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首都圏を中心に展開するスーパーマーケットのオーケー(横浜市)が、関西に初進出した。11月26日に開店した「オーケー高井田店」(大阪府東大阪市)は、地下1階に約2500平方メートルの売り場を構える大型店だ。3年前の関西スーパー買収断念から一転、自前での出店を果たした。
2025年1月には西宮店(兵庫県西宮市)をオープンし、関西での店舗網拡大を目指す。今後の戦略と展望について、二宮涼太郎社長に話を聞いた。
●3年越しの関西進出
首都圏を中心に展開してきた同社にとって、高井田店は初の「関西エリア」出店で、157店舗目にあたる。2021年に関西スーパーの買収に失敗したオーケーは戦略を転換し、自前での出店を選択。関西1号店となる物件の選定には二宮社長も関わり、入札前に現地へ足を運んだ。
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人口密度や周辺の商業施設の規模など、出店基準を満たす物件の中から、オーケーの店舗が建つイメージがわくと判断。地下1階に約2500平方メートルの売り場を設け、192台収容可能な駐車場を備えた大型店に決めた。
高井田店は、1階に100円ショップのダイソー、地下1階にオーケーの売り場、2〜4階に駐車場を配置した構造となっている。売り場を地下に設けたことについて、二宮社長は「1号店は大型店にしたいと考えていた。広大な売り場スペースを確保するには、地下が最適だと判断した」と説明する。その分、コストはかかるものの、限られた敷地を最大限に活用する設計とした。
●売り上げ好調の背景
開店以来、高井田店は同社の予想を上回る集客を記録している。開店前の会員カード発行には、3000人を超える申し込みがあった。通常、同社は開店後に来店客へ案内を行うが、今回は混雑緩和を考慮し事前受付を実施した。「オーケーが出店していないエリアで、どういうスーパーなのか分からないにもかかわらず、発行手数料(200円)を支払って事前につくっていただけた」と二宮社長は手応えを語る。
開店当日は雨天だったが、約300人の行列ができ、予定より15分早い午前8時45分の開店となった。以降も広域から多くの客が訪れ、駐車場の稼働率は当初の想定を超える高水準を維持しているという。
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売り場に目を向けると、PB商品に力を入れていることがうかがえる。2023年度に年間640万食を販売した定番のロースカツ重や、手作りピザなどを扱っている。
また、関西市場を意識した商品開発にも取り組んだ。お好み焼きなどの「粉もん」総菜は、店内で鉄板を使用して調理する商品を新たに開発。競合他社の商品と食べ比べながら、お得感のある価格設定とした。和総菜についても、関東との味つけの違いを踏まえ、取引先と協議し、関西の味覚に合わせた味付けに変更するなど、地域での競争力強化を目指している。
競合が激しい関西のスーパー市場でも、オーケーは「高品質・Everyday Low Price」を軸とした戦略を展開していく。「商品を厳選し、競合の定番価格や特売価格を調査して値付けを行う。NB商品については、競合の特売価格が当社の価格を下回る場合は競合対抗値下げを実施する」(二宮社長)
●まずは大阪・兵庫に的を絞る
物流面では、高井田店のオープンに向けて商品群や温度帯ごとに取引先の物流網を整備。まずは関西エリアで店舗数を増やすことを優先し、出店の進ちょくに応じて物流体制の見直しを検討するとしている。
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人材面では、2024年から関西で正社員の中途採用を開始し、採用した人材は、春頃から関東の店舗で研修を実施。高井田店のオープンとともに関西に戻すという育成プログラムを展開した。パートタイマーについても、多くの応募があるという。
2025年1月には兵庫県の西宮に2号店をオープンする。今後は、大阪と兵庫を中心に出店するドミナント戦略を展開し、関西圏での店舗網を拡大していく考えだ。京都や滋賀など他のエリアについても、条件の合う物件があれば検討していく。
また、高井田店の5階には事務所を設置し、オーケーの大阪における本社拠点として位置付け、関西での店舗展開を支える体制を整えた。
店舗の出店形態は、高井田店のように土地を取得して出店する場合と、商業施設内にテナントとして入る場合の両方を検討している。「スーパーマーケットとしては幅広い出店形態を持っている。関西においても、あらゆる形で店舗を増やしていきたい」(二宮社長)
●創業者が逝去、関西への進出
オーケーにとって2024年は、大きな転換点となった。4月に創業者の飯田勧氏が逝去し、創業者なき後の経営という新たな局面に入った。そうした中での関西進出は、同社の次なる一歩となっている。「異なるエリアに出店し、食文化の違いも実感した。関東市場で培ってきたことを関西で客観的に評価いただき、逆に関東でも生かせる要素も発見できた」(二宮社長)
これまで関東での出店計画は年間2ケタとしてきたが、上方修正する構えだ。物件についても、出店エリアを増やせる手応えを感じているという。ただし、店舗数の拡大と人材育成のバランスを重視し、持続的な成長に向け、採用・育成面での体制も整えていく。
物価高騰が続く中、小売各社は価格転嫁を進めている。営業経費の上昇も重なっていることから、業界の今後は「企業間の体力差が一層鮮明になる」と二宮社長は指摘する。
今後の課題は、高井田店やこれからオープンする店舗が地域に支持されるかどうかだ。新たな市場で、どこまで存在感を示せるだろうか。
(カワブチカズキ)
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