給料を上げて大丈夫? 若手社員を中心に“賃上げの波”、一方で世代間に“格差”も…不遇すぎる“氷河期世代”【Nスタ解説】

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2025年01月22日 20:06  TBS NEWS DIG

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きょうから春闘が事実上スタートしました。大企業だけでなく中小企業でも賃上げを行うところが増えていますが、若い世代の給料が上がっているという「賃上げの世代間ギャップ」について詳しく見ていきます。

【写真を見る】受験から退職まで不遇すぎる“氷河期世代”

■給料月額9万円アップも 2025年も続く賃上げムード

上村彩子キャスター:
各企業の賃上げの状況です。

【大手 賃上げを続々と発表】
<大和ハウス工業>
・正社員 月額9万2945円UP
・新入社員 初任給35万円(10万円UP)

<明治安田生命>
・国内社員(約4万7000人)平均5%UP
・一部の若手社員 平均8%以上UP

賃上げのムードは高まっているようです。

「みずほリサーチ&テクノロジーズ」チーフ日本経済エコノミストの酒井才介さんは「今は業績に関係なく人材確保のために賃金をUPしている状況」だといいます。

経済評論家 加谷珪一さん:
今は賃金が上がらないので、その結果、消費が増えないという現実があるので賃上げ自体は喜ばしいことだと思います。

一方で企業はそれで大丈夫なのかといった疑問はありますが、少なくとも賃上げをすれば企業は積極的に設備投資をして稼ごうとする力が働きますので、業績はついてくるとみられます。ただ世代間で(賃金の)損得はあるかもしれません。

ホラン千秋キャスター:
景気のいい話や大胆な賃上げと言った内容はクローズアップされますが、企業によってはそうはいかないというところもあると思います。

オンライン直売所「食べチョク」代表 秋元里奈さん:
経営をしている身からすると肌で感じるのはやはり人材不足です。人が集まらないので賃上げをせざるを得ないというところですね。

大企業のように体力があればいいのですが、中小企業はどこまで(人件費に)コストをかけられるのか。経営者としてすごく難しい判断だと感じます。

井上貴博キャスター:
大企業が少しずつ賃上げしていくことは、とても良いサイクルですが、中小企業との格差がどんどん広がってしまいます。政府は中小企業が人手不足倒産になった場合、支援をする方針のようですが具体的に何ができるのでしょうか。

経済評論家 加谷珪一さん:
中小企業の多くは大企業の下請け的な仕事についているため、大手企業が買いたたいてしまうと中小企業は儲からない。石破政権はそこを非常に重要視していて、買いたたきを防ぐような法整備を次の通常国会で出す予定になっています。

加えてデジタル投資もできるような支援をしていくことで、中小企業も賃上げの原資を作れるような流れになっています。

■賃金アップの世代間ギャップ 不遇すぎる“氷河期世代”

上村キャスター:
コロナ前の2019年と2024年の給料のアップ率を計算しました。

【賃金UP 世代間に“格差”】
<20代 賃上げ>
20〜24歳 11,2%
25〜29歳 10.2%

<30代 賃上げ>
30〜34歳 8.1%
35〜39歳 8.9%

<40代 賃上げ>
40〜44歳 6.5%
45〜49歳 5.2%

<50代 賃上げ>
50〜54歳 ー3.1%
55〜59歳 5.3%

(厚労省「賃金構造基本統計調査」を基に算出 / 2024年 賃上げ率(2019年比)/2024年は有効回答率を考慮して推計)

他の世代は賃上げとなっていますが、50代は前半(50〜54歳)は ー3.1%です。問題は就職氷河期世代(1990年〜2000年代に就職活動)が“賃金上がらない世代に”続々と突入していくということです。

【不遇すぎる…“就職氷河期世代”】
<不遇1>学生時代は人口が多く 入試の競争率高
<不遇2>20代は不景気で就職困難 非正規も増加
<不遇3>30代も不景気が続き給料は上がらず
<不遇4>40代は年功序列の崩壊が始まる スキル重視に
<不遇5>50代は賃金の上昇見込めず
→入社当時は不景気のため十分な人材育成教育がなく、スキルをなかなか身につけることができなかった、そのまま50代に…

これは大きな問題をはらんでいます。

“就職氷河期世代”が退職→経済力がない高齢者が急増→若者世代の負担が増加するとみられるといいます。

(「みずほリサーチ&テクノロジーズ」チーフ日本経済エコノミストの酒井才介氏によると)

ホラン千秋キャスター:
(就職氷河期世代は)もうずっとこのまま大変な状況なのでしょうか。

経済評論家 加谷珪一さん:
昭和の時代は基本的に成長が続いていたので、このような現象は初めてと言っていいかもしれません。政府が今最も懸念しているのが『高齢者の貧困問題』です。

若い世代の負担はこれ以上増やせませんので、ここをどう手当てしていくかが非常に重要なテーマになっています。次の国会以降で論点になっていくと思います。

井上キャスター:
「第二次ベビーブームの人が多く、中堅世代は退職金をもらう前に辞めないよな」と経営者に足元を見られている気もしますし、一方で「若者世代は人数が少ないので人材確保のため賃上げしないとならない」という、経営者の目線もわからなくはない。

「食べチョク」代表 秋元さん:
私たちのところに大企業から転職を希望する方がいるのですが、エスカレーター式に年収が上がってきた方とは相場観が異なり、とても(人件費が)高い。正直、同じスキルであれば、若くて優秀な方のほうが人件費が安くなることがあります。

そのため大企業に残っていたほうがむしろ給料が高いということもあるので、会社を辞めることができないといったこともあるわけです。

政府はリスキリングについて力を入れていますが、ずっと同じ企業の中でキャリアアップしてきた人は、外の知識を身につける努力を個人でしていかないといけない時代になっていると感じています。

ホランキャスター:
確かに時代とともに求められるスキルが変わっていくのは世の常です。感度を高く自分で食らいついていかないと、この構造は抜本的には変わらないですよね。

経済評論家 加谷珪一さん:
最後は自らの努力が必要になりますね。中高年の人生はまだまだ長いですから、リスキリングは重視していくポイントだと思います。

==========
<プロフィール>
加谷珪一 さん
経済評論家 元日経BP記者
著書に「貧乏国ニッポン」
中央省庁などへのコンサルティング業務も

秋元里奈 さん
オンライン直売所「食べチョク」代表 34歳
神奈川の農家に生まれる

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  • ベアを率じゃ無くて金額でやる会社が多いからでしょ。
    • イイネ!1
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