「女子」の看板を下ろしたワークマン 当面のライバルは「しまむら」? アウトドアブーム後の戦略

11

2025年04月03日 11:51  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

ワークマンの今後の戦略は?

 ワークマンが脱・アウトドアブームのブランド戦略を固めてきた。主に女性向けとして展開を進めてきた「#ワークマン女子」を、男性も入りやすいように「Workman Colors(ワークマンカラーズ)」に改称。レディースではトレンド商品に注力し、メンズでは市場規模の大きいベーシック衣料に新規参入した。


【画像】ワークマンが、EXILE TAKAHIRO氏と開発した商品ラインアップ(計4枚)


 近年のカジュアル化による「職人離れ」が指摘される中、ワークマンの新イメージキャラクターに「EXILE」のTAKAHIRO氏を起用。あらためて作業服を見直し、スタイリッシュ性と機能性を併せ持ったハイスペック製品を中心に推していく。


●カジュアル化を進め、「アウトドアブーム」の受け皿に


 近年の歩みを振り返ると、同社は2018年9月に東京都立川市の「ららぽーと立川立飛」に「ワークマンプラス」1号店をオープン。職人ではなく一般の顧客を対象に、機能性とファッション性を組み合わせた「タウンカジュアル」の店として初というだけでなく、ショッピングモールのような商業施設への出店も初めてだった。


 このワークマンプラスは反響がすさまじく、その後は新規出店だけでなく既存のワークマンをワークマンプラスへとリニューアルしたり、ワークマンとのダブルブランドにしたりといった改革を全国で進めた。続いて#ワークマン女子もオープンし、女性が入りやすい店づくりも目指した。


 ワークマンの店舗数は2024年12月末時点で1037店。内訳は、ワークマン318店、ワークマンプラス642店、#ワークマン女子67店、ワークマンプロ10店、となっている。


 その結果、売り上げが急増。「ポストユニクロ」の筆頭格とみなされるようになった。2018年3月期に約560億円だった売上高は、2024年3月期に約1326億円にまで成長している。成熟市場と呼ばれるアパレルにおいて極めて例外的な急成長であり、いかに多くの人がワークマン製品の新規顧客、リピーターになっていったかがうかがえる数字だ。


 ワークマンがタウンウェアに進出した2018年頃は、2020年に開催予定だった東京オリンピックに向けて、官民がスポーツにとどまらない健康増進を盛り上げる機運を醸成していた。とはいえ、本格的に釣りや登山、ジョギングなどを始めようとしても、用具代は意外とかかる。


 そうしたときに、ワークマンが有する機能性の高いウェアが受け皿となったわけだ。若い職人向けにデザインを含めてファッション性を高めてきたこともあって、ニーズをうまくすくいとった。コロナ禍で東京オリンピックは1年延期となったが「密」を避ける意味でもアウトドアブームは続き、ワークマンの売り上げも毎月のように2ケタ増と、絶好調だった。


●成長が踊り場に


 とはいえ、近年はコロナ禍による規制や自粛の要請も緩和。アウトドアブームも下火になってきた。他社では、キャンプ用品に力を入れてきたスノーピークが2023年12月期決算で売上高が16.4%減となったばかりか、当期純利益が99.9%減という衝撃の結果となった。スノーピークはMBOによって上場廃止となり、再建の道を歩んでいる最中だ。


 ワークマンの場合、スノーピークのようなアウトドアに特化した企業ではないが、やはり売り上げが伸び悩み、成長の限界がささやかれるようになった。既存店売上高は、2020年が125.7%、21年が114.2%だったのものの、その後は伸び悩んで2024年3月期は98.6%とついに前年を割ってしまった。


 今期は第3四半期までの既存店売上高が101.5%と回復している。しかし、2025年に入って1月が98.8%、2月が96.5%と、2カ月連続で前年を割れている苦しい状況には変わりない。果たして、ワークマンの反転攻勢は可能なのか。


●「女子」の名をこのタイミングで廃した理由


 ワークマンの、#ワークマン女子からワークマンカラーズへの転換は、そこまで驚きはなく、既定路線である。ワークマンカラーズは2023年9月に銀座で、#ワークマン女子から業態転換する形で1号店を出店している。十分に検証した結果、今般の改称だったことは間違いない。


