鹿児島県・奄美大島で、ウミガメの産卵回数の低迷が続いている。同島は一年を通じてシュノーケリングなどでウミガメが泳ぐ姿を見ることができるが、昨年の産卵回数は集計を始めた2012年以降で2番目に少なかった。生息数の減少などが影響しているとみられ、研究者は「中長期的な分析が必要だ」と指摘している。
民間団体「奄美海洋生物研究会」や環境省、島内5市町村などが産卵シーズンを含む2〜9月に調べたデータを同研究会が集約した結果、昨年の同期間のウミガメの上陸回数は521回で、産卵回数は289回だった。産卵は23年が260回と最も少なく、最多だった12年の1081回の4分の1にまで低下。21年以降は400回以下で推移している。
特に貝や甲殻類を食べるアカウミガメの減少が目立つ。12年の産卵回数は605回だったのが、15年には150回まで激減。一時的に増えた年はあったものの減少傾向は続き、昨年は47回にとどまった。
同研究会会長の興克樹さん(53)は、東シナ海で意図せずにウミガメが漁の網に入ってしまう「混獲」が起きて生息数が減少していることや、餌となる資源も減っていることが原因として考えられると指摘。ただ、明確な因果関係は認められないとし、「全国的な傾向を含め、中長期的に観察する必要がある」と話す。
また、「ウミガメは光に敏感で産卵に影響しやすい」として、環境保全の重要性も強調。「産卵時期は砂浜での花火や、発光ダイオード(LED)の懐中電灯を持って歩き回ることはしないでほしい」と呼び掛けた。