〔国際女性デー50年〕女性差別語、なぜ広辞苑に?=売れ残り・男勝り・内助の功…―担当者「誕生の背景考えて」

93

2025年02月26日 14:01  時事通信社

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

時事通信社

インタビューに答える岩波書店辞典編集部の奈良林愛さん=2月3日、東京都千代田区
 言葉の意味や用例を調べる際に役立つ広辞苑。約25万の収録項目には「売れ残り」や「男勝り」など女性差別と解釈され得る言葉もある。男尊女卑を助長する言葉がなぜ載っているのか。3月8日の「国際女性デー」を控え、担当者は「差別語の背景を知らないと差別に加担する恐れがある。人を傷つけ得る言葉に出合った時は、それが生まれ定着した背景や理由も考えて」と話している。

 広辞苑は1955年初版で国語辞典と百科事典の役割を兼ねる。岩波書店(東京都千代田区)が出版し、2018年には最新の第七版が発行された。

 その広辞苑には女性差別語になり得る言葉も多い。例えば、「売れ残り」(俗に、婚期を過ぎても独身でいる女性)や「オールドミス」(未婚のまま婚期を過ぎた女性)などの言葉からは「女性は早く結婚すべきだ」との意識がにじむ。

 女性の性格に関しては「男勝り」(女でありながら、気性が男にもまさるほどに勝気であること)がある。容姿については「女は化け物」(女は化粧や着物次第で美しく変わるの意)が載る。

 家庭に関する言葉としては「出戻り」があるが、これは「いちど嫁(か)した女性が離縁して実家に帰っていること」で、女性だけに使われる。「内助の功」(夫が外でしっかりと働けるのは、家を守る妻の働きがあるということ)や「夫唱婦随」(夫が言い出し、妻がこれにしたがうこと)には家父長制の名残もうかがえる。

 これらの掲載理由は何か。岩波書店辞典編集部の奈良林愛さん(43)は「広辞苑には日本語を隠すことなく記録し、正確に解説する使命がある」と説明する。

 奈良林さんは「過去の文学作品を読む際、それらを辞書で引けないと文章の意味が分からず誤読する恐れもある」と指摘。若手部員からは「売れ残り」などの解説に関し「女性差別的な部分を削除すべきでは」との意見も出て議論になったが、「言葉の価値判断は読者が行うもの。時代の変化に伴い項目自体を削除することはない」と話す。

 「差別的な言葉を広辞苑からなくしても差別は解消されない」と強調する奈良林さん。「言葉は社会の縮図であり、女性蔑視の言葉は男性中心の社会から生まれた。それらを見聞きした際は、NHK連続テレビ小説『虎に翼』の主人公のように『はて?』と立ち止まり、一般語として定着した社会の構造や歴史を考えてほしい」と訴える。

 【編集後記】「女性蔑視の言葉が定着した背景を考えてほしい」。取材中、奈良林さんの言葉にはっとした。記事を普段書く際、差別語・不快語のリストを基に「この言葉は使える・使えない」と安易に判断してきた自分を恥ずかしく思った。

 「売れ残り」や「内助の功」といった言葉が生まれ定着した背景には、「女性は早く結婚すべきだ」「妻は外で働く夫を支えるもの」という考え方がある。「言葉は社会の縮図」との指摘を胸に、言葉への感性をさらに磨き、社会を見詰めていきたい。(時事通信社会部記者・今井直樹)。 


このニュースに関するつぶやき

  • TBSの筑紫哲也が「支那」は差別用語!と騒いだっけな。だが明治初期の国語辞典の原器「言海」には支那がある。当時の国際情勢を知らぬ馬鹿
    • イイネ!38
    • コメント 7件

つぶやき一覧へ(76件)

前日のランキングへ

ニュース設定