 ワークマンカラーズ1号店は、当初から#ワークマン女子の旗艦店的な役割があり「作業服をカジュアルに転用した商品で売場を構成しているから、ファッション性が劣るというような言い訳はしない」と宣言していた。つまり、タウンファッションの店として、防寒や吸汗速乾、伸縮性、防水などの機能を抜きにしても、デザイン性で競合他社に負けないことを目標にしていたわけだ。


 中国の「SHEIN(シーイン)」の短納期生産に学び、海外工場に大量発注する方式も一部見直した。短納期で、少量のトレンド性の高い商品を生産できる体制を構築している。レディースのみならず、メンズや子ども服を展開しており、男性はもちろんファミリーで利用できる店へと進化させていた。


 その結果、#ワークマン女子の頃より売り上げが23%増という数字も出ており、#ワークマン女子の名を廃して、ワークマンカラーズへ全面移行する決断をした。6月中旬までに25店、さらに毎年40店舗を目標に出店し、2032年中に400店体制にまで伸ばす方針だ。顧客の男女比は1:1を目指すという。


 #ワークマン女子は商業施設に多かったイメージだが、ワークマンカラーズではロードサイドを重視する。商業施設に入る際も、なるべく路面に出していく。ワークマンプラスはスポーツ入門者やバイク・自転車に乗る人に支持が厚く、その路線を維持。対してワークマンカラーズは、機能性を備えたタウンファッションとして、専売品を中心に販売しながら2026年秋には専売品比率を8割にまで高めていく方向性である。


 今後は地方出店がメインとなっていくので、当面のライバルは「しまむら」だろう。しまむらはレディースにほぼ特化しており、メンズはあまりやっていない。そこも狙い目で、ユニセックスの家族で合わせられるベーシックかつ安価な商品の投入によってファン拡大を目指す。一方のレディースでは、レースのようなシースルー素材のトップスを販売するなど、女性らしいデザインを強化していく。


●職人と女性、両面で新たなコラボを実施


 既存店をどんどんとワークマンプラスに転換していく中、従来のユーザーだった職人からは、プロ向けの店ですら駐車場が一般客に占拠されて、行きにくくなったという不満の声も聞かれる。これについて土屋哲雄専務は「今まで4年間は新ブランドのワークマンプラスや#ワークマン女子に人的リソースを割かれていた。ブランドが確立してきて一段落したので、あらためて職人向けの製品に力を入れたい」といった趣旨の発言をしている。


 この1月には、製品開発リソースの8割を作業服に移行する「ワーク強靭化計画」を宣言。作業服で60億円の売上増を目指す。3月にはEXILEのTAKAHIRO氏監修によるプロ職人向けの新ブランド「ZERO-STAGE」から商品を発売した。


 建設業界では働く人の高齢化が顕著で、55歳以上が35%を占める。対して、29歳以下はわずか11%と少ない。「建設業、土木、運送などのあらゆる職種に対応できる、スタイリッシュな作業服で業界を応援したい」という狙いで、LDH JAPANとコラボした。ZERO-STAGEのコンセプトは、「『GO TO STAGE.』 仕事場というステージを楽しみ、輝き、さらに高みへと昇る人へ。」で、スタイリッシュさとハイスペックを掛け合わせた、製品を打ち出していく。


 5月には、ワコールホールディングスと初のコラボとして「きれいを叶えるハーフトップブラ」の発売も控えている。長年にわたり女性の体型を研究し、快適性を重視してきたワコールの技術を取り入れた商品だ。


 近年はリラックス感のあるブラトップやワイヤレスブラが主流となっており、専門メーカー以外にカジュアルウェアのメーカーも女性用インナーウェアを製造販売するようになった。とはいえ肌着の域を超えて、シルエットを整える下着類は技術的なハードルが高い。


 その課題を解決するために、ワークマンとワコールが手を組んだのは、ファッションとして面白くても機能性が乏しい競合他社との差別化になるだろう。評判が良ければ、アイテムが拡大していくはずだ。近年はこうした下着類を販売する百貨店やスーパーの撤退が相次ぎ、特に地方の女性は買いにくくなっている。ワークマンにとって、大きなビジネスチャンスになる可能性が高い。


 以上のような強化策によって、ワークマンはアウトドアブームが終わった危機を乗り切ろうとしている。これからどのような成果が出てくるか、楽しみだ。


(長浜淳之介)



このニュースに関するつぶやき

  • 元々作業服の方向性で売れてたやん(笑)そのままで、ええやん(笑)
    • イイネ!3
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(8件)

ニュース設定