限定公開( 5 )
一時期、有名人の写真や名前を無断で利用したFacebook広告が大量に出回り、大きな問題となりました。特に、実在する投資家や起業家たちが標的となり、悪用された本人たちが声を上げ、Facebookを運営するMeta社や社会に対して強く訴えた結果、こうした広告の数は徐々に減少。
しかし、この手口が完全に消えたわけではありません。今では「実在する投資家や起業家たち」ではなく、「芸能人」を無断で利用するものにシフトしています。
最近、筆者がよく目にするのは、タレントのタモリさんを使った広告です。見出しには「起訴された」というショッキングな文言が使われており、思わずクリックしたくなるような内容です。
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この広告をクリックするとどうなるのか、その先を見てきました。
※詐欺広告や詐欺サイトに使用されていた人物の写真やドメイン情報には、編集部にてぼかし処理を施しています。
Facebookで見つけた、「タモリさんの起訴が確定!」「タモリさんの悲惨な末路!今日のニュースは日本中を震撼させました!」と書かれた広告。あまりに衝撃的な見出しに、思わずその先を確認したくなる内容です。
一方、広告のコメント欄では「これは詐欺だ!」と警告する投稿が多数寄せられており、ユーザー同士で警戒を呼びかける声が広がっていました。
その警告を目にしつつも、今回は調査のため先に進みます。広告をクリックすると、ポータルサイトのニュース記事が表れました。勿論これは「偽のポータルサイト」。今回は、Yahoo!ニュースを模した偽サイトが表示されましたが、最初に誘導される偽サイトには、gooニュースや読売新聞などを模倣したものもあります。
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ここで気になったのが、記事のタイトル。広告では「起訴」となっていたところが、「提訴」になっていました。「起訴」と「提訴」は意味が異なるため、この時点で内容が不正確であることがわかります。
記事の内容によれば、タモリさんが「徹子の部屋」で「ある儲け話」に関する発言をし、日本銀行がこれに怒りタモリさんを提訴したというもの。
日本銀行を怒らせたほどの「ある儲け話」。一体なんだろう?と読み進めると、特定の「プラットフォーム」を利用して投資を行うと利益が急増する、と書かれていました。また、プラットフォームの使用料は「3万9750円」と、たどたどしい日本語で書かれています。
加えて、実際に利益が出たとされる証拠として、銀行の取引記録も掲載。
そして記事の最後で、プラットフォームへの登録フォームが出現。おそらくその先で、投資取引を行うようですが、結果は見え見えですので、皆様はこの時点でストップしていただくことをお勧めします。
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筆者の場合は、調査が目的なので、このフォームにあえて情報を入力して、先に進んでみました。
フォーム入力後、すぐにメールが届きました。問題のプラットフォームへのリンクも記載されています。それをクリックすると、投資ビジネスを装ったサイトに辿り着きました。
このプラットフォームは、AIを活用した金融取引プラットフォームとされており、市場動向を分析して取引を改善する情報を提供してくれる、というのが建前。
これもまた以前からある詐欺の手口と全く同じ。筆者は数十件ほど同様の手口を調査してきましたが、今回のケースでは「個人情報」を入力させて個人情報を盗みとり、システム利用料の「3万9750円」を支払わせるのが最初の目的(支払いにカード情報を入力したら、カード情報も盗まれます)。
加えて、しばらくすると海外や050番号から頻繁に電話がかかってくるようになります。電話の内容は大きく2パターンあります。1つは投資へのしつこい勧誘。複数の業者からかかってくるようになります。そしてもう1つは「あなたの個人情報が漏れているので情報を削除するために●万円を支払ったら消してあげるよ」というものです。
これらの電話は非常に厄介であるため、決して話を聞いてはいけません。不審な電話がかかってきたら、とにかく即時に切ること。詐欺師は全ての人を狙っているわけではありません。そもそも今回の手口も、SNS慣れしている人であれば広告の時点で詐欺だと気づきます。クリックしてサイトに行ったとしても変な日本語に違和感をもつ人が多いことでしょう。
詐欺師が狙うのはそれら「違和感に気づかない人たち」。だまされやすい人、いいなりになりやすい人を探しているのです。もし電話までかかってくるようになったら、個人情報が詐欺師界隈で出回っている可能性が濃厚。警察の相談ダイヤル「#9110」にかけてまずは今後の対応について相談してみてください。
ちなみにタモリさんを利用したFacebook広告は他にも存在します。例えば、タモリさんを擁護するファンが集まったという記事がありますが、これも最終的には投資関係のプラットフォームへ誘導。
タモリさん以外にも、小説家の村上春樹さんやスタジオジブリの宮崎駿監督などの名前や写真も利用されています。これは非常に混乱を招く状況ですが、この種の広告は消えては表れを繰り返しています。
今後も「ワンクリック詐欺」や「サポート詐欺」などの新しい手口が登場することでしょう。我々はこれらの詐欺に対して十分な注意を払い、しっかりと対策をとる必要があります。
(たまちゃん)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By たまちゃん | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025011403.html
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