なぜ、現代人は「ちいかわ」に魅了されるのか 関連ショップも大盛況の裏側

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2025年03月05日 14:41  ITmedia ビジネスオンライン

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日本キャラクター大賞2024グランプリを「ちいかわ」が受賞(出所:プレスリリース)

 人気アニメ・漫画「ちいかわ」のキャラクタービジネスが好調だ。キャラクター・ブランド・ライセンス協会(東京都千代田区)が主催する「日本キャラクター大賞」で2022年と2024年にグランプリを2度も受賞し、3度目の受賞も近い予感がする。


【画像】外国人でにぎわう「ちいかわらんど」、斬新すぎる「ちいかわラーメン 豚」、ちいかわベーカリー、セブンとコラボした商品、ちいかわカレー、ちいかわレストラン、ちいかわもぐもぐ本舗川越店(全14枚)


 キャラクター・データバンク(東京都港区)によると、ちいかわの市場規模は既に100億円を超えており、さらなる拡大も見込まれている。関連グッズは多岐にわたり、版権を持つスパイラルキュート(東京都中央区)が、東名阪を中心に専門店の「ちいかわらんど」の常設店を12店舗も展開している。グレイ・パーカー・サービス(東京都中央区)が運営するオンラインストアでも、多種多様な商品を展開する。


 そのうち6店がパルコにあり、パルコとの関係は密接だ。


「まじかるちいかわストア」という魔法少女バージョンの店もあり、新宿マルイと大阪の梅田HEP FIVEに常設店、名古屋パルコにPOP UP店がある。沖縄の浦添パルコシティには、「シーサーのおみやげやさん」という常設店もある。


 ちいかわには「ちいかわ」「ハチワレ」「うさぎ」の3大キャラクター以外にも数多くの人気キャラクターがいる。各ショップでは、各キャラに関するぬいぐるみやキーホルダー、タオル、トートバッグなどの定番商品を販売するだけでなく、期間限定や地域限定のコラボ商品も次々と展開する。推しキャラを持っている人にとって、お金がいくらあっても足りないほどの“増殖”ぶりだ。


 今や、ちいかわらんどを中心とする、ちいかわショップの勢いは、サンリオに迫るのではないか。しかも、ちいかわの場合「食」に関連するショップが非常に強い。


●ラーメン店も展開


 大手アパレルでも、しまむらではしばしばコラボグッズが販売されるが、店頭・オンラインともに「秒で売り切れる」と言われるほどの人気となっている。


 パルコが期間限定で展開する「ちいかわラーメン 豚」は、2024年3月名古屋に1号店を出店するとたちまち人気となり、東京・渋谷、大阪・心斎橋、広島と、4店舗に拡大している(広島店は、4月18日にオープン予定)。運営はダイヤモンドダイニング(東京都港区)。どの店も長蛇の列で、事前のネット予約や整理券による順番待ちが必要なケースもある。


 2024年10月には、東急プラザ「オモカド」に「ちいかわベーカリー」がオープンした。こちらは事前予約制で、いきなり行っても商品は買えない。ただし、実際に現地を訪れたところ、パンは買えなくてもグッズは購入できた。


 運営はエルティーアール(東京都港区)。パン作りは、2026年の世界大会で日本代表に選ばれた澤田淳一氏の指導を受けている。


 ちなみに、ちいかわのアニメエンディング曲『ひとりごつ』の歌詞には、焼けたパンにバターを塗るという描写があり、ベーカリーができると聞いて、さもありなんと思ったファンも多かったのではないだろうか。


●セブンやくら寿司ともコラボ


 この2月には、埼玉県川越市の観光地「菓子屋横丁」に「ちいかわもぐもぐ本舗」がオープンした。ちいかわと和のコラボによる菓子や小物を販売するショップだ。2023年11月に京都市伏見区の伏見稲荷参道に1号店をオープンしており、予想を上回る反響があったという。


 ちいかわもぐもぐ本舗を運営する「寺子屋」(京都市)の担当者は、ちいかわと食べものの相性について「小さいふわっとした感じのちいかわが、もぐもぐと食べている姿が幸せに見えてかわいいのではないか」と分析する。


 そのほかにも、セブン-イレブン・ジャパンが2024年12月に、ちいかわコラボ商品を多数発売した。


 くら寿司も2024年3月に、「ビッくらポン!」の景品などでちいかわとコラボ企画を行った。


 丸美屋食品工業では、ふりかけ、お茶漬けの素、レトルトのカレーやハヤシライスで、ちいかわとのコラボ商品を発売している。


 それにしても、なぜちいかわのキャラクタービジネスは、ここまで沸騰しているのだろうか。


●他キャラと比較して、男性ファンが多め


 ちいかわは、漫画タイトル『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』の略称である。イラストレーター・漫画家のナガノ氏が、2020年からTwitter(現X)で連載を開始。ちいかわたちによる、楽しくて、ちょっぴり切ない物語が人気を呼んだ。2021年2月に講談社から書籍化され、これまで7巻、2024年11月時点で計360万部を突破している。


