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茨城県の鹿島港沖で巻き網漁船の転覆事故が発生した当時、現場近くで操業し、第8大浜丸の乗組員を千葉県の銚子港まで搬送した第11不動丸の漁労長、大熊和也さん(54)が6日午後、北茨城市の大津港に帰還し取材に応じた。大浜丸の乗組員2人が死亡し、3人はまだ見つかっていない。大熊さんは転覆から救助までの緊迫した状況を明かし、仲間の安否を気遣った。
不動丸は5日正午ごろ、大浜丸などとともに出港した。今年最初の漁だったため、港を出たところでお神酒をまいてお清めしてから鹿島沖の漁場へ向かった。大浜丸とは無線などを使い「こっちで魚群の反応が出ているぞ」などとやり取りを重ねていた。
現場は波も風も穏やかだった。夜から漁が始まりあわただしくしていると、6日午前2時ごろ無線が響いた。「船が沈みかけている。助けてほしい」。不動丸も網揚げの作業中だったため、20分くらいたってから救助へ向かった。
現場に着いた時点で、すでに転覆した船の姿は見えなかった。救助された乗組員のうち特に状態の悪い3人を引き上げ、全速力で銚子港に向かった。「1人は意識がもうろうとし、燃料を飲んだせいか気持ち悪いと言って震えていた。あとの2人は泡を吹いて、体も冷えて……」。救急車の手配を依頼しながら、心臓マッサージや自動体外式除細動器(AED)を掛けたが、2人の意識は戻らなかったという。
大熊さんによると、行方不明の3人のうち1人は大浜丸の40代の漁労長だという。漁労長は魚が網に入りすぎた場合、船の重しとなるバラストを調整したり、網を降ろして魚を逃がしたりする役割があり、「ブリッジでの作業中に沈んだら逃げられない。今も船内にいるのでは」と心配する。時折涙を浮かべ「我々の仕事は、海に落ちた時点で命の覚悟はしている。しかし、若いしまだこれからの人。家族のためにも見つけ出してほしい」と冷たい海を見つめた。【田内隆弘】
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