これからも世間を驚かせていきたい小学生ギャルをメインモデルとした媒体『KOGYARU』をご存じだろうか。等身大の姿が話題を呼び、Instagramのフォロワー数は56万人を突破。YouTubeで公開したMV『SHIRANKEDO』も880万回再生を記録し、まさに勢いが止まらない状態だ。
しかし、外野からは「子どもの成長に悪影響」「小学生の純粋さを利用している」などの辛辣な声も聞こえているようだ。
2023年4月からスタートし、2年の活動期間が経過しようとするこのタイミングで、プロデューサーを務める井場ひとみさんにインタビューを敢行。“ギャルマインド”をどのように継承していくのか、熱く語ってもらった。
◆「子どもを道具にするな」浴び続けた辛辣な声
ーー『KOGYARU』立ち上げ当初、どのような声があったのかを教えてください。
井場ひとみ:メディアをスタートさせたときは「小学生は小学生らしくしているべき」といった主張がSNSを中心に飛び交っていました。なかには「子どもを使って金儲けするつもりだろう」など、怒りの感情が入り混じったような意見も届いていたのが現実です。
ーープロデューサーの立場からすれば、かなり辛い状況だったのではないでしょうか?
井場ひとみ:はい。しかし、世間に浸透していないものに触れていく立場ですから、批判が集まることは想定していました。むしろ「批判の声に勝たないとメディアが成り立たない」というマインドをもって始めたのが正直なところです。
具体的には、一つのコンテンツとして確立された強い媒体に育てれば、肯定の声も増えると考え活動していました。この2年で、ようやくそのイメージが形になってきたと感じています。
◆徐々に“小学生ギャル”が世間に受け入れられていった
ーー批判の声が少なくなった理由は何でしょうか?
井場ひとみ:日々発信を頑張ってくれたモデルの子たちが「小学生が憧れる存在」に変容したことが要因です。スッピンでネイルもせず通学するなどの行動が効果として現れています。
ほかに理由を挙げるのであれば、環境面での後押しが考えられますね。多様性という言葉が浸透するにつれて、小学生ギャルも次第に受け入れられていく場面が徐々に増えていきました。
実際に2024年には、『KOGYARU』のモデルを起用した小学生向けメイク本も発売されています。「小学生が化粧をするなんて、肌荒れの原因になる」という声もあるなかで、肌トラブルに巻き込まれない子ども向けのスキンケアも広まってきているのが現状です。
◆「ステージでパラパラを披露」現代も息づく平成ギャルの魂
ーーこの2年間で、活動の幅が広がったと感じることはありましたか?
井場ひとみ:2023年後半から2024年にかけて、アーティストとしての取り組みが増えたことは一つの転機だと感じています。
雑誌のほかに「残るもの」を届けたい思いで制作したMV『SHIRANKEDO』が人気を博したのを皮切りに、2024年11月にはワンマンライブを開催できるほど活動の幅が広がりました。
ーー小学生ギャルたちがおこなうワンマンライブとは、どのようなものなのでしょうか?
井場ひとみ:『KOGYARU』のオリジナル曲2つ、カバー曲1つの計3曲を披露するだけでなく、ステージに降りて来場者の方たちと触れ合うなど、声援の鳴り止まないライブを実現することができました。
ファンの方のなかには、メンバーカラーのリボンを付けてくれている「園児ギャル」もいたのが印象に残っています。また、ギャル親子もたくさん遊びに来てくれていて、みんなで一緒にパラパラを踊れたこともハイライトの一つです。
ーー令和のギャルたちにも、パラパラは継承されているのですね。
井場ひとみ:パラパラの魂は、令和のギャルたちにも強く根付いています。実際に、NHK連続テレビ小説『おむすび』でパラパラ指導をしたRumiさんの「パラパラ学校」には、多くの小学生たちが集まっていると聞いています。
基本の振り付けが決まっているパラパラは、一度身体に染み込ませておくだけで、どんな曲にでも応用ができてしまうんです。一般的なダンスよりも踊りやすいその特徴が、むしろ子どもにウケているのかもしれません。
なんといっても、初めて会ったギャル友達ともすぐセッションできてしまうところは、パラパラがなくならない理由であり、永遠の魅力ともいえますね。
◆高校生時代は「1日10回ぐらいプリクラを撮っていた」
ーー井場さんも、かつてはギャルとして活動をしていたのでしょうか?
