約12万円の「PS5 Pro」 ゲーム体験は今後"高級化"していくのか?

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2024年09月26日 08:51  ITmedia ビジネスオンライン

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SIEが発表したPlayStation15 Pro。その価格設定も話題となった

 ソニー・インタラクティブエンターテインメント(SIE)が「PlayStation 5 Pro」(PS5 Pro)を9月11日に発表した。希望小売価格は11万9980円(税込)だ。


【画像】11万9980円の「PlayStation 5 Pro」 じっくり見る(3枚)


 性能に関して期待する声もある一方、約12万円という価格設定に消費者からは「高すぎるのでは?」という声も上がっている。


 ゲームハードへの要求スペックが高くなり、価格が上がってしまうのはある程度納得できる。そうすると、今後はゲーム体験そのものも“高級化”していってしまうのだろうか?


●PS5 Proの価格設定は妥当か?


 PS5 Proの価格設定に触れる上で、まず考慮すべきは現行のゲームハードに求められる性能である。4K解像度、60fps以上のフレームレート、レイトレーシングといった高度なグラフィック技術が普及したことにより、2010年代からハードウェアへの要求スペックは大きく高まった。


 その要求に応えるには高性能なGPUやCPU、そして大容量の高速ストレージが必要不可欠となった。こうしたゲームハードに必須の部品がそもそも高価であり、それらを組み合わせると、当然高価になっていく。


 一方、ゲーミングPCと比較した時、PS5 Proの価格設定は決して高すぎるとはいえない。PCとゲームハードとでは汎用性が大きく異なるため安易な比較はできないが、ゲーム性能に絞って比較した場合、同等の性能を持つゲーミングPCを12万円前後で組むことは、現環境では不可能に近い。よって、ゲームに限った話ならばPS5 Proは「コストパフォーマンスが高い」といえるだろう。


●ゲーム体験の高級化は避けられないのか?


 コストパフォーマンスが高いとはいえ、10万円を超えるゲームハードが多くの家庭に普及するとは考えにくい。では今後、他のエンターテインメントがたどったのと同じようにゲームも“高級化”し、娯楽の主流ではなくなっていくのだろうか? これを考察するために、特に大きな影響を及ぼすであろう2つの要素について考えてみたい。


グラフィック性能


 グラフィック性能は、PS5 Proの価格が上昇した最大の理由の一つだ。また、ゲームへの投資を惜しまないコア層ほど要求レベルが高い。


 ゲームが表現する世界観・雰囲気を体感するためにはより美しいグラフィックス、より複雑な演算が必要だ。そして、ゲームによる対戦・競技の成績を突き詰めるには、やはりより高いフレームレートや、高速かつ正確なレスポンスが必要となる。これらの要求に応えるには必然的に高性能なハードウェアが必要となる。


 一方、市場の大部分を占めるライト層全てが上記の性能を要求するわけではない。また、「ユーザー人口の多いゲーム=高スペックを要求する」とも限らない。一般の民家に収まるディスプレイサイズではフルHDと4Kの差異を感じられたとしても、4Kから8Kへの変化に劇的な差異を感じることは難しいとされる。


 つまり、解像度という観点では4Kが家庭用ゲームハードにおいて実質頭打ちといえる。画像処理コストに大きな影響を及ぼすこの要素が固定されれば、今後の技術進歩で価格が下がることも期待できる。


マルチプラットフォームタイトルの増加・普及


 昨今のゲームはマルチプラットフォーム(同じゲームを異なるハードウェアで遊べるようにすること)が主流となりつつある。


 2010年代以降増加したのが、「PlayStationシリーズ+PC・スマートフォン」という組み合わせだ。特に米国・中国系ゲームはグローバル展開を前提としており、国によって普及度合いに差があるハードウェアに依存しないためにもこの手法を取っている。


 そのため、ユーザーは同じタイトルのゲームを個々人が調達可能なスペックのハードウェアで楽しめるようになった。


 これにより、持っているゲーム機で遊べるソフトの中から選ぶ環境から、ゲームで得たい体験によってゲーム機を選ぶようになりつつある。これはどういうことかというと、例えばスマートフォンを入口に目的のゲームを楽しむようになり、スマートフォンで満足する層はそのままに、もっと高品質なゲーム体験を楽しみたい層はPlayStationシリーズやPCへ移行するというわけだ。


●今後のゲーム体験はどうなるのか?


 ゲーム体験の高級化が進むという見方は間違いではないが正解でもない。高級なゲーム体験はあくまで選択肢の一つとして加わるのであって、個々人がより適した選択をできるようになるということだ。


 ゲームのライト層は、持っているスマートフォンや家庭要ゲーム機を選択し、より高レベルのゲーム体験を求めるコア層がPS5 ProやゲーミングPCのような高価格帯ハードを選択するようになる。


 既に日本でも30万円以上のゲーミングPCを選択する「より高レベルの体験を求める層」が増えつつある。ここにゲームに特化した場合のコストパフォーマンスが高いPS5 Proが加わることで、コア層の選択肢が増え、高レベルの体験を得られやすくなる。


 ゲームの「入口」機能を担い、ゲーム人口拡大に多大な影響を及ぼしてきた任天堂も、今年度中に次世代機を発表する予定としている。ゲームは娯楽として一般化した一方、ライト層からコア層までニーズは多様化している。ゲーム機メーカーはそんな多様化した消費者に適切な選択肢を提供できるかが、成長のカギを握るのではないだろうか。


●著者プロフィール:滑 健作(なめら・けんさく)


 株式会社野村総合研究所にて情報通信産業・サービス産業・コンテンツ産業を対象とした事業戦略・マーケティング戦略立案および実行支援に従事。


 またプロスポーツ・漫画・アニメ・ゲーム・映画など各種エンタテイメント産業に関する講演実績を持つ。



このニュースに関するつぶやき

  • 「高級化」路線は何れ破綻する。リアルに近い高画質だろうと中身がスカスカだと意味がないのばかりじゃん、今のPSなんて。 現に開発費や開発期間を多く取っても2週間で終わったゲームをつい最近出してしまってるんだし。
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