京都には、別の言い回しで本音をやんわりと伝える“いけず文化”があると言われています。そんな“いけず”を、老舗扇子屋の町家で体験できるイベント「この先いけずな京町家」が開催されます。人気のためイベント日程も追加されましたが、チケットはすぐに完売、京都のいけずを体験したい人がなんと多いことか! イベントに先立ちメディア向け体験会が開催され、参加しました。(※ネタバレを含みます)
【写真】これがあの、老舗女将による「ぶぶ漬けでもどうどすか?」
今回、実際のイベントと同じ内容を体験。参加は3メディアから各1名(初対面)で、全員京都出身者ではありません。扇子店の奥のプライベートゾーンである、玄関前の「坪庭」からスタートします。
玄関の引き戸を開けるところから、「え?ノックする?」などと全員が弱腰。引き戸を開けると女将さんが畳の上に手をついて「ようこそ」と笑顔で迎えてくれます。その女将さんを見て怯える3人。玄関に上がったものの「汚いところやさかいに、スリッパはいてもろて申し訳ないですけど」と言われて、スリッパは脱いだほうがいいのかとオロオロしてしまいます。すると、スタートしてたった1分20秒で「ぶぶ漬けでもどうどすか?」(早く帰れ)と言われてしまいました。
「ぶぶ漬けでもどうどすか?」と言われたら、退散!
「ぶぶ漬け」を進められると、女将さんの本音を汲み取れなかったことになり、「坪庭」に一旦退散します。「坪庭」でなぜ「ぶぶ漬け」を進められたのか、参加者で相談して対策を考えてもう一度トライするルールで、訪問を続行できるのは5回までです。この時点で、クリアできる気がまったくしません。それどころか、人の話を聞くはずの記者3名が顔を合わせて押し黙ってしまう状態で、女将と会話になりません。
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なんとか台所を抜けた「前室」の机を女将と囲みますが、「いけず女将」になってしまった女将さんの本音がなかなか汲み取れず、2回連続で坪庭に退散します。「今のはなんでダメだったの?」「めっちゃ怖い」「全然わからない」が何度も口から出て取材とは思えない状態です。
最後は薄暗い茶室で抹茶とお菓子をいただきますが、マナーの試験ではないとわかっていても緊張がとけないまま終了しました。セリフなどの詳細はお伝えできませんが、終わってみると「すごく疲れたけれど、怖すぎておもしろかった」という感想に。いけずって奥が深いです。参加者の対応で、いろいろなパターンのいけずが用意されているそうですから、ぜひ多くの人に体験していただきたいと思いました。
ちなみに女将役は、会場になった老舗扇子屋「大西常商店」の実の女将さんです。「いけずは、高度でおもしろいコミュニケーションの文化だと思っていて、掘り尽くされた京都の観光資源としておもしろいなと。生きやすくなるヒントにもなったらいいなと思いますね。扇子だけでなく、これからは京都の文化みたいなものも提供していきたい」と話します。
イベントを企画した「ない株式会社」代表の岡シャニカマさんは「ここに来ないといけず女将に会えないのではなくて、イベントが終わったらどういうイベントだったか全部情報公開しようと思っていて、それを元にしてもらって、いろいろな場所でいけず体験ができるようになったらいいなと思っています」と今後の展望を話しました。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)
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