井場ひとみ:私は、高校生のころは渋谷のギャルサーに入り、いわゆる「ギャル活」をしていました。毎日ギャル友達と「渋谷センター街」に集まって遊ぶ日々を送っていて。当時は、1日10回ぐらいプリクラを撮っていたと思います。ただただ、みんなと一緒にいることが楽しかったんですよね。
ーーギャルサーとしての活動は、どのようなものがあったのでしょうか?
井場ひとみ:私の所属していたギャルサーは、イベントサークルのような側面がありました。ギャルの力だけで、渋谷の2,000人規模の会場でファッションショーを開催したこともあります。
当時私がずっとサークルの先輩として尊敬していたのが、元『egg』編集長で、現在は渋谷女子インターナショナルスクールの校長を務める赤荻瞳さんです。「周囲の目を気にせずに好きなことを貫く」など、ギャルとしてのあり方を赤荻さんから学んでいなければ、『KOGYARU』の立ち上げはできていなかったかもしれません。
◆オーディションの判断材料は「コミュニケーション力」
ーーオーディションも開催されるなど、さらなる広がりを見せる予感がしています。
井場ひとみ:2024年11月に実施したオーディションでは、全国から400人を超えるエントリーがありました。WEBを中心に発信をしていくため、やはりコミュニケーション力は重要です。今回のオーディションでも、視聴者に対していかに楽しさを提供し続けられるかを考え、実行する技術のある子が残ったと感じています。
ーー現モデルたちも、やはりコミュニケーションの面で優れた子ばかりなのでしょうか。
井場ひとみ:そうですね。でも、初めてのYouTube撮影をおこなったときは、緊張してうまく話せない子が多かったのをよく覚えています。
この2年間、活動を続けていくなかで、みんなとても本番に強い子に育ってくれました。いまでは、台本なしでも堂々と喋れているので驚きです。
ほかのメンバーにも積極的に話を振ってどんどん展開を広げていくなど、大人の私たちが感心してしまう瞬間にもたくさん出会うことができています。
◆「やりたいことに年齢は関係ない」ギャルマインドを伝えていきたい
――『KOGYARU』への在籍期間が、小学6年生までから中学1年生までに延長されたと聞きました。この理由について教えてください。
井場ひとみ:姉妹媒体である『egg』は、現在中学2年生からしか在籍できません。もし『KOGYARU』を小学生までにすると、1年間活動できない子が出てきてしまうのではないかと思ったのが理由です。
希望者のみという形にしたものの、みんなが残りたいと言ってくれたのには正直ホッとしました。まだまだこの場所にいたいと思えるような環境を作れたことは、素直に嬉しく思っています。
――最後に、これからのKOGYARUが目指す未来の姿を教えてください、
井場ひとみ:いよいよ、雑誌の第2号発売が決定しました。この勢いに乗り、もっと子どもたちが歌って踊れるようなコンテンツを作っていきたいと思っています。
なにより『KOGYARU』のみんなには、これからもメイクやファッションなど、好きなことを思いきりやる気持ちをもち続けてもらいたい。そして「やりたいことをやるのに年齢は一切関係ない」ことを象徴するメディアになるべく、世間を驚かせる活動を続けていくつもりです。
<取材・文/川上良樹>
【川上良樹】
エンタメ好きなフリーライター。クリエイターやアイドルなどのプロモーション取材を手掛ける。ワンドリンク制のライブが好き。