 雑誌連載を経ずSNSから人気化したのが特徴で、ファンの拡散で評判が高まり、大手出版社のコミックになったという非常に珍しい例だ。公式Xのフォロワー数は、2月末時点で約379万人もいる。


 フジテレビ系『めざましテレビ』内で、アニメも放送している。毎週火曜と金曜の午前7時40分頃から、1回2分弱の短いアニメだ。「ちいかわ占い」なるコーナーもあり、こうしたテレビによる露出が、ちいかわの人気をさらに大衆的にしたといって良いだろう。


 データマーケティングメディア『マナミナ』が2023年11月2日に公開した記事『「ちいかわ」ファンを分析!大人がハマる理由は?企業コラボで推し活促進も』によれば、ちいかわファンは20〜40代の年代構成比が高く、未婚者が多いという。仕事でも私生活でも忙しい日々を送る20代〜40代の未婚者は、ゆるふわで見るからに癒される見た目のキャラクターに癒しを求めているのではないか――と、当該記事では分析している。


 また、女性ファンの割合は65.1%で、男性ファンの34.9%よりも圧倒的に多い。これは類似キャラクターも同じ傾向だが、その中でも男性比率が高いのが特徴だ。例えば「おぱんちゅうさぎ」は男性ファンの割合が30.9%、「カナヘイ」は23.8%であった。


 これについて、同記事では「『癒しだけではなく切なさや狂気さえ感じさせる感情表現が豊かな性格である』という人間的魅力が、性別を問わず人びとの心をつかんでいる」可能性があるとコメントしている。


●「推し活」に必要な要素が詰まっている


 パルコや東急プラザが、ちいかわのショップを積極的に誘致しているのは、先述したファン層と施設の客層が重なると考えているからだろう。こうしたキャラクターは、年齢層が高くなると「どこが良いのかよく分からない」という人が増える感もあるが、意外と50〜60代の男性にもちいかわファンは多い印象がある。


 ちいかわのアニメでは、3人(3匹?)の人気キャラクターが一緒に出てくることが多いが、ハチワレが1人でしゃべりまくっていて、状況説明も、残りの2人の代弁も行う。ちいかわとうさぎはほとんど何も話さない。


 1970年〜80年代の漫才ブームでは「しゃべくり漫才」として、ツービートならばビートたけしさんが、島田紳介・松本竜介ならば紳介さんが、1人でしゃべりまくっていたが、ハチワレの場合、このような圧倒的な才気で相方をうなずき専門にするわけでもない。


 アニメを見ている中には「もっと自分の気持ちを察してほしい」と感じている人が多いように思える。また「人に対してもっと察してあげたい」「察してあげるべきではないか」と感じている人も、多いのではないだろうか。


 ちいかわの飲食店やベーカリーの人気が爆発している理由としては、先ほどのベーカリー担当者の分析以外に、アニメによく食べ物が出てくることが挙げられる。例えば作中でいわゆる「二郎系」を模したと思われる「郎ラーメン」として出てくるラーメンが、ちいかわラーメン 豚で食べられる。


 一般のラーメン店は、行きたくても女性同士、ましてや一人では、なかなか入りにくい人も多く、そうした消費者心理をうまく刺激している。ちいかわのショップということで、ラーメン店の心理的ハードルを一気に下げているのだ。


 しかも、ラーメンや飲み物には、おまけとしてグッズも付いてくる。入場者でないと買えない、オリジナルの丼やコップなどもあり、推し活をしたい人にとって、魅力ある要素がそろっているわけだ。


●関連ショップも盛況、人気はまだ続きそう


 パルコでは、池袋PARCOに常設、大阪・心斎橋と名古屋で期間限定の「ちいかわレストラン」をオープンしている。こちらは「ファミリーレストラン」がコンセプトで、メニューは大人も注文できる「ちいかわのお子様ランチ」など、楽しげなメニューがそろっている。


 その他、仙台パルコでは飲み物に特化した「ちいかわレストラン ドリンクスタンド」も期間限定で開催している。以前に各地のPARCOを中心に手掛けていた「ちいかわカフェ」や「ちいかわ飯店」では「秒でチケットが売り切れる」といわれるほどの人気だったが、その人気がまだ続いているようだ。


 このように、ちいかわコラボ店の展開にことのほか熱心なパルコだが、東急プラザも負けじと東京・原宿のランドマークである「オモカド」に、2024年10月、ちいかわベーカリーが出店。こちらも予約が必須と大きな反響を呼んでいる。


 このように、ちいかわのキャラクタービジネスは、20代〜40代にターゲットを絞り、作品のイメージをうまく生かして成功を収めている。


 東京・原宿「キデイランド」や東京駅一番街「東京キャラクターストリート」のショップに行ってみると、外国人の顧客も多く、ちいかわ人気が世界的に高まっていると実感する。このまま“令和のサンリオ”となるのか。「食」のビジネスを中心とした、ちいかわキャラクタービジネスの成長が楽しみだ。


(長浜淳之介)



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