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すかいらーくホールディングス(HD)の業績が好調だ。同社が2月13日に発表した、2024年12月期(24年1〜12月)の売上高は4011億3000万円(前年比13.0%増)で、過去最高を記録した。営業利益は241億8400万円(同106.9%増)、当期利益は139億6500万円(同192.1%増)と、増収増益となっている。
【画像】えっ、ガストで“高級フレンチ”?「1990円」のコース料理や、「神コスパ」メニューとして打ち出す「ガストフィットメニュー」など(計6枚)
同社は原材料費や人件費といったコストの上昇を受け、主力ブランド「ガスト」で11月に全商品の約6割を20〜40円改定するなど、大規模な値上げ施策を実施。こうした要因もあり、増収幅は381億円となっている。
一方で、11月以降もガストにおいて、客数の減少はみられていないようだ。2024年の同社の既存店売上高は、前年比381億円増という結果に。既存店の営業利益は前年比175億円増となっており、「インフレの克服」につながっているという。
背景にあるのが、メニュー展開や価格設定の「最適化」施策だ。
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●「消費の二極化」メニューで対応
具体的にどのような施策を打ち出しているのか。1点目は、「消費の二極化」に対応したメニュー展開の工夫だ。
同社は現在の外食ニーズについて、「外食ならではの料理」を求める消費者と、コスパに基づいて外食先を選ぶ消費者に「二極化」していると分析。金谷実代表取締役社長は、「特に地方において、コスパ重視のお客さまが多い」と見ている(2月13日の決算発表会での発言)。
そこで同社は、「一皿当たりの単価を抑えたメニュー」を充実させる一方、「特別感を出したメニュー」を合わせて打ち出すことで、こうした消費動向に対応している。
例えばガストは2月20日、平日限定の「神コスパ」メニューとして「ガストフィットメニュー」の販売を開始した。全30品(単品)の中から選択できる「3つのメニュー」と、「ドリンクバー」「日替わりスープバー」の計5品を、990〜1090円の間で提供するというもので、コスパ重視の消費者をターゲットに、平日の集客力を高める施策となっている。
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一方で11月から1月にかけて打ち出していたのが、「至福のフレンチコース」(1990円)。「ネコ型配膳ロボット」ではなく人の手で運んで提供するコース料理の体裁を取り、「年末のちょっとぜいたくなお食事」をうたって訴求していた。
●地域別価格にも手応え
2点目は、コロナ禍によって拡大した購買力格差を背景に、2022年9月から導入した「地域別価格」だ。
地域別価格では、物価や賃金水準、消費動向などをもとに、国内を「超都心」「都市部」「地方都市」「九州山口」という4つのエリアに区分。地域の購買力にあった形での価格設定を行っている。金谷社長は「お客さまからは非常に好評で、特に地方において売り上げが伸びた」と話す。
これに合わせて、同社は2024年11月に、クーポン施策の改善を行っている。
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これまで同社が公式アプリで提供してきたクーポンは、システムの制約上、割引後の価格を同一としていた。例えば、「超都心」では620円、九州では520円で提供してきたミートドリアでも、割引後の価格は全て500円としていた。このため、「あまり値引きする必要のない都市部の値引き幅が大きくなり、価格感度の高い地方ほど、値引き幅が少なくなってしまう」点が課題だったという。
こうした課題に対し、同社は2024年の11月、新たなアプリクーポン「ダイナミッククーポン」を導入した。それぞれのメニューに対し、「70円引き」など、割引額を一律にした値引きクーポンを配信するというものだ。
金谷社長は「今後は4区分ではなく『都道府県ごと』や、不振店・繁盛店といった状況に合わせた『店舗ごと』のクーポンを実装していきたい」とコメントした。ニーズや地域の購買力に合わせたプライシングを強化することで、さらなる客数増につなげる狙いだ。
2025年には、グループ全体で439億円の売り上げ増を見込むすかいらーくHD。公式アプリの会員数も伸長を続けており、2024年末の時点で1158万人に達している。購買力を分析して打ち出す価格設定・メニュー展開施策は、今後も奏功するか。
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