東京大空襲の法要で焼香する一般参列者=10日午前、東京都墨田区の都慰霊堂(代表撮影) 約10万人が命を落としたとされる東京大空襲から80年となった10日、東京都墨田区の都慰霊堂で法要が営まれ、遺族や小池百合子都知事らが犠牲者の冥福を祈り、平和を願った。秋篠宮ご夫妻も参列し、焼香された。
「もう今年が最後」とつえをつきながら訪れた文京区の佐藤玲子さん(93)は、大空襲の数時間前に疎開のため汽車で東京を離れ、助かった。度重なる空襲で聞いた爆撃機の音は今も頭から離れないといい、「教育熱心で優しかった父は、経営していた米屋を守るために残って亡くなった。兄と姉も奪った戦争を、二度と繰り返してはいけない」と訴えた。
父ときょうだい4人を亡くした江東区の女性(88)は「遺体も遺骨も見つからず、家族が生きていた記録がどこにも残っていない。毎年、ここで家族に思いをはせるほかない」と語った。
10日は都が「東京都平和の日」と定めており、都庁(新宿区)の式典でも黙とうがささげられた。
前日の9日にも、都内では多くの人が犠牲者を悼み、平和への思いを新たにした。台東区の上野公園にある母子像とその近くの慰霊碑前では、大空襲で孤児となったエッセイスト海老名香葉子さん(91)による「時忘れじの集い」が開催。漫画家のちばてつやさん(86)や遺族らが手を合わせた。海老名さんは車椅子で参列し、「平和の尊さ、戦争の悲惨さを、次の世代に伝えてまいりましょう」とする手紙が代読された。
江東区の森下文化センターで開かれた集会では、戦災孤児の体験談が語られ、地元の小学生が当時の学校の様子などを発表した。空襲の紙芝居を朗読した中学3年の田崎友梨さん(15)は「語り継いでいかなければならないと心から感じた」と話した。
1945年3月10日未明、米軍のB29爆撃機約300機が、東京上空から大量の焼夷(しょうい)弾を投下。無差別爆撃の被災者は100万人を超えるとされる。

東京大空襲の法要に参列される秋篠宮ご夫妻=10日午前、東京都墨田区の都慰霊堂(代表撮影)