富士ソフト買収、KKRに軍配=ベインと争奪戦、上場廃止へ
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2025年02月20日 19:01 時事通信社
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システム開発の富士ソフトは20日、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が実施していたTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。半年に及ぶベインキャピタルとのファンド同士の争奪戦は、KKRに軍配が上がった。4月下旬の臨時株主総会を経て、富士ソフトは上場廃止となる見通し。
KKRは「半年以上にわたる混乱に終止符を打った」とのコメントを発表。だが、当初想定より買収額は膨らみ、勝者のKKRも巨額投資を回収できるだけの企業価値の向上を実現できるのか課題を抱えた。
「物言う株主」の対応に悩んでいた富士ソフトが、KKRをスポンサーとする非上場化計画を公表したのは昨年8月だ。当初、KKRは富士ソフト株の前日終値を約2割上回る1株8800円での買収を計画。同社取締役会も支持し主導権を握ったかに見えたが、ベインは富士ソフトが「買収者を公正に選定するプロセスを能動的に行っていない」と主張し、対抗TOBに名乗りを上げた。
ベインはKKRを上回る1株9450円を提示。大株主である創業者を味方に付けて、富士ソフトに翻意を迫った。KKRのTOBは難航し、買い付け期間が再三延長されるとともに、価格もつり上げられていった。KKRは今月4日に「公開買い付けの長期化に伴い、企業価値を毀損(きそん)する懸念も生じ得る」として9850円に引き上げた。これが決め手となり、ベインは撤退を表明。ようやく合計で6割弱を取得しTOB成立にこぎ着けた。
一連の争奪戦は富士ソフトが株価向上を求める「物言う株主」に揺さぶられたことが起点。この半年間はファンド同士が価格を前面に出して争い、本来議論すべき経営改善策は置き去りにされた印象は拭えない。別の投資会社幹部からは「一昔前のように『ハゲタカ』と見られかねない」とファンドのイメージ低下を懸念する声も聞かれた。
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