスコアを、次の選考に進めるかどうかの判断材料として利用する。評価基準を統一しやすい一方で、AIが何をもとに評価しているのか、その基準が実際の職務成果と関係しているのかを、丁寧に検証する必要がある。
●イトーヨーカ堂や大阪信用金庫が「AI面接」を導入
現在公表している日本企業の事例を見ると、優秀な人材を正確に見抜くためというよりも、採用実務のボトルネックを解消する目的でAI面接を導入するケースが目立つ。
イトーヨーカ堂では、面接の日程調整にかかる工数や、面接官による評価のばらつきを課題として、新卒採用の一次選考をAI面接に置き換えた。アバターのAI面接官との対話によって、選考する方法だ。AIによる面接内容の要約も活用し、その後の学生とのコミュニケーションに人が時間を使えるようにしている。
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大阪信用金庫も、新卒採用の一次面接にAI面接を導入している。日程調整なしで受験できるようにし、応募数を増やす狙いだ。面接官による評価のばらつきや、面接工数を減らす目的もある。AI面接で得た情報は、人間が実施する二次面接以降にも活用するとしている。
人材サービスを展開しているエン(東京都新宿区)では、AI面接を導入した採用で1人の候補者にかけていた時間で3〜4人ほど対応できるようになったという。大阪信用金庫の事例と同様に、AI面接で得た情報を、人間による面接での深掘りにも利用している。
このように、一次面接や日程調整、情報収集など「人がやると時間がかかる仕事」をAIに任せ、人はその後の工程に時間を使うケースが目立つ。
●AI面接の普及が進む海外、規制の動きも
海外の導入事例を見てみよう。スイスの飲料メーカーであるネスレ S.A.では、対話型AIを使い、応募者のスクリーニングや面接の日程調整を自動化している。導入前は採用チームが日程調整などに大量の時間を費やしていたという。
米国では、応募受付や基本条件の確認、面接予約など、採用プロセスの前半をAIで自動化する事例も見られる。「人間の面接官をAIに置き換える」だけでなく、応募から面接までの採用プロセスそのものを自動化している。
AI面接の普及に伴い、規制も進んでいる。EUが2024年8月に施行した包括的なAI規制法「EU AI Act」(欧州AI規則)では、採用や候補者評価に使う一定のAIを「ハイリスク」として分類。企業側にリスク管理や記録保存、人間が判断を監督できる仕組みなどを求めている。
米ニューヨーク市にもAI活用を規制する条例がある。採用プロセスや昇進者の選考において、AIなどが意思決定をサポートする「自動雇用決定ツール」を使う場合、性別や人種、民族などで選考結果に偏りが出ていないかを第三者が検証する「バイアス監査」と、応募者への事前通知が必要だ。AIを禁止するのではなく「偏りを確認し、人が責任を持って使う」方向でルール整備が進んでいる。
●AI導入で課題は本当に解決するのか
面接に限った話ではないが、AIを導入しただけで課題が解決するわけではない。
人事サービスなどを提供するTalentX(東京都新宿区)が、従業員500人以上の企業の人事担当者を対象に実施した調査では、採用活動でAIを利用している企業の53.3%が「導入後も工数が変わらない、または増えた」と回答した。「AIと人間の役割分担が明確になっていない」とした企業は67.9%だった。
AI面接だけを対象とした調査ではないものの、AIを導入するだけでは、業務の効率化につながらないことがうかがえる。
候補者側への影響にも注意が必要だ。2026年に発表された韓国の研究チームによる調査では、AIを含むテクノロジーを介した面接は、人間による対面面接と比べ、利便性などの機能面では高く評価された。一方、企業の魅力度や応募・入社の意向などは低い傾向が確認された。
●AI面接を導入する前にすべきこと
「面接官によって評価が違う」という課題がある場合、まずは質問や評価基準をそろえる必要がある。
前述したリクルートマネジメントソリューションズの調査によると、面接官の質問や評価観点を共通化する「構造化面接」を何らかの形で導入している企業は26.4%にとどまった。こうした企業がAI面接を導入しても、あいまいな評価基準をAIに実行させるだけになりかねない。
重要なのは、今ある採用課題がAI面接で解決できるのかを見極め、AIと人の役割を設計することだ。適切に使えば、AI面接は採用の生産性と選考の質を大きく高める武器になるだろう。
●著者プロフィール:村上 ゆかり
コラムニスト。1児の母。リクルートにて人材業界で法人営業、面接、面談フォロー実績数百件を経験。人事役員などと伴走しさまざまな人事課題に向き合う。広告業界にて5000人集客イベント企画&事務局経験、福祉業界では人事管理職として新卒及び中途採用を1人で設計から実務まで担当し年間約120人採用を達成。国会議員秘書約4年半を経験後、フリーで活動を始め、執筆のほか企業の人事採用コンサルタントなどを手掛ける。アンガーマネジメント講師。
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