中学生殺傷　容疑者の車が直前に店周辺を行き来　襲撃対象物色か

　北九州市小倉南区のファストフード店で中学3年の男女2人が殺傷された事件で、男子生徒（15）に対する殺人未遂容疑で逮捕された平原（ひらばる）政徳容疑者（43）所有の黒のワンボックス車が事件直前、現場店舗近くを行き来する不審な動きをしていたことが捜査関係者への取材で明らかになった。その後、車は生徒2人の入店とほぼ同時に店舗駐車場に入ったことも判明。福岡県警は襲撃対象を物色していた可能性もあるとみて調べている。

　また、県警が19日に平原容疑者の自宅などを家宅捜索した際、現場から逃げた人物が履いていたものに似た黄色いサンダルや衣服を押収していたことも捜査関係者への取材で判明した。

　事件は14日午後8時25分ごろ、小倉南区徳力（とくりき）1の「マクドナルド322徳力店」で起きた。捜査関係者によると、直前に黒のワンボックス車が現場店舗近くを行き来する様子が防犯カメラに映っていた。学習塾の帰りだった中学生2人が徒歩で店舗を訪れて入店したのは14日午後8時10分ごろで、車もほぼ同時刻に店舗南側の駐車場に入ったという。

　平原容疑者は駐車後、しばらく車内にとどまっていたが、先に入店した2人が午後8時25分ごろにレジの列に並ぶと、ほぼ同じタイミングで降車し、店内に向かう様子も防犯カメラに映っていた。

　入店した平原容疑者は列の前方にいた4人の横を素通りし、最後尾に並ぶ2人の元へ一直線に向かったという。2人のうち、市立中3年の中島咲彩（さあや）さん（15）は腹を刺され、失血死した。同級生の男子生徒は腰のあたりを刺され、致命傷になりかねない深い傷を負った。

　平原容疑者が店舗内にいたのは十数秒だったとみられ、事件直後に車に戻り、現場を離れた。県警は防犯カメラ映像をつなぐ「リレー捜査」で追跡し、車に乗っていた人物が平原容疑者だと特定したという。

　県警は19日に平原容疑者を男子生徒に対する殺人未遂容疑で逮捕。平原容疑者は「確かにその行為をしました」と容疑を認めているという。

　中学生2人は平原容疑者と面識がなかったとみられ、事前のトラブルなども確認されていない。県警は中学生を狙った動機の解明を進めている。【栗栖由喜、井土映美】