吉本興業グループの株式会社FANYは21日、「お笑い翻訳AIサービス」のα版を開発したと発表した。
【画像】チョコプラのコントを英語翻訳のイメージ
エンターテインメントコンテンツの海外展開を促進する取り組みの一環として、株式会社ブレインパッドの生成AI・データサイエンスの活用技術協力のもと、 Googleの最も高性能で汎用的なモデルGeminiを活用した「お笑い翻訳AIサービス」のα版を開発した。
同サービスは、漫才やコントなどお笑い特有の言い回しや表現をAIに学習させた「お笑い特化型」の字幕生成システム。従来の機械翻訳では、会話の文脈理解や、お笑い特有の「フリ・オチ」や間(ま)、関西弁、独特な言い回しの翻訳が難しかった。
例えば、関西弁で母親を指す「オカン」という表現は、従来の音声認識では同音異義語の「悪寒」と認識されてしまう。しかし、同サービスでは、前後の文脈を構造的に理解するだけでなく、関西弁や造語といった表現にも対応。これにより、「オカン」を正しく「お母さん」と翻訳することが可能になったという。
α版では、日本語から英語への翻訳からスタートし、次に中国語、韓国語など多言語の翻訳精度も向上させていくとする。「今後は、タレントのYouTubeなど映像配信向けの字幕や、吉本興業のインバウンド向け公演等での実証実験を重ね、将来的にライブでのリアルタイム翻訳の実現に向けて、開発を進めて参ります」とした。
YouTubeで配信中の、チョコレートプラネットのコント「業者」と、レインボーのコント「史上最強に態度の悪い店員」の動画で、同サービスを使用。「設定>字幕>英語」を選択すると、英語で翻訳される。
サービスの提供は2025年中を予定。対応言語や出力形式の拡大、専門用語辞書の登録や動画情報の事前入力による翻訳精度向上など、よりユーザーにとって望ましい翻訳を実現するための機能開発を実施する。
■「お笑い翻訳AIサービス」監修のチャド・マレーンのコメント
次元が異なる字幕サービスの誕生、バリエモいです!
日本のお笑いは「人の “想像力” と “バグってる度合い” を悦(よろこ)ぶこと」であり、人間愛に満ちあふれています。さりげない面白みを散りばめ、最後に一番ウケる一言を最適な間で言う。それら全てを多言語化して字幕で再現する、巨大すぎる「言葉の壁」を破ってくれるのが、「お笑い翻訳AIサービス」です。従来の自動生成字幕には見られなかった“表記”にこだわった仕様になっています。
芸人として、日本のお笑いの素晴らしさが世界中の人に伝わるのはうれしく、また翻訳者として、このサービスは「お笑い」以外の他ジャンルのコンテンツにも適応されるオールマイティーなものになると踏んでいます。