劇映画『孤独のグルメ』の撮影秘話「ロケをしたお店は3軒すべて実在、俳優じゃなくご本人に出演をお願いしていた」

21

2025年01月09日 16:01  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

久住昌之、松重豊
『孤独のグルメ』の原作者・久住昌之氏とドラマ・劇映画で主演を務める松重豊氏のスペシャル対談。劇中で訪れた名店をふたりが語り尽くす!
◆人生後半を楽しむお店の探し方「ふたりのグルメ」

──劇映画が1月10日に公開、そして『孤独のグルメ 巡礼ガイド完全版』も発刊されるということで、この本にはドラマのシーズン1から10まで登場したお店を抜粋して掲載しています。掲載されるお店の思い出などをお聞かせいただければと思います。

松重豊(以下、松重):全部覚えてますよ。(掲載店のリストを見ながら)お店の様子が思い出されますね。

久住昌之(以下、久住):いきなり「つり堀 武蔵野園」(永福)っていうのは意表を突いたチョイスですね。

松重:ここでは親子丼と焼きうどんなどを食べましたね。食後に「とんだ炭水化物祭りを開いてしまった」とつぶやきますが、ここから「炭水化物祭り」が、よくネットなどで使われている気がします。このころ、僕は40代だったから食べられたけど、61歳の今、この組み合わせを食べろって言われたら……。

久住:ボクも当時「親子丼のあとに焼きうどんは食べすぎだろ」ってスタッフに言いました(笑)。ボクは50代前半でしたが。まだ、ドラマも試行錯誤中でしたね。

松重:初期の『孤独のグルメ』といえば、「つるや」(川崎)ですよね。一人焼き肉の回で。うまかったなぁ。

久住:「キャベツ山(ざん)」の(笑)。焼き肉でいうと「宝来軒」(群馬県藤岡市)も面白かったですね。客がいないカウンターに一人用のコンロがズラリと並んでる絵は、シュールで面白い。肉だけじゃなくてお新香もおいしい。店名が中華屋みたいなのもいいんですよね。焼き肉となるとスタッフも「これは!」という店を選んできます。年末スペシャルでも焼き肉は入ってきますしね。

◆巡礼者に貴重なアドバイス、クーラーボックスは必須?

松重:あとは「焼肉ふじ」(静岡県伊東市)も。ここオモテにお肉屋さんがあるんですよ。

久住:肉屋から見ると、裏にちょっと入りにくい焼き肉店がある(笑)。店主が一緒で。

松重:僕、撮影終わりに、このお肉屋さんで肉を買って帰りましたもん。東京からだと遠いから、クーラーボックスを持っていかないと肉が傷むんですよ。だから、巡礼するときはクーラーボックスを持参したほうがいいです。

久住:まさに巡礼へのガイドとして大事な情報ですね(笑)。肉というと「第一亭」(横浜)もパンチがあったなぁ。チート(豚胃袋)とニンニクを使ったパタン。すっかり全国区で有名になりました。

松重:パタンはおいしかったけど、ニンニクが3日くらい残りました。僕はドラマロケの翌日、大河ドラマ『八重の桜』で死ぬシーンの撮影があったんですよ。ニンニク臭いのに、綾瀬はるかちゃんとかが僕に顔を近づけて泣くわけです。ニンニクのニオイを嗅がせたら、演技が止まっちゃうなと思って息止めてました。なので、パタンを食べるときは翌日からの予定を確認したほうがいい(笑)。

◆ふたりが偶然出会う店「波長が合ってきた」

──松重さんも久住さんも、放送後の混雑を避けるために、撮影後すぐにお店に伺うこともあると聞きました。偶然出会ったことはありますか。

松重:ありましたね。家族で行ったら、あとから久住さんが来たんですよ。

久住:あー! あれは最高でしたね。お互い「なんでいるの?」って(笑)。

松重:リピートしたお店で久住さんの話を聞くこともありますよ。「朝まで飲んだらしい」みたいな(笑)。

久住:どこですか?

松重:「居酒屋 舞子」(鳥取)。

久住:あー、朝までは飲んでないけど、ベロベロになった。

松重:あそこはうまいですよね。かに面がやばいですよ。これ原価割れしてますから。かに面作るためにおばちゃんを2人雇ってるらしいんです。しかし、最近すごく店探しの波長が久住さんと合うんですよ。店探しのセンサーが、『孤独のグルメ』的になってきた。

久住:10年以上やって、何軒のお店に行ったんだろう。

松重:お店選びの探知機を久住さんから植えつけられていますから(笑)。今回の映画の舞台であるパリでも韓国でも五島列島でも「ここだ!」ってピンと来るんですよ。

久住:映画で登場するお店は、どこも実によかったです。

松重:ロケをしたお店は3軒あって、すべて実在するお店なんですが、そこもスタッフと一緒に見つけました。佇まいやメニューはもちろん、お店の方込みでいいんですよ。なので、店員さんをエキストラさんや俳優さんにやってほしくなくて、全部ご本人に出演をお願いしたんです。

久住:ほんとに!? みんな最高でしたよ!

松重:皆さん演技が想像以上に素晴らしかった。パリのマダムなんて、どこの俳優だよって感じで。カトリーヌ・ドヌーヴかと思いました(笑)。

久住:知る人ぞ知る実力派人気女優さんかと思った。

松重:五島の食堂のおばちゃんも、最初は「うち、そういうのイヤだよ。芝居なんてやったことないし」って言ってたけど、説明台詞なんて立て板に水で話しますから。あまりにいい演技なので2カット撮りましたからね。

久住:韓国のお店もよかったですね。サバがうまそうだった。映画を観たら、みんな行くでしょうね。

松重:読者の皆さん、映画で登場したお店を巡礼すると、ご本人たちと会えますから、そこも楽しみにしてください。

【主演・松重豊】
1963年、福岡県出身。蜷川幸雄主宰の蜷川スタジオを経て、映画、ドラマ、舞台で幅広く活躍。連続テレビドラマの主演は『孤独のグルメ』が初。著書に『空洞のなかみ』(毎日新聞出版)、『たべるノヲト。』(マガジンハウス)がある

【原作者・久住昌之】
1958年、東京都出身。1981年、泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として漫画誌『ガロ』デビュー。『孤独のグルメ』のほかに『花のズボラ飯』(秋田書店)など著書多数。音楽家としても知られ、ドラマシリーズでは劇伴を担当

取材・文/沼澤典史(清談社) 撮影/ヤナガワゴーッ! ヘアメイク/高橋郁美 スタイリング/増井芳江

【沼澤典史(清談社)】
清談社 ライター/編集 編集担当作→稲田豊史さん『こわされた夫婦』、生駒明さん『フーゾクの現代史』、諸富祥彦さん、島田友和さん、青木美帆さん『1on1コミュニケーション入門』、しみけんさん『モテる男39の法則』。X(旧Twitter):@numazawa_n

このニュースに関するつぶやき

  • あー、もう明日から公開か����� 油断してると未消化の映画がたくさん溜まってしまっているわ�Dz�
    • イイネ!1
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(10件)

ランキングゲーム・アニメ

前日のランキングへ

ニュース設定