“ヌン活”ブームはどこまで続く? 単価6000円でも予約殺到の理由

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2025年03月23日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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10年続くヌン活ブーム、なぜ?

 2022年に流行語大賞にノミネートされた「ヌン活」。ホテルやカフェでアフタヌーンティーを楽しむ活動を指す。それから2年以上が経過したわけだが、ブームが衰えるどころか、より充実したプランを打ち出すホテルやカフェも多く、予約が取りづらい状況が続いている。


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 「コンラッド東京」では単価7900円〜と高価格帯にもかかわらず、平日でも多くの女性客でにぎわっている。10年ほど前からヌン活の人気が続いており、近年は特に好調だという。


 レストラン予約サイトの人気アフタヌーンティーランキングで1位を獲得する「ANAインターコンチネンタルホテル東京」では、2018年以降、テーマ性のあるプランを充実させている。ホテル内の複数のレストランで趣向を凝らしたプランを提供し、予約が殺到した実績もある。


 圧倒的な“かわいさ”がウリのカフェ「ジンジャーガーデンアオヤマ」と「モスカ・バイ・ジンジャーガーデン」(ともに東京・表参道)では、人気キャラクターやアパレルブランドとコラボしたプランなども展開。推し活を楽しむ20代女性から高い支持を得ている。


 ANAインターコンチネンタルホテル東京の広報担当者と、ジンジャーガーデンを運営するキャバリー社(東京都港区)の永谷佳代子社長に、アフタヌーンティーの戦略とブームが長く続く理由を聞いた。


●アフタヌーンティーは“コロナ禍の救世主”


 ANAインターコンチネンタルホテル東京では、ヌン活がブームになるずっと前から、英国発祥の伝統的なアフタヌーンティーを館内の「アトリウムラウンジ」で提供していた。


 テーマ性のある個性的なプランの提供を始めたのは、2018年の元旦から。人気の高まりに伴い、他のレストランでも取り扱うようになった。2020年11月から「ザ・ステーキハウス」、2022年2月から中国料理「花梨」で開始し、現在は5つの飲食店でバラエティー豊かなプランを発売している。


 ヌン活の人気が過熱し始めたのは2019年ごろ。「2019年秋に開催した全館的な祭典『チョコレート・センセーション』が人気を博し、その一環で提供した『チョコレート・アフタヌーンティー』の予約が殺到したことを記憶している」と広報担当者は話した。


 引き続き、2020年の年初から提供された「ストロベリー・アフタヌーンティー」も予約が伸びていたが、コロナ禍の影響で一時的に来店客が減少。一方で、テークアウト用アフタヌーンティーの需要が急増し、「母の日」の1日で350件以上の予約があったという。


 また、ホテル内の他のレストランと比べて、アフタヌーンティーを提供する「アトリウムラウンジ」は、天井の高い開放的な空間もあってか、客の回復が早かった。アフタヌーンティーは“コロナ禍の救世主”だったそうだ。


●顧客を飽きさせない。意表を突くテーマも


 アフタヌーンティーといえば、旬の素材を使った季節限定プランを各社が展開しており、イチゴや抹茶などは定番人気となっている。同社では、定番にひねりを加えたプランや他社にない独自プランを次々と打ち出し、顧客の関心を引き付けているという。


 「当ホテルのアフタヌーンティーは他店よりも圧倒的に品数が多く、主力のアトリウムラウンジは常にスイーツ12種類、総菜系のセイボリーが5〜6種類です。特に話題となったのは、『金継ぎアフタヌーンティー』や『抹茶アフタヌーンティー』です。金継ぎ(※)は独自性が高く、多くのお客さまの印象に残りました。2022年に提供した抹茶の濃度別に仕立てたムースの食べ比べは、SNSで広く拡散されました」(広報担当者)


 来客層は20代を中心とした女性が大多数で、女性同士の2人組をはじめ、誕生日などのお祝いや女子会など小グループでの利用もある。近年は若いカップルも増え、デートスポットの一つになってきているようだ。


 ヌン活ブームが長く続いている理由を聞くと、「お客さまを飽きさせない無限の可能性を秘めているからではないか」と回答。テーマ性に沿った世界観を大事にしながら、味はもちろん、一品一品の形状や色合いにこだわって飾りつけをしているため、見た目も味も飽きづらい。テーマごとに新作スイーツが登場するので、何度もリピートしても新鮮さがある。実際、リピーターが確実に増えている実感があるそうだ。


●推し活女性が訪れる「ジンジャーガーデン」


 2014年に創業したキャバリー社は、“ヌン活ブームの先駆け”とも言われる「ジンジャーガーデンアオヤマ」を2014年、表参道にオープン。


 2017年からアフタヌーンティーを提供し、第2弾として売り出した“ティファニーで朝食を”をテーマにしたアフタヌーンティーが大当たり。予約が殺到し、3カ月待ちの反響を呼んだ。「流行語大賞にノミネートされる何年も前から、ヌン活ブームは存在していた」と永谷社長は振り返る。


 2021年には、2店舗目の「モスカ・バイ・ジンジャーガーデン」を表参道にオープン。いずれも予約制のアフタヌーンティー(5800円〜)を基本とし、1回2時間の予約枠を設けて1日に4回転させている。それほど大きくないカフェながら、客単価は6000円を超え、1店舗の月商は約1000万円にのぼるという。


 キャバリー社が展開する2店舗の特徴は、“かわいい”に特化した体験ができること。店内は花で埋め尽くされ、非日常を感じさせる。季節ごとのアフタヌーンティープランのほか、「マイメロディ」「クロミ」といったキャラクターや女性向けアパレルブランドなどとのコラボプランも人気が高い。主な顧客層は20代前半の女性だ。


 近年は、「推し活向けプラン」や推し活客のニーズに沿う接客も好評だという。推しのカラーに合わせてケーキの色が選べるお祝いプランを作ったり、推し活に精通するスタッフが見栄えのいい写真になるよう撮影をサポートしたり。「これが“映え”にとどまらない独自のウリとなり、ホテルとの差別化になっている」と永谷社長。


 「2年ほど前から推し活の一貫で来店する方が増えました。そこで『推し活推奨店』と打ち出し、お客さまが望む体験ができるようスタッフがおもてなしをしています。推し活をする方にとって、一流ホテルよりも(自分たちに)近い存在だと認識していただいているようです」(永谷社長)


●この先は「強者のしのぎ合い」に


 ジンジャーガーデンは2年ほど前から高水準の売り上げを維持しているというが、店舗数の拡大は予定していない。サービスの品質維持が容易ではなく、多店舗化によりブランドを毀損しかねないためだ。


 「それよりも、若年女性にとっての憧れと位置付けられているジンジャーガーデンのブランドを生かし、催事や物販などの横展開を見込んでいます。異なる柱を立てていかなければ消耗戦になると予想するためです」(永谷社長)


 プレーヤーが増え、ますますレッドオーシャン化するアフタヌーンティーの状況を踏まえ、「この先は独自路線を確立できなければ難しいのではないか」と永谷社長は言う。


 「長くこの業界にいますが、市場の拡大が続いて頭打ちになっていて、さらなる急拡大はないと思います。強者はたくさんのお客さまを抱えていますが、弱者は耐えられなくなっていて、撤退した店も多いんです。うちのコンセプトを丸ごと真似た店も出てきたり。この先は、もう『強者の戦い』になるだろうなと」(永谷社長)


 市場が拡大し、定番化したヌン活。他社との差別化を図るためには、さらなる創意工夫が求められそうだ。


(小林香織)



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