スキンヘッドにタイトな柄物タートルネック。一度見れば忘れない特異なルックスとその口調。謎のタレント・ひょうろくがブレイク中だ。『さらば青春の光』のYouTubeに出演、そこから火がつき、『水曜日のダウンタウン』、さらに大手メーカーのCMに出演するほどに。『さらば』への思い、現在の心境と未来は―。
さらばのYouTubeに出演する前の年収は「年収は10何万」
「あんまりシンプル(な格好)にしちゃうと、ホントおじいちゃんみたいになっちゃうんで……。明るくガヤガヤしたやつを着てるかもしれないです……」
語尾が消え入りそうな静かな口調で話す独特な風貌の男。ひょうろく(37)。『水曜日のダウンタウン』(TBS系)のドッキリが複数回、話題を呼び、また’24年は4社のCMに出演するなど目下ブレイク中のタレント(?)だ。
ひょうろくが多くの人に“発見”されたのは、お笑いコンビ『さらば青春の光』のYouTubeに出演したことがきっかけだが、これには前段がある。
YouTubeという“オン”の場の前に、ひょうろくはそれまで面識のなかったさらばの事務所を突然訪問。もちろんそれはドッキリでも企画でもない“オフ”の場……。
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「もともとやっていたコンビが解散になってしまいそうだなっていうので、どうせダメだったらもう何かやれること全部やっとこうと思って、さらばさんにちょっとネタ見てもらえませんかって、行っちゃえって思って」
芸人が他事務所の先輩を唐突に訪ねるとはなかなか聞かない話。ひょうろくは社会人として当然の応対を受ける。
「普通に“そういうことされても困ります”“大人がすることではないですよ”って言われて、確かにそうですねと」
突然の訪問当時、さらばの2人は事務所におらず、彼らのマネージャーが応対。その後、’20年4月にさらばがYouTubeにて、“制限時間内に事務所に来れたら1万円”という企画を行った際、ひょうろくが正式(?)に事務所を訪れ、念願の共演を果たす。
その後、さらばのYouTubeにたびたび呼ばれ、出るたびに爪痕を残し、準レギュラーといっていい存在に。ただ当の本人は……。
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「僕が出ると再生回数が回ってないのになんで呼んでいただけてるんだろう、というか。今でこそ……ですが、初期は。でも、お笑い芸人としての活動はほとんどしてなかったので、“今日が最後”“悔いなくやろう”と思っていました。これは他のお仕事も同じで、次も呼ばれる確証なんてないので、毎回そう思って行っています。さらばさんのYouTubeのドッキリは急に始まってたりするので、それすらもできないですけど(笑)」
当時はバイトに追われる日々。「月15万円くらい稼げるようになりたいな。バイトしないでいけるようになりたいなってボヤ〜ッと」と、考えて飛び込んだお笑い界だったが、なかなか達成できずにいた。
「基本的に(芸人としての月収は)1万円とか。前に“当時は年収にすると120万〜130万円”みたいに答えてたんですけど、冷静に考えると全然で、年収は10何万だったと思います」
脱サラをして’12年に飛び込んだお笑いの世界。「バイトしないで〜」が叶ったのはつい最近のこと。バイト生活のなか、さらばのYouTubeへの出演を重ねることで認知度が高まっていった。
「定期的に出させてくださって、本当になんか徐々に徐々に……。なんかバンって(注目された)感じじゃなく、本当に、なん……なんだろうな……。長い時間かけて育ててもらったってわけじゃないですけど、育ててもらったっていうのもおこがましいですけど、本当に大事にしていただいて」
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ブレイク芸人が「いまいちばん欲しいもの」
さらばとの関係はYouTube上だけではない。彼らの事務所『ザ・森東』はタレントはさらばの2人、そしてYouTubeにもたびたび出演するマネージャー(ヤマネヒロマサ氏)の3人体制。
所属事務所はなくフリーで、自身の窓口は自身で務めていたひょうろくの活動を無償で手助けしてくれた。
「お仕事をヤマネさんから僕個人に振っていただいたりとかしてて。紹介していただいたんで“お金ちょっと抜いてくれませんか”っていうのを言ったら、“そんな小銭いらんわ”って僕に気を使わせないように言ってくださって。(仕事のオファーが増えて)これってどうしたらいいんだろうってなったときも“こっちに投げなさい、連絡先教えていいから”ってやってくださって……」
どういったふうに、どのような内容の仕事をどういった形で受ければいいかわからなかったため、その都度さらばマネージャーのヤマネ氏に仲介してもらっていた。
「僕も何か相談したいけど、さっきも相談しちゃったなとかっていうのが続いていたので、“何とかなんかうまいこと取ってくれませんかね”っていうのをずっとお願いしていて」
さらばのYouTubeでも語られているが、現在はひょうろくがザ・森東側に手数料的な支払いをするように。
「それでも本当にもう微々たるもので、“もっっっと取ってください”と言ってはいるんですけどもなんかそれも、いらん……と。本当に形だけ取ってくださってます」
「もっと(取ってください)」の声にこの日いちばんの力が入ったひょうろく。そんなさらばへの思いは─。
「大恩人というか、もう本当に半分というか9割死にかけてたところ、チャンスを、お仕事をいただける状態にしていただいたので、感謝しきれないといいますか……」
引っ張りだこと言っていい現状だが、当人の自己評価は現在も低い。
「さらばさんのお2人もそうですし、ヤマネさんも『水曜日のダウンタウン』さんとか、周りの方が面白くしてくださってるのでしかないというか……。1人きりになった瞬間にたぶん何もできないというか。本当はこういうインタビューとかでも、何か気の利いた冗談を本当は言いたいんですけど何も言えないので、それが結構苦しい、苦しいですね……今の時間(苦笑)」
『水ダウ』などでは1人きりでも、かなりの存在感と笑いを生んでいたが……。あまり“欲”が見えないひょうろくに最後に今いちばん欲しいものを聞いた。
「髪の毛とかですかね。髪が薄くてまばらになっちゃってるので……」
スキンヘッドあってのひょうろくな気もするが、もし髪の毛がもらえるなら、と聞くと、この日いちばんの即答、この日初めて「!」を使う声色で次のように答えた。
「もらいます……!」